☆同室遊戯☆

☆同室遊戯3☆


ー1ー



「寒いわ」

夕の刻。

そう言って、両手で両腕をさするそぶりを見せると、
柳宿はそのまま部屋に引っ込んでいってしまった。

いつもの寒がりかと思い、
また、夜、酒の席にでも、毛布にくるまった姿を現すかと思ったが、現さない。

一杯目のグラスを空にしたとこで、
翼宿は、鬼宿とふたりきりの晩餐の席から立ちあがった。

「ちょっと様子、見てくるわ」

「ふ~ん。じゃ、オレも、ちょっと、見に行くわ」


なんで見にくんねん、と、思いながら、
翼宿は鬼宿とふたり、柳宿の部屋の扉を開け、
毛布にくるり、軽い寝息を立てている柳宿のひたいに、手をあてた。

「熱、あるなぁ。汗、かかせんと」

優しく前髪を撫でる。

「たま、オレェ、コイツのカラダ、あっためるから、
お前は、美朱の部屋にトランプでもしに行ってえや」

翼宿は服を脱いだ。

鬼宿も服を脱いだ。

「─────って、なンで、お前も脱いでんねんッ!?」

「なんでって、カラダ、あっためんだよ。汗かかせてやらねーと」

「ソレ、オレのアイディアやんッ!?」

「前々から、美男子のカラダにキョーミあったんだよ☆

お前、前でいーよ」

「当たり前やろッ!

なに、お前、譲ってンねんッ!?
なに、俺、譲られとンねんッッ!?

で、オレ、お前、後ろでエエで、ナイからなぁ!?

あっ!?なに、先、布団に入ろーとしてンねんッ!!?

ああっ!?まてッ!!まだ、毛布、めくんなっ!!
すでに、素っ裸だったら、どないすンねんッッ!?」

「うるさいぞ、お前」

翼宿は全裸で、全裸の鬼宿を押しのけ、布団に潜り込み、
横向きで、きちんと寝巻を着て寝ていた柳宿を脱がせて全裸にし、
前から抱き寄せる。

鬼宿は、後ろから、柳宿の背中を抱く。

「お前っ、そンな、柳宿の背中にひっつくなっ!!」

「ひっつかなきゃ、意味ないだろ」

「お前の、ひっつきはな、掛け布団と中布団の、
端と端をズレんよーに結ぶ紐ほど、意味ないねん」

「じゃあ、意味あるだろ」



しばらく、前と後ろから、
男にしては華奢なその身体を抱きしめていると、
二人分の体温で、
スベスベと、さらり、と、していた肌が、
じんわりと汗をかき、しっとりと、
翼宿と鬼宿の肌に吸い付いてくる。

さらにしばらくして、翼宿は、柳宿のひたいに手をあてた。

「熱、下がったみたいやな」

「ひどくなんなくてよかったな」

「ほんまやで、しかし」

翼宿は、ほっとしたように言って、柳宿の前髪を優しく撫でた。
乾いた布で、ひたいから頬、細い首から薄い胸に、つたう汗を拭く。

鬼宿は、柳宿の背中を拭く。

「お前、柳宿のどこが好きなんだよ?」

「教えたれへん」

「背中が白いところか?」

「黙って、拭け。余計なコト、ゆーな。余計なトコも、触ンな」

「ほんとに、男かぁ!?」

「おい、後ろのオマエッ、柳宿のアソコ触ったら、殺すからなぁっ!!」


「あんたらっ、うるさいっ」


ぱちり、と、目を開け、柳宿が言う。


「すまん」
「わりぃ」

「お、起こしたか?」

翼宿が、申し訳なさそうな声で訊く。

「こんだけ騒がしかったら、死んでても起きるわよ」

元気そうな声で柳宿が答える。

「さむそーやったからな、カラダ、あっためてやろー思てな。こいつは知らん」

「オレも、そーだよ!柳宿、大丈夫か?」

「柳宿、大丈夫か?」

「うん、もう大丈夫。ラクになった♡」

「あったかいか?」

「あったかい♡」

「キスしてもエエか?」

「いーわよ♡─────ンッ♡」

キスする、ふたり。

「─────じゃ、オレ、戻るわ。自分の部屋に」

「あ、たま、まだ、おったん。すまん。全然、気ィつかんかった。
出口はあちらやで。入ったとこから出てくんやで。
寒いからな、あったかくして寝ぇや。自分の部屋で。はい、おやすみなさ─────」

「え、いーわよ♡まだ、いてくれてぇ」

柳宿が、毛布から抜け出そうとする鬼宿の腕を、ガッ、と、つかむ。

(なぬっ!!?)

「ふたりより、三人のほーが、あったかいじゃない♡」

(だってよ、翼宿クン☆)

勝ち誇った顔をする鬼宿。

(数の勝利やなっ(?))

割り切れない数に敗北し、悔しさに、布団の端を噛む翼宿。

続く
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