第一章:真紅の暴君

・マロンタルト完成!
ケイト「おっつおつ〜♪お、タルト完成した?
 デコレーションかわいいねー!
 マジカメ映え〜ってカンジ♪1枚撮らせて!」


スマホを構えてデコレーションされたマロンタルトを撮影するケイト。


ジェード「許可する前にもう撮ってるし…」

ジュゼ「マロンタルト…!」

ジェード「ジュゼちゃ〜ん?
 だめだ、マロンタルトに夢中だわ…」

エース「つかアンタ、今更何しに来たんだよ…」

ケイト「んー?可愛い後輩ちゃん達の頑張る姿を見に来たんだよ〜。
 ふ、あはは、めっちゃ疲れたーって顔してる!」

トレイ「慣れないことすると疲れるよな。
 というわけで、疲れたときは甘いものだ。
 ジュゼに至ってはもう、待てをされた犬の様だしな。よだれ、垂れてるぞ」

ジュゼ「ふぇう!?ご、ごめん…」


慌てて口元のよだれを拭うジュゼに、みんな笑う。
トレイがマロンタルトを切り分けてみんなに振る舞う。


トレイ「さ、出来立てのマロンタルトを召し上がれ」

エース「いっただきまーす!」

グリム「はぐ…んまー!」

デュース「んぐ…すご!店で売ってるやつみたいだ!」

エース「あ、やっと帰ってきた」

グリム「甘すぎず、それでいて濃厚なお味…!
 お口の中が栗畑なんだゾォ〜!」

ジュゼ「んー!甘くて美味しい…しあわせ…」

ジェード「はわぁ…幸せそうにマロンタルト食べるジュゼが見れておれも幸せだよぉ!」

トレイ「なんか一人おかしな奴がいるけど…w」


様子のおかしいジェードを見て苦笑いするトレイ。
その隣でマロンタルトをつつくケイトがトレイに話しかける。


ケイト「んー、あ、ねぇねぇあれやってよ!」

トレイ「ん?あぁ…アレか。
 お前たち、好きな食べ物はなんだ?」

エース「オレ?チェリーパイとハンバーガー」

グリム「ツナ缶だゾ!
 あとは、チーズオムレツと、焼いた肉と、プリンと〜」

ジェード「多い多い…おれはね、麻婆豆腐!」

ケイト「お、ジェードちゃんいいね〜!
 俺はラム肉のグリル・ディアボロソースがけ!」

ジュゼ「俺は甘いものなら、だけど…
 強いて言えば、レモネードかな…」

デュース「僕はオムライス…
 けど、それを聞いてどうするんですか?」

トレイ「ふふん、まぁ見ててくれ。
 それじゃあ行くぞ…
 『ドゥードゥル・スート─薔薇を塗ろう─』!
 それでは、マロンタルトをもう一口どうぞ」

エース「ん?んんん?
 これは…マロンタルトなのに、チェリーパイの味がする!」

デュース「あれ?オムライスの味がする!」

グリム「すげー!ツナ缶の味!
 はぐ、はっ!今度はチーズオムレツ!
 鶏肉グリル!あ、プリンだゾ!」

ジュゼ「…食べてるのに味がレモネードだ、不思議…」

ケイト「面白いでしょ?
 これ、女の子たちとお茶会する時に鉄板でウケると思わない?」

ジュゼ「…味を変える魔法?は、局地的すぎだな…
 でも、ユニーク魔法ですよね?」

トレイ「あぁ、ジュゼは分析に長けているな。
 正確には『要素を上書きする魔法』。味だけじゃなく、色や匂いなんかも上書きできる。
 効果は短時間しか持たないから、落書きみたいなものだ。
 だから、俺はこの魔法をドゥードゥル──落書きと呼んでいる」

グリム「トレイの魔法があれば、ツナ缶食べ放題も夢じゃないんだゾ!
 意地悪なリドルの魔法なんかより全然すごいんだゾ!」

トレイ「いや、俺の魔法なんか寮長の魔法に比べたら、子どものオモチャみたいなものだ…レベルが違うよ」

ジュゼ「そうかな…使いようによっては化ける魔法ですよね?
 それこそ──」


考察を伸ばそうとするジュゼに、トレイがパチンと手を叩く。


トレイ「あー…さ!今日はもう遅い。
 タルトを寮長に渡すのは明日にして、寮に戻ろう。
 明日は『何でもない日』のパーティだ。遅刻するなよ?」


それは明らかに、ジュゼの思考を阻害するかのようだった。


ジュゼ(遮られた…?
 まぁ、あまりユニーク魔法の分析を人の前で披露するのは良くないか…)

エース「ジェード〜また泊めてくんない?
 オレ、意地悪な先輩に寮に入れてもらえないみたいだしー」

ケイト「あらー、棘のある言い方〜」

デュース「こらエース、あんまり2人に甘えるんじゃない」

グリム「そうだゾー!
 今日も泊まるなら宿賃払え!ツナ缶10缶!」

ジェード「いいよ、泊まってっても。
 ただし、客室は自分で掃除してね?」

エース「えー…まぁ、それが宿泊代なら…」

グリム「え〜ツーナー缶〜」

エース「おめぇはうるせぇんだよ!」


ギャーギャー宿泊代交渉で騒ぐ二人をよそに、ジュゼはデュースに提案を持ちかける。


ジュゼ「デュースも、泊まる?」

デュース「え、いいのか…?」

ジュゼ「聞きたいことがあるんだ。
 ジェード、いいだろ?」

ジェード「え?対応はエースと同じになるけど?」

ジュゼ「俺が誘ったから俺も掃除する」

ジェード「…それ、おれも掃除に参加することになるんだけど?
 まぁいいや。トレイ先輩、二人いいっすか?」

トレイ「あぁ、デュースはエースのお目付け役として。
 副寮長の俺が外泊の許可をしてやるぞ」

ケイト「トレイくんってば新人ちゃんに甘くなーい!?
 ジェードちゃんジュゼちゃん、オレも行っていいー?」

ジュゼ「あ、いい──」

トレイ「お前はダーメ」

ケイト「ちぇ、さげぽよ」

ジュゼ「あ…スマホのこと、聞きたかったのに…」


しょんぼりするジュゼに、トレイは遮った手前と肩を叩いて慰める。


トレイ「あーそれはまた次の機会に、な?
 じゃあジェード、うちのが2人も邪魔して悪いが、明日までよろしくな」

ジェード「いえいえ、掃除が捗るから助かるってもんですよ〜」

エース「こいつ完全にオレ達の事、労働としか見てねーわ…
 …明日は『何でもない日』のパーティ。
 絶対この首輪取ってもらうからな。見てろよ寮長……」



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