特務捜査班の日常

・スコティの過去
ぼくらが学校に通っていた頃…セスが浅羽 悠真先輩の怠惰な学校生活が気になって、突っかかってたりしてた時のこと…。


選択科目であった犯罪行動学に、人一倍興味があったぼくは、しばらくあのセスを放っておいて勉強に明け暮れていた。


そんなぼくに興味を持ったのか、ジェーン・ドゥ先生が話しかけてきてくれた。


その頃、ちょうど彼女は、副職の臨時講師を行っていたそうで、あとから聞けば、ぼくに声を掛けてきたのは気まぐれ故に。或いは、ぼくに光るものを無意識に感じ取ったが故に、だとかなんとか。
今思えば、「アタイにしてはいい投資になった」と、彼女はワイングラスを片手に話していたのは記憶に新しい。


そんな彼女は、ぼくに特別講義をしてくれた。
それこそ、今でいうぼくの武器である調査能力だ。
彼女は、ぼくに課題を課した。
「アタイの素性を探れ、方法は何でも良い。
 データベース、インターノット、ダークウェブ、あらゆる媒体を活用してアタイの素性を探ってみなさい」、と…
ぼくは言われたとおりにジェーン・ドゥについて調べた。
彼女のシリオン種族から割り出したり、彼女が行っていたであろう捜査について調べたり、はたまた彼女の使っている化粧道具のブランドまで並べてみせた。
…まぁ、結論から言えば、「何もなかった」が、ぼくの答えだった。


ジェーン「何もなかった。それが、アンタの答えだっての?」

スコティ「…ぼくからしたら、無を探せと言ってきたあなたが信じられないんですけど?
 あなた、素性どころか、自らの本名も戸籍も消してるじゃないですか!
 この結論に至るまで3ヶ月もかかったんですから!
 3ヶ月ですよ!学生の3ヶ月は長いですって!」

ジェーン「むしろ、3ヶ月でその結論に至ったのよ、素晴らしい調査能力じゃない。
 アタイの何もかもを暴こうと必死なアンタの顔、とっても可愛かったわよ」

スコティ「スコは可愛いけどそれはお世辞ですよね?
 ま、卒業する前に終わらせられたのは我ながら天才だとは思いますけどね」

ジェーン「随分な自信家ね、そういうところも可愛いわよ」

スコティ「…でも、良い訓練にはなりましたよ。
 ありがとうございました」

ジェーン「ええ、それにしても…アンタも見かけによらず、結構壮絶な人生を送っていたのね…」


そう言って、教卓に乱雑に置かれたいくつかの調査記録。
その調査記録を見れば、ぼくの過去が記載されていた。


ジェーン「これ、ぜーんぶアンタの過去。
 幼い頃に旧都陥落で被災、ストリートチルドレンとなり、窃盗を行っていた。
 そしてある日、ローウェル家に窃盗を試みるも、自宅にいた母親に諭され、窃盗行為から足を洗う。
 その後、その母親に導かれ今の戸籍を得て、この学校に入るまでに…
 そういえば…あの子猫ちゃん、名字はローウェルだったわね」


窓辺から見えるグラウンド。
彼は部活のサッカーをしていて、ちょうど今ゴールを決めたところだ。
味方にもみくちゃにされて、笑っている姿が見える。


スコティ「……ぼくが、無いもの調べてる間に調べてたんですか」

ジェーン「深淵を覗くとはそういうことよ」


仄暗い教室に、ネズミ色の瞳は怪しく笑う。


スコティ「…先生は、ぼくの経歴を見て、どう思ったんですか?」

ジェーン「別に、どうもしないわ」

スコティ「え?」

ジェーン「今のアンタとアタイの調べたアンタは全くの別物。
 アタイには、あの子猫ちゃんにゾッコンな、かわいい子猫ちゃんにしか見えていないもの」

スコティ「…そう…そう見えているのなら、よかった…」


その言葉に、ひどく安堵を覚えた。
ぼくの過去が許された気がしたから…。
きっとこれは、彼女にとって同情だろう。
旧都陥落によって孤児が増えたのもそうだし、本当なら犯罪などしたくないが…犯罪をしなければ…他人からモノを奪わなければ、明日の朝日も拝めないような人も沢山いた。
ぼくも、その一人だった。
突然、何もない世界に放り出された。
生きる為だったらなんだってやった。
スリも万引きも強盗も、ぼくは小柄で足も早く、手先も器用だった。
その小さな身体で生きる糧を掻き集めて、必死に明日に繋げていた。
ローウェル家に出会うまでは…。


ジェーン「さて、アタイの特別講義はこれでお終い。
 アンタがアタイのようになるとは、到底思えないけど、まぁ同僚になれることを願っているわ」

スコティ「…ええ、先生と仕事ができるようにいっぱい勉強しますね!」



明るく振る舞うは気丈か、心からの誓いか。
どちらにせよ、ぼくはジェーン先生の同僚になって、一緒にお仕事をしているのだから…。


ジェーン「スコちゃ〜ん、これ確認してくれる〜?」

スコティ「なんですか〜?…なんかぁ、多くない?」

ジェーン「明日までにここに結果を。
 それじゃ、行ってくるわね〜」

スコティ「はぁ〜?まじで言ってる???
 うわ、もう居なくなってるし…
 え〜どう見積もっても徹夜だっても〜〜〜」
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