第三章 オルレアン
貴方のお名前は?
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——夢を見た。
その少女は冷たい水の中に身体を横たえながら、その瞳を閉じている。長い黒髪は水に揺られ、血色の悪い肌を覆い隠していた。
彼女は泣いていた。
一人は寂しいと、独りは淋しいと、ひとりはさびしいと、黒く短い睫毛の隙間から涙を流す。涙が水に溶けていくのを見て、この水全てが彼女の涙なのかも知れないと思った。
「泣かないでくれ」
水の中でも音は通る。彼女は薄く目を開けた。射干玉の髪よりも深い、夜色の瞳。光が射し込むと、それは星のように輝いた。
彼女はゆっくり泳いで浮上する。こちらには、気がついていないようだ。
それからも、僕は夢を見た。
彼女はいつも眠っていて、ほろほろと泣いていた。声を上げることもせず、水かさだけが増していった。
稀に目を開けて、こちらをぼんやりと見つめいる時もある。けれどそれは、僕のいる空間を見つめているに過ぎない。
声は段々、届かなくなってしまった。
目を開けると、自分の家だった。物心ついた時から見続けた夢は、起きるとすぐに忘れてしまう。
外を歩いていると罵詈雑言を投げられる。慣れたことだと受け流していれば、血色の悪い色の手が僕の手を掴んで引っ張った。けれど力は弱く、引きずるまでには至らない。
「ここは素直に連れられてくださいよ!」
「そんなことより、今度は何食抜いたんだ。いくら死なないとはいえ、食べないと倒れるだろう」
掴んでいた手を逆に握り返し、家へと戻る。相変わらず冷たい手は、繋ぎ続ければ次第に暖かくなっていった。
彼女は歳をとらない。髪も爪も伸びるのに、他の場所は全く変わらない。彼女は自分を魔女と呼んだけれど、僕を救った彼女は寧ろ、素敵な魔法使いなのではと思っていた。
恐怖政治の最中に行方不明になった時は、彼女の望みを叶えてあげられなかったことを悔やんだ。
次に目を開けると、自分の知っている時よりもずっと短い髪の彼女がいた。彼女は英霊になった自分を呼び出し、友達を作りたいと言った。肌はやはり、血が通っていなかった。
この少女が戦いで負けることがないのなら、と毎日ご飯を作り、よく眠らせた。手足が冷え切っていたので、念入りに暖める。
彼女は勝った。呆気なく。そして赤くなった頬を緩め、聖杯に願い事をした。
次に目を開けたのはフランス。けれども僕が知っているフランスではなく、僕の手も知らない人間が動かしているかのように無辜の人々を殺め続けていた。
——時々、彼女の声が聞こえた気がした。
その少女は冷たい水の中に身体を横たえながら、その瞳を閉じている。長い黒髪は水に揺られ、血色の悪い肌を覆い隠していた。
彼女は泣いていた。
一人は寂しいと、独りは淋しいと、ひとりはさびしいと、黒く短い睫毛の隙間から涙を流す。涙が水に溶けていくのを見て、この水全てが彼女の涙なのかも知れないと思った。
「泣かないでくれ」
水の中でも音は通る。彼女は薄く目を開けた。射干玉の髪よりも深い、夜色の瞳。光が射し込むと、それは星のように輝いた。
彼女はゆっくり泳いで浮上する。こちらには、気がついていないようだ。
それからも、僕は夢を見た。
彼女はいつも眠っていて、ほろほろと泣いていた。声を上げることもせず、水かさだけが増していった。
稀に目を開けて、こちらをぼんやりと見つめいる時もある。けれどそれは、僕のいる空間を見つめているに過ぎない。
声は段々、届かなくなってしまった。
目を開けると、自分の家だった。物心ついた時から見続けた夢は、起きるとすぐに忘れてしまう。
外を歩いていると罵詈雑言を投げられる。慣れたことだと受け流していれば、血色の悪い色の手が僕の手を掴んで引っ張った。けれど力は弱く、引きずるまでには至らない。
「ここは素直に連れられてくださいよ!」
「そんなことより、今度は何食抜いたんだ。いくら死なないとはいえ、食べないと倒れるだろう」
掴んでいた手を逆に握り返し、家へと戻る。相変わらず冷たい手は、繋ぎ続ければ次第に暖かくなっていった。
彼女は歳をとらない。髪も爪も伸びるのに、他の場所は全く変わらない。彼女は自分を魔女と呼んだけれど、僕を救った彼女は寧ろ、素敵な魔法使いなのではと思っていた。
恐怖政治の最中に行方不明になった時は、彼女の望みを叶えてあげられなかったことを悔やんだ。
次に目を開けると、自分の知っている時よりもずっと短い髪の彼女がいた。彼女は英霊になった自分を呼び出し、友達を作りたいと言った。肌はやはり、血が通っていなかった。
この少女が戦いで負けることがないのなら、と毎日ご飯を作り、よく眠らせた。手足が冷え切っていたので、念入りに暖める。
彼女は勝った。呆気なく。そして赤くなった頬を緩め、聖杯に願い事をした。
次に目を開けたのはフランス。けれども僕が知っているフランスではなく、僕の手も知らない人間が動かしているかのように無辜の人々を殺め続けていた。
——時々、彼女の声が聞こえた気がした。
