1.Trigger on.
貴方のお名前は?
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それが訪れたのは、本当に何でも無い日だった。
高校生になった私は、新しい友人や今までとは違う授業形式に一喜一憂しつつ過ごそうとしていた。少しばかり辺鄙な場所に家があるせいで友人と一緒に帰ることはできていないが、それは仕方のないことだ。
けれどもこうして休みの日にも関わらず、遊ぶ相手が京介しかいないというのも困りもので。そもそも彼にも他に友人が居ないのだろうか、なんてことを考えながら、待ち合わせ場所に行くため木々を抜け——。
抜けようとして、ソレは現れた。
小さく浮かんだ黒いナニカは、さしずめブラックホールのような。視界に入った瞬間にそばにあった電柱が爆発したような音を立てて、ぽっかりと空いた穴はそのまま周囲の建物を飲み込んだ。
——煙と瓦礫に覆われた
穴から出てきたのは甲殻類のような見た目をした白い大きな宇宙人。否、それはヒトの形をとってはいない。奴らは自らの大きな鉤爪で人の心臓を抉っていく。
それらは、転がるモノをヒトと形容するのが悍ましいほどに、機械的に粛々とそれらを実行していた。
——真っ赤なヒトが転がって
足元に小石が跳ねた瞬間、私は弾け飛ぶようにその場を走り去った。周囲に横たわる人々には目もくれず、私は通い続けていた公園を目指す。何人か生きたまま丸呑みされていたが、私は私が死なないようにするだけで精一杯だ。
——子どもの泣き叫ぶ声がする
そちらを見てはいけない。助けるどころか、巻き込まれて死んでしまう。そんな選択肢すら浮かぶ暇がないほど、足を動かし続けているだけなのだが。
走って。
走って。
身体中をどこかしらにぶつけながらたどり着いた公園には、ここ数年で仲良くなった少年が座り込んでいた。すぐさま駆け寄り腕を引き、足が縺れるのも構わず引きずっていく。
走って。走って。
転びそうになった私を、いつの間にか私の手を引く側になっていた彼が支えた。ああ、足が棒のように動かなくなりそうだ。
「走って……!」
「はい、でも一緒に」
彼の声は震えていた。当たり前だ、彼はまだ小学校も卒業していない子どもなのだ。チョコレート色の目に涙をいっぱい溜め、ぐいぐいと力任せに私を引っ張っていく出会った頃より幾分か大きくなった幼い手。その手をまた握り返そうとした瞬間、不意に私の身体が沈んだ。
——否、京介の身体が浮いたのか。
「きょうっ」
迫ってくる得体の知れないバケモノたちに、今も崩れ落ち続ける足元の瓦礫。空中に放り出されながら、必死にこちらに手を伸ばす京介。硝煙の空では、バケモノたちによって攫われている人々が、京介と同じ恐怖と絶望に塗り潰された瞳でこちらを見ている。
そのままバランスを崩して地面に叩きつけられた私は、守りたかったあの子からも目を逸らし、そして一目散に逃げ出した。
「——て」
背中にかけられた声が、ずっと呪いのように焼き付いて離れない。
高校生になった私は、新しい友人や今までとは違う授業形式に一喜一憂しつつ過ごそうとしていた。少しばかり辺鄙な場所に家があるせいで友人と一緒に帰ることはできていないが、それは仕方のないことだ。
けれどもこうして休みの日にも関わらず、遊ぶ相手が京介しかいないというのも困りもので。そもそも彼にも他に友人が居ないのだろうか、なんてことを考えながら、待ち合わせ場所に行くため木々を抜け——。
抜けようとして、ソレは現れた。
小さく浮かんだ黒いナニカは、さしずめブラックホールのような。視界に入った瞬間にそばにあった電柱が爆発したような音を立てて、ぽっかりと空いた穴はそのまま周囲の建物を飲み込んだ。
——煙と瓦礫に覆われた
穴から出てきたのは甲殻類のような見た目をした白い大きな宇宙人。否、それはヒトの形をとってはいない。奴らは自らの大きな鉤爪で人の心臓を抉っていく。
それらは、転がるモノをヒトと形容するのが悍ましいほどに、機械的に粛々とそれらを実行していた。
——真っ赤なヒトが転がって
足元に小石が跳ねた瞬間、私は弾け飛ぶようにその場を走り去った。周囲に横たわる人々には目もくれず、私は通い続けていた公園を目指す。何人か生きたまま丸呑みされていたが、私は私が死なないようにするだけで精一杯だ。
——子どもの泣き叫ぶ声がする
そちらを見てはいけない。助けるどころか、巻き込まれて死んでしまう。そんな選択肢すら浮かぶ暇がないほど、足を動かし続けているだけなのだが。
走って。
走って。
身体中をどこかしらにぶつけながらたどり着いた公園には、ここ数年で仲良くなった少年が座り込んでいた。すぐさま駆け寄り腕を引き、足が縺れるのも構わず引きずっていく。
走って。走って。
転びそうになった私を、いつの間にか私の手を引く側になっていた彼が支えた。ああ、足が棒のように動かなくなりそうだ。
「走って……!」
「はい、でも一緒に」
彼の声は震えていた。当たり前だ、彼はまだ小学校も卒業していない子どもなのだ。チョコレート色の目に涙をいっぱい溜め、ぐいぐいと力任せに私を引っ張っていく出会った頃より幾分か大きくなった幼い手。その手をまた握り返そうとした瞬間、不意に私の身体が沈んだ。
——否、京介の身体が浮いたのか。
「きょうっ」
迫ってくる得体の知れないバケモノたちに、今も崩れ落ち続ける足元の瓦礫。空中に放り出されながら、必死にこちらに手を伸ばす京介。硝煙の空では、バケモノたちによって攫われている人々が、京介と同じ恐怖と絶望に塗り潰された瞳でこちらを見ている。
そのままバランスを崩して地面に叩きつけられた私は、守りたかったあの子からも目を逸らし、そして一目散に逃げ出した。
「——て」
背中にかけられた声が、ずっと呪いのように焼き付いて離れない。