第四章 記憶
貴方のお名前は?
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アラヤの用意した空間の中で、最初の聖杯戦争を思い返す。地上の肉体はすでに、分解されているか腐り果てているだろう。
あの時彼が聖杯に願ったことは、結局わからずじまいだった。けれどセイレムの経験を経て、情報を得て、なんとなく知れた気がする。
セイレムで彼は贖罪を求めていた。オルレアンで彼は許しを請うていた。パリでは自分だけ処刑を受けないことに苦悩していた。
けれどそれが叶ってしまえば、彼の霊核は歪む。ムッシュ・ド・パリとしての幽霊が、彼というサーヴァントなら、それは叶ってはいけないのだ。だから、最初の聖杯戦争で願いを叶えた時点で、自分がマスターだった時に居たアサシンは座から消えたと推測できる。
彼の願いを叶えた最初の聖杯戦争が、全ての終わりだった。最初から私の願いも無意味だったのだ。
——契約せよ。契約せよ。
頭上で大きなナニカが私の心臓を狙っている。それは生き物と言うよりは、奇怪な化け物だった。それが人類史を守るために存在するナニカ、即ちアラヤであると私は直感的に理解した。
「私を、守護者として飼う気か?」
アラヤの目的は人類史の存続である。そのために自分一人では英霊にはなれない人間と契約し、その人物が一人の力では到底果たせないことをさせる代わりに守護者として死後を縛るのだ。
——お前は生前契約を果たしている。
——自分の無力さを嘆き、自分以上の力を求めたツケを払う時が来た。
「私は聖杯を勝ち取ってその力を得た。だからこの力は私の物の筈」
——否、聖杯とは世界也。世界とは阿頼耶識也。是即ち契約の証。
つまり聖杯という大層な願望機を求めて手に入れた時点で、契約は完了しているという。なんて押し売り商売だ。
というより、本来の聖杯がアインツベルンの作った魔術儀式ならば、私にとっての最初の聖杯戦争こそが別物だった。全ては仕組まれていたのだと舌打ちをする。
「私に、何を求める。守護者か?」
——否、お前は世界を護りたいとは思わないだろう。
自分の存在意義は、最早あの人だけになっている。その人ですら自分は生涯を見守り、聖杯戦争を過ごして、どちらももう居ないし逢えない。
だから自分はもう、消えてしまって構わない。
——お前に英霊としての座を与える。そこで、サーヴァントのなり損ないとして働いてもらう。
——お前の罪は消えていない。この世界のどこかに召喚される、お前の罪の証を取り返すまで。
罪の証。つまり、私の持っていた赤い石のことだろう。あの赤い石は月の聖杯で、通常の聖杯と共存するとそれこそアラヤの危機らしい。
「……世界のためではなく、私利私欲で動いていいんだな?」
あの人ではない、私のことを知らない彼。もう一度だけ彼に逢えるというのなら、私は世界と契約をした。
あの時彼が聖杯に願ったことは、結局わからずじまいだった。けれどセイレムの経験を経て、情報を得て、なんとなく知れた気がする。
セイレムで彼は贖罪を求めていた。オルレアンで彼は許しを請うていた。パリでは自分だけ処刑を受けないことに苦悩していた。
けれどそれが叶ってしまえば、彼の霊核は歪む。ムッシュ・ド・パリとしての幽霊が、彼というサーヴァントなら、それは叶ってはいけないのだ。だから、最初の聖杯戦争で願いを叶えた時点で、自分がマスターだった時に居たアサシンは座から消えたと推測できる。
彼の願いを叶えた最初の聖杯戦争が、全ての終わりだった。最初から私の願いも無意味だったのだ。
——契約せよ。契約せよ。
頭上で大きなナニカが私の心臓を狙っている。それは生き物と言うよりは、奇怪な化け物だった。それが人類史を守るために存在するナニカ、即ちアラヤであると私は直感的に理解した。
「私を、守護者として飼う気か?」
アラヤの目的は人類史の存続である。そのために自分一人では英霊にはなれない人間と契約し、その人物が一人の力では到底果たせないことをさせる代わりに守護者として死後を縛るのだ。
——お前は生前契約を果たしている。
——自分の無力さを嘆き、自分以上の力を求めたツケを払う時が来た。
「私は聖杯を勝ち取ってその力を得た。だからこの力は私の物の筈」
——否、聖杯とは世界也。世界とは阿頼耶識也。是即ち契約の証。
つまり聖杯という大層な願望機を求めて手に入れた時点で、契約は完了しているという。なんて押し売り商売だ。
というより、本来の聖杯がアインツベルンの作った魔術儀式ならば、私にとっての最初の聖杯戦争こそが別物だった。全ては仕組まれていたのだと舌打ちをする。
「私に、何を求める。守護者か?」
——否、お前は世界を護りたいとは思わないだろう。
自分の存在意義は、最早あの人だけになっている。その人ですら自分は生涯を見守り、聖杯戦争を過ごして、どちらももう居ないし逢えない。
だから自分はもう、消えてしまって構わない。
——お前に英霊としての座を与える。そこで、サーヴァントのなり損ないとして働いてもらう。
——お前の罪は消えていない。この世界のどこかに召喚される、お前の罪の証を取り返すまで。
罪の証。つまり、私の持っていた赤い石のことだろう。あの赤い石は月の聖杯で、通常の聖杯と共存するとそれこそアラヤの危機らしい。
「……世界のためではなく、私利私欲で動いていいんだな?」
あの人ではない、私のことを知らない彼。もう一度だけ彼に逢えるというのなら、私は世界と契約をした。
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