序章 ムッシュ・ド・パリの子ども
貴方のお名前は?
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煌びやかな宮廷。平民が近づくことさえできない、フランスの陽の部分。その中に私のようなみすぼらしい人間が入っても気にされなくなったのは、何十回目からだったか。気配の消し方をこんなことで学ぶとは思わなかった。
入り口近くの木々の間にある道を辿り、目的地へと急ぐ。木々がぽっかりと無くなった空間に、その人物は立っていた。
「お久しぶりです、国王陛下」
「久しぶりだな。さあ、手早く始めよう」
国王陛下——ルイ十六世。彼のような人物が何故私と密会しているのかと言えば、ひとえに先先代あたりからの付き合いだった。
シャルル=アンリが産まれる前、一人であてもなく彷徨っていた時期がある。当時建築されたばかりのヴェルサイユに紛れ込み、不審者扱いで捕まりそうになった時に出会ったのが太陽王ルイ十四世だ。
まあ長い治世によって色々な功績を残した人物だったのだが、何故か私の異常性には中々気がつかなかった人物でもある。小汚い娘が宮殿に入り込んで、なお平伏しなかったことに興味を抱いた老人は、少し話し相手になれと命令してきた。
その後何回か密会を続けても、私に戦の知識はなく、度重なる戦争に財政難となったフランスにどうしてやることもできなかった。
それがどうしようもなく歯がゆく思い、私はこっそり兵士に紛れ込んだ。重い甲冑を着込み、何度も死にかけ、それでも生き残った。小さい身体は、狙われにくい事を知った。
彼は私に傍観を命じた。長い年月を生きられるのであれば、無駄に散らすこともないのだと諭した。密会の中で私に愛する人間がいると知った国王は、せめてその人物が息を引き取るまでは、生きるべきだと言ったのだ。
パリの魔女という異名はすでに届いていたはず。魔女狩りも最盛期だった世の中で、護ってくれていたのは国王だった。私は他国民で、忠誠を誓えない。そう言ったにも関わらず、彼が私を処刑することはなかった。
その後なんの因果かルイ十五世にも縁があり、ズルズルとその縁を手繰ったまま今に至る。
私は使われたかった。恩義のあるフランスに。けれど教養もなく、身分も低い私に出来ることは限られている。
だからこそ、先先代から問題になっている財政難の愚痴を聞くことやメンタルケアが主に私の役割だ。
「君は、本当に変わらないんだな」
「変わりませんとも。呪いですから」
お互いに、もう後がない事を知っていた。王宮に入ったヒビは、もう修復不可能なところまできている。
入り口近くの木々の間にある道を辿り、目的地へと急ぐ。木々がぽっかりと無くなった空間に、その人物は立っていた。
「お久しぶりです、国王陛下」
「久しぶりだな。さあ、手早く始めよう」
国王陛下——ルイ十六世。彼のような人物が何故私と密会しているのかと言えば、ひとえに先先代あたりからの付き合いだった。
シャルル=アンリが産まれる前、一人であてもなく彷徨っていた時期がある。当時建築されたばかりのヴェルサイユに紛れ込み、不審者扱いで捕まりそうになった時に出会ったのが太陽王ルイ十四世だ。
まあ長い治世によって色々な功績を残した人物だったのだが、何故か私の異常性には中々気がつかなかった人物でもある。小汚い娘が宮殿に入り込んで、なお平伏しなかったことに興味を抱いた老人は、少し話し相手になれと命令してきた。
その後何回か密会を続けても、私に戦の知識はなく、度重なる戦争に財政難となったフランスにどうしてやることもできなかった。
それがどうしようもなく歯がゆく思い、私はこっそり兵士に紛れ込んだ。重い甲冑を着込み、何度も死にかけ、それでも生き残った。小さい身体は、狙われにくい事を知った。
彼は私に傍観を命じた。長い年月を生きられるのであれば、無駄に散らすこともないのだと諭した。密会の中で私に愛する人間がいると知った国王は、せめてその人物が息を引き取るまでは、生きるべきだと言ったのだ。
パリの魔女という異名はすでに届いていたはず。魔女狩りも最盛期だった世の中で、護ってくれていたのは国王だった。私は他国民で、忠誠を誓えない。そう言ったにも関わらず、彼が私を処刑することはなかった。
その後なんの因果かルイ十五世にも縁があり、ズルズルとその縁を手繰ったまま今に至る。
私は使われたかった。恩義のあるフランスに。けれど教養もなく、身分も低い私に出来ることは限られている。
だからこそ、先先代から問題になっている財政難の愚痴を聞くことやメンタルケアが主に私の役割だ。
「君は、本当に変わらないんだな」
「変わりませんとも。呪いですから」
お互いに、もう後がない事を知っていた。王宮に入ったヒビは、もう修復不可能なところまできている。
