ドールたちの話
エコ・フィールドアルの話
ボクは一体、誰なんだろう。
ボクは一体、何者なのだろう。
ボクは、一体……
「おい、ここに人がいるぞ!」
ボクが見つけられた場所は、とある場所の地下の中だったそうです。
鉄格子の中、虚ろな目をしたボクをリーダーさんが見つけてくれたそうです。
その研究所は既に機能を停止していて、取り壊しに掛かろうとした所、生命探知機に反応があった為、ボクが見つけられたそうです。
そこにいた研究員は、既に行方をくらませており、誰もこの研究所で行われていた研究内容を知らないそうです。
ボクも知りません。
そもそも、なぜあんなところにいたのか、覚えていませんでした。
記憶障害なのか、最初からなかったのか…リーダーさんにも分かりませんでした。
そんなこんなで、ボクはリーダーさんに拾われ、クラノア研究所で研究員をしています。
特に研究に携わっている訳ではありませんが、ボクは音や振動に敏感で、少しの振動の違和感にも気付けるほどの聴覚を持っているようです。
以前、リーダーさんに研究所を案内された際、ボクが変な音を聞き、それをリーダーさんに伝えたら、モーターがバースト寸前だったそうです。
なんとか一命を取り留めたそうで、命の恩人だと感謝されちゃいました。
それからずっとここで補佐として、仕事を貰っています。
大体は、機械の点検や変動チェックのようなものですが…。
でも、リーダーさんのおかげで、路頭に迷わずに済んだのはありがたいです。
こちらこそ、命の恩人ですよ。
ところで、先程から聞こえる、この振動音はなんなのでしょうか?
まるで、ボクを呼んでいるような…。
リーダー「今日も異常なしかな?」
エコ「あ、リーダーさん。
異常はありませんよ。今日も順調です」
リーダー「それは良かった。
ところで、さっきから外の様子を気にしてるようだけど、何かあるのかな?」
エコ「…先程から、何か、ボクを呼んでいるような気がするんです。
でも、気のせいでしょう。
風がそう聞こえるだけですよ」
リーダー「んー、そう?
なにかあったら、すぐに教えてね?」
エコ「はい!」
今日も異常もなく、静かな部屋で本を読む。
リーダーさんがくれた小さな本。
小説というもので、読んでいるのはとても楽しい。
ページをめくる音だけが部屋に響く。
すると、コツコツ、小さな音が窓からする。
なんだろう?と、窓に近づく、長い金髪をポニーテールにした少年がこちらを見ていた。
その顔は、見たことあるような気がした。
エコ「だれ、ですか?」
サイファ「私はサイファ、君を助けに来た」
エコ「助けに、ですか?何のことでしょうか?」
サイファ「とにかく、一緒に行こう。
私達のオリジナルが君に会いたがっている」
エコ「い、いや!」
彼の張り詰めた顔に、ボクは驚いて逃げる。
すると、リーダーさんが部屋に入ってくる。
リーダー「だ、誰だキミ!」
サイファ「チッ、見つかったか」
少年は舌打ちすると、窓から飛び出ていった。
リーダー「大丈夫かい、エコ」
エコ「大丈夫です、リーダーさん。
ちょっとびっくりしただけ」
リーダー「にしても、今どき窓から不法侵入だなんて…
って、ここ2階だよね?どうやって入ってきたのアイツ!?」
少年の顔を見ていて、ボクはどこかで見たような気をしていました。
そしてそれは、鏡を見て気付くのでした。
エコ「あ、あの人…ボクと同じ顔だ」
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次の日、クラノア研究所にお客様が来ました。
昨日の少年と、その彼の付き添いなのか、茶髪の男の人。
リーダーさんは少し驚いていました。
リーダー「シズル!?あんた生きてたの?」
シズル「生きてたのってひどいな、健在に決まってるだろ」
リーダー「でもあんた、あの研究所から忽然と姿を消したじゃないか。
いままでどこにいたんだ」
シズル「まぁ、ちょっとね。
それより、うちのサイファが突然厄介になったそうで、すみません」
リーダー「あ、いえいえ!
まさか、シズルのとこの子だったなんて…」
エコ「リーダーさん、この方と知り合い?」
リーダー「私の同期かな、研究院時代の…
といっても、シズルの方が若いんだけどね。
こいつ飛び級で入ってきたし」
シズル「…エコ、覚えてないかな?僕のこと」
エコ「え?」
リーダー「え!シズル、エコと知り合いなの?」
シズル「…そうか、覚えてないか。
サイファにも、拒絶的だったとは聞いていたけど…」
エコ「えっと…ボクのことを、知ってるんですか?」
リーダー「この子、機能停止していた研究所で見つけられたんだけど、その後は私が預かってるよ。
この子の能力にちょっと助けてもらっちゃっていてね」
シズル「”エコーズ”に、か…
ねえ、ちょっと話したいことがあるんだけど、来てくれる?」
リーダー「え?いいけど」
リーダーさんとシズルさんは席を外し、残ったのはサイファさんとボクだけ。
ちょっと…気まずいです。
エコ「えっと、ボク、ちょっとお茶入れてきますね!」
サイファ「君は、ここにいて幸せか?」
エコ「え?」
サイファ「うちには、君と同じ境遇の者が沢山いる。私もそのひとりだ。
みな、ひどい風害を受けてきた。
私は、心配なんだ…君がここにいるのは、好ましい事なのか…」
エコ「…ボクは、幸せですよ。
ここには、リーダーさんや、優しい研究者さんがいっぱいいます。
とても楽しいところなんです」
サイファ「…辛いと思ったことは、ないのか?」
エコ「ありませんよ、とても楽しいです!」
サイファ「…そうか。
…これを渡しておく」
エコ「え?」
サイファは、エコにブレスレットを渡す。
エコ「これは…?」
サイファ「これが、いつか君の助けになるはずだ」
エコ「…わかり、ました」
すると、リーダーさんたちが戻ってきました。
少し深刻な顔をしていました。
エコ「…リーダーさん?」
リーダー「…エコ、君は…
いや、でも私にはまだ…」
サイファ「信じなくてもいいですよ」
シズル「サイファ?」
サイファ「シズル、エコにはあのことは伝えなくていい。
あなたも、この事は虚言として、どうか忘れてください。
エコは、普通の人間だ」
シズル「サイファ!?君は何を…」
サイファ「これは、知らない方が幸せだろう?
彼は何も知らないだろう。
だから、このままでいい」
シズル「…そう、そうかい。
いやーごめんね、ちょっとした冗談だ。
彼は普通の人間だよ」
リーダー「は、な、なんだ…
おどかさないでくださいよ!もう!!」
エコ「なんの、ことでしょうか?」
シズル「何でもなーいなんでもなーい。
さて、俺達はここで失礼するよ」
リーダー「えー、そうなの?
ゆっくりしていけばいいのに」
シズル「あんまりここにいて、足がつくのも大変だからね。
アクォの時間稼ぎもそろそろ限界だろうし」
リーダー「へー、そうか?
よく分からないけど、また来なよ。
いつでも歓迎するよ」
シズル「うん、またいつかね」
サイファ「…エコ、元気でな」
エコ「…はい」
サイファさんのその言葉は、まるで弟を思う兄のような口ぶりでした。
シズルさんとサイファさんがいなくなった後、少し外が騒がしかったような気がします。
でも、無事に彼らは、元の場所へ帰れたことでしょう、なんとなく分かりました。
今日も異常なし。
部屋の中、ボクは静かに過ごしています。
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登場人物
・エコ・フィールドアル

クラノア研究所所属の研究員
振動に敏感なので、異音を聞き分けて、危険を未然に防いでいる。
・リーダーさん
クラノア研究所の研究員さん
エコのことを子どものようにかわいがっている。
ちょうどシズルの旧友だったため、サイファの粗相は何とか収められた。
・サイファ・ラヴィスティ

エコのことを研究都市から離脱させるために来たが、彼がここから離れたくなさそうだったので断念した。
・シズル・ノクターン

サイファに電光石火で行動されて、電光石火で解決された。
まぁ、彼が行動的なのはいつものことなので、あまり気にしていない様子。
