☆お飯事遊戯(おままごとゆうぎ)☆

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ピンク色のピクニックシートの上から降りた星宿様。

「次は、上り棒で勝負だ!」

「望むところなのだ!」

井宿がそれに続く。

「あなた、今日、お帰りは?」

「ん?ああ、遅くなる。
起きて待ってなくてよい。先に寝ててよい」

「は~い♡」

いいお返事をする柳宿。

「ばぶちゃんも♡パパに、行ってらっしゃい、しましょ~ねぇ♡」

「………」

無言でいる翼宿の手を取り、
そのまま、ぶんぶん、と、力ずくで、手を振らせ、
行ってらっしゃい、させる柳宿。

強制的に、ぶんぶん、と、手を振らされ、
行ってらっしゃい、させられる翼宿。


父親の姿が上り棒の方へと消えると、子供の手を開放し、
倒れたプラスチックのコップを起こし、
投げ出された骨型のおもちゃは拾い上げ、
白も黒もなく転がったオセロの石を拾い集め、
お片付けをしてゆく。
ルンルンルン~♪と、鼻歌交じりに。

みるみるうちに、ピンク色の絨毯に、
ピンク色のダイニングセットの我が家は元通り。
仕上げに、ハルジオンの花を一輪、飾る。


「……お前、それでええんか?」

なにが?と、
左目の下に黒子のある、タレ目がちな目をさせる。

「リコンするなら、早い方がええで。

って、一番上のネーチャンがゆうとったで」

それが?と、
左目の下に黒子のある、タレ目がちな目をさせる。
そして、慈悲深く、愛情深く、思慮深い、
瞳と声と微笑みで、言う。

「離婚なんてしないもーん♡
汝、病める時も健やかなる時も、いかなる時も、これを愛し、
尽くし、添い遂げるって、神に誓ったんですもの、ア・タ・シ♡
夫婦ですもの♡死が二人を分かち合っても♡」

「ふ~ん。あ、カマキリ、交尾しとる」

「あ、もうっ、ダーリンたら、忘れてるッ♡愛妻弁当ッ♡



って、誰よッ!?あのオンナはっ!!?」

柳宿は、ピンク色のピクニックシートの上から、
上り棒の下に広げられた、桜色のピクニックの横で、
なわとび をしている星宿様の隣で、
一緒に なわとび をしている、オンナのことを見た。

「なんで、上り棒しないで、なわとび してンのよ!?
だいたい、僧侶は、どこ行ったのよッ!?



って、誰よッ!?あのオンナはっ!!?」

「たしかぁ、もも組のぉ……」

「すみれ組でもないのにッ、彩貴帝クンとっ、親しいことっ!



って、誰よッ!?あのオンナはっ!!?」

「たしかぁ、美朱とかゆう……」

カマキリの交尾を見ながら言う翼宿。

「美朱……」

わなわな、と、肩を震わせる柳宿。

「アタシなんて、この学校法人朱雀幼稚園に入って1年近く、
まだ、彩貴帝クンと、あやとり もしたことないのに~~~ッ」

「本宅へ帰ってったな」

「彩貴帝クンも、彩貴帝クンだわっ!
アタシの方が、かわいくて美人で、
料理上手で床上手なのに!!
あんなちっぽけな、もも組の小娘の何がいーの!?」

「まあ、お前が男やからやろ。トコジョーズってなんや?」

キーーーッ、と、声にならない乙女の心の声を上げる柳宿。

「なあなあ、見てみぃ!カマキリ、交尾しとるでっ!
なぁ!?なぁって!?」

「カマキリの交尾は、どうだっていーのよッ!
もも組の美朱っ!絶っ対っ、許さないんだから~~~~ッッ!!」

柳宿は、死より前に、
二人を分かち合いそうな恋敵のことを、
ギラリ、と、睨み付けた。

美朱は、ぶるり、と、ひとつ、身震いすると、
キョロキョロ、と、あたりを見渡した後、
ぽりぽり、と、不思議そうな顔で、おだんご頭をかいた。


☆お飯事遊戯(おままごとゆうぎ)☆おわり☆
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