夢番外
貴方のお名前は?
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木々の隙間から葉を揺らし、風に乗って、私の耳までヴァイオリンの音色が届く。持っていた桶を足元に置いて、そっと木に寄りかかれば、柔らかな音が私の瞼を重くする。
音に温度はないけれど、木洩れ陽と一緒に身体を包むそれは、何より暖かいもののように思えた。
それは昔、私が教えた曲。今では何処でその曲を聴いたのかすら思い出せないけれど、その歌だけは脳にこびりついていた。罪を問い、罰を問い、そしてそれらが何故あるかを謳ったソレは、彼にぴったりではないか。そんな思いを巡らせながら、小さく歌詞を口ずさむ。
周りに人がいないのも相まって、ソレは酷く場にそぐわないものに感じる。問いかける相手も、答えてくれる相手も、ここにはいないのだから。そう思うと声は段々と小さくなっていき、終いには歌い切ることなく膝が折れた。
ヴァイオリンは、最後までメロディを届けてくれた。私はその場から動けず、ぐるぐると歌詞だけが脳を廻る。
「維織、帰ろう」
不意にヴァイオリンケースを持った青年が、こちらに手を差し伸べてきた。いつまでも手を取る気のない私の身体を引き上げ、人の喧騒の中へと連れて行こうとする。二人でケースを握って、水の入った桶は彼の反対側の手にあって。私の体重までもが背負われているような、妙な感覚だ。
「もう弾かないの?」
「君はこの曲を聴くと不安定になるからね」
それでも彼がこの曲を弾くのは、ひとえに私がこの曲を好きだということを知っているからだと、前に教えてくれた。記憶も剥がれ、出会いすらも忘れた私。そんな私にいつまでも寄り添ってくれる彼こそが、私にとっての木漏れ日なのだ。
音に温度はないけれど、木洩れ陽と一緒に身体を包むそれは、何より暖かいもののように思えた。
それは昔、私が教えた曲。今では何処でその曲を聴いたのかすら思い出せないけれど、その歌だけは脳にこびりついていた。罪を問い、罰を問い、そしてそれらが何故あるかを謳ったソレは、彼にぴったりではないか。そんな思いを巡らせながら、小さく歌詞を口ずさむ。
周りに人がいないのも相まって、ソレは酷く場にそぐわないものに感じる。問いかける相手も、答えてくれる相手も、ここにはいないのだから。そう思うと声は段々と小さくなっていき、終いには歌い切ることなく膝が折れた。
ヴァイオリンは、最後までメロディを届けてくれた。私はその場から動けず、ぐるぐると歌詞だけが脳を廻る。
「維織、帰ろう」
不意にヴァイオリンケースを持った青年が、こちらに手を差し伸べてきた。いつまでも手を取る気のない私の身体を引き上げ、人の喧騒の中へと連れて行こうとする。二人でケースを握って、水の入った桶は彼の反対側の手にあって。私の体重までもが背負われているような、妙な感覚だ。
「もう弾かないの?」
「君はこの曲を聴くと不安定になるからね」
それでも彼がこの曲を弾くのは、ひとえに私がこの曲を好きだということを知っているからだと、前に教えてくれた。記憶も剥がれ、出会いすらも忘れた私。そんな私にいつまでも寄り添ってくれる彼こそが、私にとっての木漏れ日なのだ。