第四章 記憶
貴方のお名前は?
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セイラム魔女裁判というのは、歴史的に見ればかつて一つの村で起こった集団パニック現象である。
本来であればその時代、既に魔女裁判はヨーロッパにおいて衰退していた。それをとある村娘たちが数名の女性を魔女と告発し、社会的背景から村人全体に集団ヒステリーとして蔓延した。
その告発者の一人がアビゲイル・ウィリアムズ。最初に告発された一人がティテュバという使用人である。
これは、正規の歴史の話。
私たちが見ているのは、そのセイラム——もといセイレムにおいて、そういった役割を与えられた人形劇。アビゲイルと名乗った少女も、ティテュバと名乗った使用人も、いわばそういったロールプレイを押し付けられているに過ぎない。
外から来た私たちや、途中で判事としてやって来たホプキンスが例外なのか。それとも私たちですら取り込まれそうになっているのか、カルデアの面々が裁判に巻き込まれていく中でわからなくなってしまった。
「mademoiselle」
膝を抱えてぼんやり外を見ていると、クイーンズイグリッシュ訛りの入った「お嬢さん」が耳に入る。ゆっくり振り向けば、そこに居たのはやはり緑衣のアーチャーで。
返事をしない私の隣にそっと座り、何を言うわけでもなく空を見た。
「なんで、シャルルが捕まらなくちゃならないの……!」
届かない。通訳がいない今、彼にこの言葉は届かない。それをいいことに泣き濡れた顔で地面に罵詈雑言を吐き捨てながら、ここ数日で起こったことを思い返す。
魔女裁判が始まり、ティテュバが処刑された。食屍鬼が湧いて出た。マタ・ハリが処刑された。シャルルがホプキンス側についた。私も共に残った。けれど殺人を庇い、シャルル=アンリ・サンソンが処刑されることになった。どれもこれも謂れのない罪で、彼らは共に無罪だった。
結果的に最初に処刑された二人は無事だったらしいけど、彼は同じ方法を取ろうとはしないだろう。
何故私は裁かれない。魔女は私だ。彼が処刑されるくらいなら、私が処刑されればいいのに。
「私も一緒に、行きたい」
目頭が熱くなり、頬を冷たい水がつたう。
処刑がどうのとは言わない。ただ彼の元に行きたい。行きたい。いきたい。
「Can I come with you?」
「Where?」
「Charles-Henri Sanson」
ゆっくり、私にも聞き取りやすいように放たれた英語。本当に、本当にシャルルの元へ連れていってくれるというのか、この人は。
私はロビンの手を取って、夜の空へ駆けた。
本来であればその時代、既に魔女裁判はヨーロッパにおいて衰退していた。それをとある村娘たちが数名の女性を魔女と告発し、社会的背景から村人全体に集団ヒステリーとして蔓延した。
その告発者の一人がアビゲイル・ウィリアムズ。最初に告発された一人がティテュバという使用人である。
これは、正規の歴史の話。
私たちが見ているのは、そのセイラム——もといセイレムにおいて、そういった役割を与えられた人形劇。アビゲイルと名乗った少女も、ティテュバと名乗った使用人も、いわばそういったロールプレイを押し付けられているに過ぎない。
外から来た私たちや、途中で判事としてやって来たホプキンスが例外なのか。それとも私たちですら取り込まれそうになっているのか、カルデアの面々が裁判に巻き込まれていく中でわからなくなってしまった。
「mademoiselle」
膝を抱えてぼんやり外を見ていると、クイーンズイグリッシュ訛りの入った「お嬢さん」が耳に入る。ゆっくり振り向けば、そこに居たのはやはり緑衣のアーチャーで。
返事をしない私の隣にそっと座り、何を言うわけでもなく空を見た。
「なんで、シャルルが捕まらなくちゃならないの……!」
届かない。通訳がいない今、彼にこの言葉は届かない。それをいいことに泣き濡れた顔で地面に罵詈雑言を吐き捨てながら、ここ数日で起こったことを思い返す。
魔女裁判が始まり、ティテュバが処刑された。食屍鬼が湧いて出た。マタ・ハリが処刑された。シャルルがホプキンス側についた。私も共に残った。けれど殺人を庇い、シャルル=アンリ・サンソンが処刑されることになった。どれもこれも謂れのない罪で、彼らは共に無罪だった。
結果的に最初に処刑された二人は無事だったらしいけど、彼は同じ方法を取ろうとはしないだろう。
何故私は裁かれない。魔女は私だ。彼が処刑されるくらいなら、私が処刑されればいいのに。
「私も一緒に、行きたい」
目頭が熱くなり、頬を冷たい水がつたう。
処刑がどうのとは言わない。ただ彼の元に行きたい。行きたい。いきたい。
「Can I come with you?」
「Where?」
「Charles-Henri Sanson」
ゆっくり、私にも聞き取りやすいように放たれた英語。本当に、本当にシャルルの元へ連れていってくれるというのか、この人は。
私はロビンの手を取って、夜の空へ駆けた。