多部 暁の話

・日記の隠蔽
アキラ「兄さんの日記、読んでいいとは言われたけども…
 初期化に備えての覚書らしいからまぁ、見ていて損はないのかな…」


最初の日記を読む。


──ー月ー日
日記をつけることにした
──が日記をつける質で面白いからオレも真似をする
初期化とかあるし、感情を覚えておくのにちょうどいいかもしれない!


数日ほどポツポツと記載されている。
どうやら三日坊主とはならなかったようだ。
意外にこまめに書かれている。
しかし、日にちや名前らしきところは塗りつぶされている。


──ー月ー日
──が、動かなくなった。
人間だから、正確には死んだ、かな。
…オレの性分的に調べちゃうから名前は消しておこう。
…ついでに日付も、知らなくていいかもしれない。


それからまたポツポツと日記は書かれている。
日付はない。
わざと時間の流れを覚えないようにしている。
その理由は彼にしかわからないだろう。
そんな彼も、もう忘れているのかもしれないが…。


──
…──が死んだ。
天使の触媒って、死ぬんだ。


そこからは身の毛のよだつ文章だった。
ひたすらに呪いように、死にたいと綴られている。
たまに、パートナーにしたことが書いてある。
…彼が手を染めた形跡だ。


アキラ「っ…ぅ……」


吐き気を抑える。
きっと、兄さんはそれ以上に苦しかっただろうに…。
俺は何のためにここに来たんだろう。
俺なんかがここに来たから、兄さんは希望を見出してしまった。
こんなの仮初の希望だ。
俺は、なんにもできない。
兄さんのそばにいることしかできない。
この戦いを、彼から切り離すことができない…。
兄さんはきっと、これからは俺の為に戦い続ける。
俺を守るために、俺の生きる世界を守るために…。
今までだって戦ってたのに、もう戦えないはずなのに、まだ頑張って…。


ショウタ「──…アーキラ、こんなところで居眠り?」


気付けば、机に突っ伏して眠っていたようで…。
手元のホログラム日記もスリープモードになっていた。


ショウタ「オレの日記読んでたの?
 それにしては、お前…ん」


黙って、兄さんを抱きしめる。
相変わらず温もりのない身体。


ショウタ「ふふ、どうしたの?甘えたくなった?」

アキラ「…そういうことにして」

ショウタ「うん、そういうことにしとく」


…きっと、兄さんは俺の泣き腫らした顔に気付いてる。
でも、そういうことにしておいたのは、そういう気分だったのか、察してくれたのか…。
いずれにせよ、ちょっと助かったと思ってる自分がいる。


アキラ「んん…」

ショウタ「ん〜、くすぐったいよ、アキラ。
 まったく、かわいいなお前は…」


普段なら、可愛くない…とか、こんな大男に向かってそんなこと言います?なんて返すのに、そんな気力もないほど、兄さんに甘えていたくって…。
兄さんの撫でてくれる手が気持ちいい。
俺はこのためにここに来たのかな…。


アキラ「…兄さん」

ショウタ「うん、なに?」

アキラ「俺、強くなるから…
 兄さんを守れるように、もっと強くなるから…」

ショウタ「…うん、期待してる」

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