ふしゆとお馬☆彡


母「ねぇ、あなた。末娘が、6歳になったら乗馬を習いたいんですって」

父「いいじゃないか、君がいいなら」

母「白馬に乗りたいんですって。乗馬倶楽部の馬に乗れるようになったら、きっと、自分の白馬を欲しがるわよ、あのコ」

父「白馬か…」

母「けど、白馬って希少なんでしょ?競走馬では1万頭に1頭だとか。乗馬倶楽部に在籍してる元競走馬サラブレッドのコたちの中に、白馬はいるかしら」

父「白馬か…」

母「突然変異で白馬が産まれる確率は0.04。その遺伝子をどちらかが持った両親から、白馬が産まれる確率は二分の一。あのコが夢見るような、皇帝陛下が所有してたり、王子様がまたがってたり、お姫様の馬車を引いてるような、おとぎ話に出てくるみたいな、雪のように真っ白な白馬なんて奇跡に近いわ。砂粒の確率とは言わないけど。宝石や織物をデザインするンじゃないんだから。お金じゃ遺伝はどうにもならないわ」

父「白馬か…」

母「…あなた、もしかして、鹿毛や栗毛あたりの元競走馬サラブレッドを、染料で真っ白に染めようとしてる?」




母(もうっ、ホントに末娘に甘いんだからっ)

母(ちょっと甘やかし過ぎかしら?夫もふたりの兄様たちも───特に年子の兄様は、妹が望めばなんでもしてあげちゃうんだから)

母(もし、後宮入りして、陛下に見初められて、正妃になって、国が栄えるか滅びるかの有事の時、『朱雀を呼び出せないなら、クジャクを朱く塗ればいいじゃないっ♡』なんて、KYな発言で、国民の感情を逆撫でして、処刑台に送られるようなコに育たなきゃいいけど……)


父「───心配してるのかい?大丈夫だよ。染料には、真珠の粉と植物由来の天然成分を使用し、紅南国一の有名織物問屋の意地と威信プライドをかけて、織物で培った技術ノウハウを生かし、必ずアレルギーテストを行ってから、優しく丁寧に染め上げるからね。馬の地肌のことはなにも心配しなくていいよ。君は優しいね」

母「馬の地肌のことはなにも心配してないわよ」

おわり
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