☆美少女戦士海月遊戯☆

#5


「…な、なんや、コレ…」

渡されたのは、ぐるぐる巻きに巻かれ、
括(くく)られ、結(ゆ)わわれた、札<カード>。
龍の髭で。縦結びに。

「なにって、誕生日プレゼント。
知らんの?今日、アンタの誕生日やで」

鶏肉の腰果<カシューナッツ>炒めに、
酢豚に、青椒肉絲に、肉饅頭………。
食卓に、いつもより豪勢な夕飯が並ぶ。

「なあなあ、愛チャン♡海深海姫と海雷姫の札、交換せぇへん?」
「あっ♡ウチも~♡海麗人姫の札、集めてんねん♡」
「小海月姫の秘宝札<シークレットカード>、持ってる?」
「海蛍姫の限定札<リミテッドエディション>、あったら交換してやー♡」

と、上、四人の姉。

「ええよ~♡」

と、愛想のいい、愛嬌のある顔で答え、
真剣な瞳で、交換してもよい札を吟味する。

「それ、海炎姫の私服札<オフショットカード>やで」

「……で?(※それで、なにぃ?)」

「でも、ウチ、惚れっぽくって、家庭的で、力持ちの、
海雷姫、推しやねん」

「……が?(※それが、なにぃ?)」

「アンタにやるわ。宝物やで。大切にしいや」

と、愛瞳。

「いるかーーーーーーーッ!」

「ウチもいらんし。それ、八枚、カブってんねん」

「ゴミやんッ!!」

ばんッ、と、誕生日プレゼント(ゴミ)を、
食卓の、ちょうど空いた中央に、叩きつけた。

「だっ!!?」

ドスッ、と、頭の上に乳を置かれる。

「やめて!!お母チャン、首のホネっ、折れるっ!!」

「ハイハイ、そこ、なおしいっ!(※片付けなさい)」

なおされた、食卓の中央に、
ドンッ、と、円(ホール)の中華風カステラを置く。

「ハイッ、好きなだけ召し上がりぃ!!アンタが本日の主役やでっ♡」

「歯型、付いとるやんっ!!?」

すでに歯型の付いた誕生日ケーキ。

「うわーーーーんっ!!!
父ちゃんっ、なんか言うたってやっ!!?
姉ちゃんらと母ちゃんにっ!!」

男親に泣きついた俊宇。

「…お父さんも、愛美海姫の札<カード>を
水海姫の札<カード>に交換して欲しい…」

我札箱<マイ・カードケース>を取り出した父親。

「「「「「え~よ~♡」」」」」

と、五人の姉。

「オトンのアホんだらーーーーーッ!!!」

本日の主役は、すでに歯形付きの誕生日ケーキをやけ食いする。

「あっ!?こらっ、俊宇っ!!」
「独り占めしたらアカンでっ!」
「なに、考えてんねんっ」
「そんながっついてっ」
「犬のコかっ!?」

「もごもごっ!!(うわ~~~~んッ!!)」


(こんな家、出てったる)


そうはじめて家出を、幼心に誓った俊宇。
今日で5歳。すでに女嫌い。
すでに、知ってか知らぬか、
巫女と国を守護する、朱雀七星士のひとり。


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