ふしゆとお馬☆彡


妻「あなたっ!?次男が競馬場で倒れたって、どう言うことっ!?」

夫「……」

妻「長男は、『柳娟が死んじゃったかと思った』って言ってるし、末娘は、『兄様が木の下で寝てた』って言ってるし、本人は『なんともない』って言ってるし」

夫「……」

妻「見ててって言ったのに。子供見ないで、なに見てたのよっ!?どうせ、メインレース見てたんでしょ。次男も探さないで」

夫「…探したさ」

妻「どうせ、メインレース見終わってからでしょっ!!」

夫「……」

夫(君、どっかから見てたのかい?関係者席あたりで)
妻(お見通しよっ)

夫(もし、僕が出走馬でも、関係者席にいる君のその菫色の瞳から目が離せないよ。綺麗だよ)

妻(はぐらかさないでっ!じゃ、ちゃんと目ェ見て言い訳なさいよねっ!そらさないでっ!)

夫「……」
妻「……」

夫(…すぐに追おうと思ったさ。けど、長男を連れて、末娘を抱えて。すばしっこいアイツは、兎が草むらに飛び込むみたい、人波に飛び込んだかと思うと、すぐに人込みにまぎれて。『急に、予定を思い出した』って。…人込みの中に、ガールフレンドでも見つけたのかと思って。男親として、追うのも野暮だと思って)

妻「あのねェ、幼少期の体験と記憶は、青年期の人格形成に少なからずの影響を及ぼすのよ?なのに、メインレースを見終え、着順が確定し、払い戻しを済ますまで、次男を探しに行かないで。見た目より多感な、あのコの父親との思い出が、競馬場で迷子になっても、着順が確定し、払い戻しを済ませ、偶然、たまたま、ばったり会った知り合い遊び仲間の知り合いの知り合いとの、商談がひとつまとまるまで、父親が探しにこなかったレースで、先着した馬の名前だったら、どーするのよっ」

夫(……)
妻「お見通しよっ」

夫(君の誕生日で買った馬が万馬券だったよ、三連単。それで、君にサプライズプレゼントがあるんだ。なんだと思う?ディオールのブックトートの限定色だよ!步入式衣柜ウォークインクローゼットの春夏物の棚の段の下のあたりを探してごらん?あ、隠し場所言っちゃったらサプライズにならないね)
妻(子供になにかあった方が、よっぽどサプライズよっ)


夫「…僕も悪かったと思ってるよ。それで─────」

妻「それで?」

夫「次は、三兄妹を障害競走レースに連れてってやろうと思うんだ。大竹柵おおちくさく大生垣おおいけがきの障害を、踏み切って飛越ジャンプする、華の大障害競走!!ひとつ乗り越えても、次から次へと立ちはだかる、障害や困難や試練を、取り除いてやることだけが、多分、きっと、優しさじゃないと思うんだ、親として。どんな障害ハードルも飛び越える勇気は、自分の中に─────」

妻「ンもぉっ!!競馬場禁止っ!!」

こうして、迢家は、競馬場禁止になったのでした─────☆彡

The END
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