ふしゆとお馬☆彡


「あなた、ちゃんと柳娟のことも、見ててくれた?」

「……」

「もうっ!またほったらかしてっ!」

「……」

「ちゃんと見ててって言うのは、迷子や事件や事故のことだけを言ってるんじゃないのよ?」

「……」

「次男は、長男や末娘とちがって怪力だからって、誘拐される心配がないと思って!」

「そんなこと思ってないよっ!どの子にもなにかあったらと思うと同じだけ心配だよ!」

「次男は長男や末娘とちがって、口が達者で頭の回転も早いから、自分で人質の解放ならびに身代金の値下げ交渉もしてくれると思って!」

「───…そんなこと思ってないよ。全額支払うよ。キャッシュで」

「───…なんでちょっと間があるのよっ」

「……」

「情操教育上のことを言ってるのっ!男親が、長男につきっきりで、末娘に甘くて、次男だけほったらかしなんて、よくないでしょっ!」

「僕も悪かったと思ってるよ。長男を優先し、末娘の好きなことやものを優先して。それで───」

「───それで?」

「次の休みは、アイツの楽しめそうなことを優先して、連れてってやろうと思うんだ」

(あら?)

「今度、『[#=輓馬_ひきうま#]』とも呼ばれる『ばん』が走る『ばんえい競馬』に連れてってやろうと思うんだ。サラブレッドの倍の1トンの馬体!自分と同じ馬体重ほどの1屯の鉄のソリを引く馬力!それで砂地ダートを駆け、坂を上り下る迫力!アイツもきっと楽しめると思うんだっ!!」

「あのコも別に、馬を馬力で楽しんでるんじゃないと思うわよ」

おわり
21/26ページ
スキ