第一章:真紅の暴君

・購買部へGO
栗拾いを終わらせ、栗の皮むきと裏ごし作業。
かなり根気のいる作業で、終わった頃には皆それなりにクタクタになっていた。


エース「は〜っ、裏ごし終わったぁ…」

トレイ「みんな、お疲れさん。
 あとはこのマロンペーストにバターと砂糖をくわえて、最後にオイスターソースを適量加える…」

エース・デュース「「オイスターソース…!?」」

トレイ「そうそう、カキからたっぷり出た旨味がクリームに深いコクを与える…この『セイウチ印のヤングオイスターソース』。
 有名パティシエなら、タルトにこれを使わないやつはいないぞ?」

ジェード「んー…先輩、それしょっぱくなりませんか?
 この世界のオイスターソースがどれほどなのかは分かりませんけど…」

ジュゼ「でも、相乗効果ってやつはあるよね…」

エース「確かに、カレーにチョコを入れたりするし…アリなのかも!」


いろんな意味で知識の浅い人たちによる推理コーナーに、トレイは思わずと笑い出す。


トレイ「ぷっ、あはははっww
 嘘だよ、お菓子にオイスターソースなんか入れるわけ無いだろ」

エース「なんだよっ!本気にしちゃったじゃん!!」

トレイ「ははっwちょっと考えればありえないってわかるだろ?
 何でも鵜呑みにせず、疑ってかかることだな、教訓、教訓」

ジュゼ「あいにく俺達、一昨日来たばかりの異世界人なのでこの世界の常識が分かりません」

トレイ「おっと、それは悪いことをしたな。
 そういえばそうだった」

ジェード「おれまで危うく騙されるとこだった…
 ん?トレイ先輩、これだと生クリーム足りないかも…」

トレイ「ありゃ、たくさん取ってきてくれたからな。調子に乗ってマロンペーストを作りすぎた…
 誰か、購買部まで買い出ししてきてくれるか?
 ついでに追加を買ってきてほしい」

ジュゼ「行きますよ」

デュース「あ、僕も」

グリム「購買部…ついていくんだゾ!」

エース「オレはパース…
 栗の皮むきまで手でやってたから疲れた…」

ジュゼ「じゃあ、この三人で行くか」


────
購買部まで歩く最中、デュースがジュゼにこんな話を振ってくる。


デュース「…ジュゼは、優等生って感じだよな」

ジュゼ「ん?…そう、なのかな」

デュース「あぁ、この調子なら首席も取れそう。
 僕は、優等生になれるかビミョーなんだよな…
 学校始まって1日目で退学寸前になるし」

ジュゼ「あれは…ジェードから聞いてるけど、運が悪かったとしか言えないかな…」

グリム「そうだな、運が悪かったんだゾ」

デュース「その原因の一つはお前が担っているんだけどなぁ?」

グリム「は、早く購買部まで行くんだゾ!」

デュース「あ、こら逃げんな!」

ジュゼ「ふふ…」


怪しげな外観の木製の小さな小屋─購買部に入ると、これまた怪しげな内装をした店内。
そのカウンターに、またもや怪しげな店長がにこやかに手を振っていた。


サム「Hey!ようこそMr.Sのミステリーショップへ。
 何をお求めかな?小鬼ちゃん」

ジュゼ「たまごと生クリームと…」

グリム「ツナ缶!」

デュース「こら!ツナ缶はいりません!」

サム「なになに、これまたSweetなラインナップだ。
 OK!今出してくるよ」

デュース「おお…本当にあるのか…」

ジュゼ「相変わらずすごく禍々しい…というか、魔法っぽいものが沢山あるけど…一般的なものもちゃんと揃えているんだね。
 うん、見てるだけでも楽しい…今度、ジェードと一緒に来よう」

デュース「僕も…もちろん、冷やかしじゃなくて買うものもちゃんと用意してからな」

サム「それは嬉しいねー。
 はい、お待ちどうさま。重たいけど持てるかい?
 今なら荷物運びに使える宙に浮かぶ円盤、1/100サイズが30%OFFでお買い得だよ」

グリム「何だそれ面白そうなんだゾ!」

ジュゼ「何それ普通に気になる…」

デュース「け、結構です!
 ジュゼ!君もグリムに混ざって止まらない!行くぞ!」

ジュゼ「あ、ごめん…グリム、行くよ」

グリム「ぶに゙ゃあ〜!!もっと遊んで帰る〜〜!!!」

ジュゼ「また今度来るから、その時にな?」

サム「OK、OK〜!小鬼ちゃんたちのまたのお越し、お待ちしてマース!Bye!」


デュースが二人を引きずってなんとか購買部から出ていく。
ジュゼは少し後ろ髪惹かれつつも大人しく付いて来るが、グリムはむくれた様子でトボトボ付いて来る。


グリム「ぶー…デュースのけちんぼ」

デュース「誰がけちんぼだ。
 ん、ジュゼ、その持ち方じゃ重いだろ。
 重たい袋はな、持つのにコツがあってだな…」

ジュゼ「そんなコツがあるのか…
 あ、ちょっと楽になった」

デュース「タイムセールの時に母さんがとにかく買い込むから、毎回袋がメチャクチャ重くて。
 うちは男手が僕だけだったから、そういう力仕事は僕が全部…
 と、悪い、僕ばかり喋っていた」

ジュゼ「いや、いいよ。家族を大事にしてるんだな。
 いいね、そういうの」

デュース「……いや、全然そんなことはない。
 俺は、母さんを…」

ジュゼ「?……!危ない!」

デュース「え?……いって!」


突然、角から走って出てきた影に、デュースがぶつかる。
デュースの手から、先程買った卵のパックが地面に落ちて嫌な音を立てる。


グリム「あ゙〜!卵が…!!!」

デュース「…6個パックを一つ全滅だ!
 ビニールの袋の中が卵だらけに…」

「ってぇなぁ!どこに目ぇ付けて…って…
 お前ら昼に学食で俺のカルボナーラ台無しにした奴らじゃねぇか」

「おいおい、またお前らかよ。
 いい加減にしろよなぁ〜?」

ジュゼ「…ふーん?俺には、先輩たちが角からデュースの目掛けて突っ込んできたように見えましたけど…?」

デュース「…昼休みも別に卵が食べられなくなったわけでもないのにイチャモンつけてきて…
 こっちは今、卵1パック全滅したんすけど?」

グリム「そうだそうだ!」

「んだよ?俺のせいだって言いてぇのか?」

デュース「はい、卵、弁償してください。
 あと鶏にも謝ってください」

ジュゼ「そうそう鶏に……ん?」

「はぁ〜??卵ごときで大げさな…」

デュース「…ぁ?」

「まだ地面についてねぇんだし食えんだろ?
 細かいことごちゃごちゃ言うなよ」

「割る手間が省けてよかったじゃん!あははは!」

ジュゼ「それ…昼休みの君たちに聞かせてやりたいね…」


呆れたように言うジュゼの横で、わなわなと拳を握るデュース。


デュース「…………ってんじゃねぇ…」

ジュゼ「…デュース…?」

「は?」

デュース「笑ってんじゃねぇっつってんだよ!!ア゙ァ!?
 “ごとき”かどうかはお前らが決めることじゃねぇ!
 この卵はなぁ、ヒヨコになれない代わりに美味いタルトになる予定だったんだぞ!わかってんのか、えぇ!?」


啖呵を切るデュースに、上級生二人は目を丸くする。


「ひっ!?きゅ、急に何だこいつ…!?」

デュース「卵6個分、弁償しねぇつーなら…
 6発てめぇらをぶっ飛ばす」

「え、ハァ!?」

デュース「歯ぁ食いしばれやゴラァああ!!!」

ジュゼ「…なんか、ジェードみたいなことになってきたなぁ…」

グリム「ふ、ふなぁ…」


上級生二人を追っかけ回しだすデュースを、頭を抱えて見守ることしかできないジュゼとビビッて足元から離れなくなったグリムがいるのだった。



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