1.Trigger on.
貴方のお名前は?
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目が覚めた時には、私の身体はコードに繋がれていた。白い部屋の中で、白いシーツの上で、簡素な服をまとった状態。ぼやけた視界で周囲を伺えば、同じような状態で眠る人が数名見えた。そして、私のベッドの横には、顔をくしゃくしゃにした祖母が座っている。
「起きたかい?」
「……ぁ、ちゃ…………?」
「無理に喋らなくてもいいよ、ずっと寝てたんだから」
ずっと、ずっととは、と聞きたくても乾いた口からは空気が漏れる音しか出てこない。人の声が出なくなるまでは、寝たきりでも確か何週間かかかるはずだ。緩慢な動きで頭を動かし、枕元にあった時計に目をやると、最後に見た日付から一ヶ月ほど眠っていたことになっている。思っていたよりも短いのか長いのかは微妙なところだが、いきなり半年間眠っていたなんてものよりはマシだろう。
そして脳裏に浮かぶのは、やはりあの甲殻類。人々を思う様蹂躙していったあいつらは、今何をしているのか。
指先を動かしてみる、問題なく動く。足の指、シーツを蹴る感触がある。肘も曲がり、頭も動く、腕に力を入れて上半身だけを起こすと、祖母がペットボトルを渡してくれた。
一口二口喉に通し、少しばかり潤った喉からは今度は正常に声が出た。けれど本調子にはまだ遠く、暫く時間がかかるだろう。
「あの、きょ……」
ひとまず京介は何処にいるのだろう、と聞こうとして口籠った。今更どんな顔をしてあの子のことを聞けばいいのだ。あの時誰よりも守りたかった子どもを、自分可愛さに見捨てて逃げてきた。
そもそも祖母も両親も、あの子のことは私の言葉でしか知らない。会うのはいつも公園だったため、あの子の家も、何もかも知らないままだ。
何も知らないまま、あの子を置いてきてしまった。置いて、見捨て、見殺しにした。あの時あの子が口にした言葉は何だ、何かを訴えてはいなかったか。あの子は言っていた。
「……て、……けて、助けて?」
怯えきった視線を振り払うように走っていた。縋るように伸ばした手を引くことは叶わなかった。
——私はなんてことをしてしまったのか。
途端、プツリと何かが切れたように泣きじゃくる私を、バケモノへの恐怖のせいだと思ったのだろう。祖母は何も言わずに背中をさすってくれた。けれど、今はその気遣いですら心臓を押し潰しそうなほどだった。
「起きたかい?」
「……ぁ、ちゃ…………?」
「無理に喋らなくてもいいよ、ずっと寝てたんだから」
ずっと、ずっととは、と聞きたくても乾いた口からは空気が漏れる音しか出てこない。人の声が出なくなるまでは、寝たきりでも確か何週間かかかるはずだ。緩慢な動きで頭を動かし、枕元にあった時計に目をやると、最後に見た日付から一ヶ月ほど眠っていたことになっている。思っていたよりも短いのか長いのかは微妙なところだが、いきなり半年間眠っていたなんてものよりはマシだろう。
そして脳裏に浮かぶのは、やはりあの甲殻類。人々を思う様蹂躙していったあいつらは、今何をしているのか。
指先を動かしてみる、問題なく動く。足の指、シーツを蹴る感触がある。肘も曲がり、頭も動く、腕に力を入れて上半身だけを起こすと、祖母がペットボトルを渡してくれた。
一口二口喉に通し、少しばかり潤った喉からは今度は正常に声が出た。けれど本調子にはまだ遠く、暫く時間がかかるだろう。
「あの、きょ……」
ひとまず京介は何処にいるのだろう、と聞こうとして口籠った。今更どんな顔をしてあの子のことを聞けばいいのだ。あの時誰よりも守りたかった子どもを、自分可愛さに見捨てて逃げてきた。
そもそも祖母も両親も、あの子のことは私の言葉でしか知らない。会うのはいつも公園だったため、あの子の家も、何もかも知らないままだ。
何も知らないまま、あの子を置いてきてしまった。置いて、見捨て、見殺しにした。あの時あの子が口にした言葉は何だ、何かを訴えてはいなかったか。あの子は言っていた。
「……て、……けて、助けて?」
怯えきった視線を振り払うように走っていた。縋るように伸ばした手を引くことは叶わなかった。
——私はなんてことをしてしまったのか。
途端、プツリと何かが切れたように泣きじゃくる私を、バケモノへの恐怖のせいだと思ったのだろう。祖母は何も言わずに背中をさすってくれた。けれど、今はその気遣いですら心臓を押し潰しそうなほどだった。