第四章 記憶
貴方のお名前は?
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彼女を最初に見たのは、医務室の中だった。
その女性は、最初の特異点にいた魔術師らしい。人理焼却から運良く逃れ、成り行きでカルデアに着いていくこととなった彼女。けれど帰りのレイシフト中に彼女は昏倒した。それ以来医務室で眠り続けている。
そんな中で次の特異点に赴かんとし、召喚されたのが僕だった。その他にシュヴァリエ、清姫、皆オルレアンで縁を結んだサーヴァントだと言う。
生前近代医療で生計を立てていた僕に、マスターは彼女を紹介した。
「レイシフトに行くまで、彼女を診てほしいんだ。多分、サンソンの方が安心するだろうし」
「承知しました。それで、彼女の名前は?」
目覚める瞬間に、名前を呼ぶことは大切だ。それは意識を引っ張り上げる重要な役割を担う。そんな思いで発した言葉に、マスターはあんぐりと口を開けた。
「え、覚えてないの?」
「……申し訳ありません、一度聞いていたのでしょうか。もう一度お願いできますか?」
彼はこの上なく狼狽していた。彼の側にいたマシュも、悲しそうな顔をしていた。僕はいたたまれなくなり、顔を伏せてしまった。
「え、いや。言ってなかったね! えっと、どうしよう……彼女フランス語使うからお願いしたくて、えっと」
「彼女はパリに住んでいたので、貴方が適任だと思ったんです」
「わかりました。引き受けます」
狼狽えるマスターに、救いの手を差し伸べる彼女。その後落ち着いたマスターに彼女の名を聞いても、やはりピンとは来なかった。代わりに、いつの間にかコートの中にあった赤い石が熱くなった。
彼女は時折目を覚ました。その度にぼんやりと僕を見て、微笑んではまた目を閉じる。一つ、二つと特異点が修復されるたびに、その感覚は短くなり、完全な目覚めも近いのだろうと思った。
そして特異点である北米に赴こうという時、彼女はまた目を開けた。今度はすぐに閉じてしまうのではなく、じいっと僕のことを見続けていた。
「起きたかい?」
声をかけると、彼女の指がピクリと反応する。そして瞬きを一回、二回。ドクターを呼びに行こうとして立ち上がると、彼女の青い唇が開かれた。
「……かないで、せんせ」
血色の良くない頬に、一筋の涙が流れる。そこで察した。彼女が目を開けるたび微笑んでいたのは、おそらくその人物に対してだ。申し訳ないと思いながらも小さな手を握ってやれば、彼女は穏やかな眠りにつく。
その後彼女が完全に目覚めてから、その笑みを見ることはなくなった。
その女性は、最初の特異点にいた魔術師らしい。人理焼却から運良く逃れ、成り行きでカルデアに着いていくこととなった彼女。けれど帰りのレイシフト中に彼女は昏倒した。それ以来医務室で眠り続けている。
そんな中で次の特異点に赴かんとし、召喚されたのが僕だった。その他にシュヴァリエ、清姫、皆オルレアンで縁を結んだサーヴァントだと言う。
生前近代医療で生計を立てていた僕に、マスターは彼女を紹介した。
「レイシフトに行くまで、彼女を診てほしいんだ。多分、サンソンの方が安心するだろうし」
「承知しました。それで、彼女の名前は?」
目覚める瞬間に、名前を呼ぶことは大切だ。それは意識を引っ張り上げる重要な役割を担う。そんな思いで発した言葉に、マスターはあんぐりと口を開けた。
「え、覚えてないの?」
「……申し訳ありません、一度聞いていたのでしょうか。もう一度お願いできますか?」
彼はこの上なく狼狽していた。彼の側にいたマシュも、悲しそうな顔をしていた。僕はいたたまれなくなり、顔を伏せてしまった。
「え、いや。言ってなかったね! えっと、どうしよう……彼女フランス語使うからお願いしたくて、えっと」
「彼女はパリに住んでいたので、貴方が適任だと思ったんです」
「わかりました。引き受けます」
狼狽えるマスターに、救いの手を差し伸べる彼女。その後落ち着いたマスターに彼女の名を聞いても、やはりピンとは来なかった。代わりに、いつの間にかコートの中にあった赤い石が熱くなった。
彼女は時折目を覚ました。その度にぼんやりと僕を見て、微笑んではまた目を閉じる。一つ、二つと特異点が修復されるたびに、その感覚は短くなり、完全な目覚めも近いのだろうと思った。
そして特異点である北米に赴こうという時、彼女はまた目を開けた。今度はすぐに閉じてしまうのではなく、じいっと僕のことを見続けていた。
「起きたかい?」
声をかけると、彼女の指がピクリと反応する。そして瞬きを一回、二回。ドクターを呼びに行こうとして立ち上がると、彼女の青い唇が開かれた。
「……かないで、せんせ」
血色の良くない頬に、一筋の涙が流れる。そこで察した。彼女が目を開けるたび微笑んでいたのは、おそらくその人物に対してだ。申し訳ないと思いながらも小さな手を握ってやれば、彼女は穏やかな眠りにつく。
その後彼女が完全に目覚めてから、その笑みを見ることはなくなった。
