第一章:真紅の暴君

・リドル寮長
リドルに小言を言われるエース。
それを、ヒヤヒヤしながらも見守るケイトとトレイ。
立ち去るリドルを見ていると、ぴちょんと音がした。


ジュゼ「ん?…気のせいか…?」

ジェード「どうしたのジュゼ…?」

ジュゼ「今、水音が…
 いや、誰かのグラスの音かもしれないな」

ジェード「ふーん?」


そんな最中、解放されたエースがリドルの背中を見送ったあと、悪態をつく。


エース「あー…ひでー目にあったぁ…」

トレイ「はは…リドル寮長は入学して一週間と経たずに寮長の座についた。
 少し言い方がきつくなりがちだけど、寮を良くしようと思ってのことで、根は悪いやつじゃないんだ」

グリム「根がいいヤツはいきなり他人に首輪を付けたりなんかしないんだゾ!」

ジェード「それは入学式で暴れたグリムが悪い。
 おれのこと追い回したの、許してないからな?」

グリム「ぐ、ぐぬぬ…
 でも、あの首輪、いきなり魔法が使えなくなるし、首が苦しくなるし最悪だったんだゾ!」

ケイト「ん?リドルくんのユニーク魔法のこと?」

ジュゼ「ユニーク魔法…?」

デュース「ユニーク…ということは、寮長独自の魔法、ということですか?」

トレイ「厳密に世界で一人かはさておき、一般的にその人しか使えない個性的な魔法のことを『ユニーク魔法』と呼ぶ。
 そのうち授業でちゃんと習うと思うぞ」

ジュゼ「俺達の世界で言う『能力』みたいなものかな?
 ということは、ジェードの深緑の霊獣を召喚するのと同じ?」

ジェード「ま、こっちだとおれのユニーク魔法は“グリーンブラッドファング”ってことになるだろうね」

エース「そうか、ジェードはもうユニーク魔法があるってことになるのか!?」

ケイト「へー、そうなんだ…
 でも、魔法は絶賛絶不調なんでしょ?発動できたんだ?」

ジェード「なんか、限定的みたいなんですよ…
 どうやらアイツとの契約が外れてるみたいで、アイツが力貸してくれないとおれは魔法が使えないようで…」

ジュゼ「ジェードはゴーストバスターなんですよ。
 前までは、依頼とかで亡霊や悪霊を祓って生活してたらしいです」

トレイ「へぇ…じゃあ悪いゴーストを倒したりしてたのか…
 今は、無理そうか?」

ジェード「いや…手っ取り早い方法が無くなっただけなんで、除霊なんて知恵さえあればいくらでもできますよ!
 あ、もしおれに依頼したいならそれ相応の対価、まぁお金を要求しまーす」

ケイト「君、オクタヴィネルみたいなこと言うね…
 で、リドルくんのユニーク魔法は『他人の魔法を一定時間封じることができる魔法』その名も─オフ・ウィズ・ユアヘッド─!」

グリム「ひっ…名前がもう怖ぇんだゾ!!」

ケイト「魔法を封じられるのって、魔法士にとっては首が飛ぶくらいイタイことだからね」

ジュゼ「ふーん…魔法が封じられる…
 それは、魔力の通り道を塞いでしまうってこと?」

トレイ「ん?まぁ…そういうことになるな」

ジェード「げぇ…怖ぁ…
 ジュゼ、これさぁ…」

ジュゼ「…俺達は極力、お縄にかけられないほうがいいね」

ジェード「やっぱぁ?はぁ…」

トレイ「?…とにかく、寮内ではルールに従うこと。
 逆にちゃんと従っていれば、リドル寮長も怖くないってことだ」

エース「そういやオレ、タルト買って帰らないとケイト先輩にまた追い出されるわけ?」

ケイト「そうだねぇ〜、ハートの女王の法律第53条でそう決まっているからさぁ。
 あと、リドルくんは特にホールケーキの最初の1ピースを食べるのを楽しみにしているからね。
 きっとホールじゃないと許してくれないよ?」

エース「仲良くしようとか言っといて、見逃してくんねーのかよ!」

ケイト「それはそれ、これはこれ」

デュース「だけど、タルトをホールってだいぶ高くないか?」

エース「げー…オレそんな金持ってないですけどー」

ジェード「なければ、作ればいいじゃない」

ケイト「お、ジェードちゃんの言うとおり〜!
 実際に、あのタルトもトレイくんが作ったやつだし!」

エース「あのタルト、トレイ先輩が作ったの?
 すげー!売り物みたいでしたよ!」

トレイ「はは、ありがとうな。
 調理器具なら一通り、調理室にあるが…
 タダで作るわけにはいかないな?」

エース「げぇ!金取るのかよ!
 …じゃあ、ジェード」

ジェード「……ん?」

エース「指で円作ってニッコリ微笑むんじゃねーよ!
 オメェも金取るのかよ!!」

ジェード「対価を身体で払えって言われるよりはマシだろ…?」

エース「え…もしかして、そういうの…?」


ギュッと自分の身を抱くエースに、ジェードは苛ついた表情を見せる。


ジェード「最っ高に面白くないことしないでくれる?
 そういうのはジュゼ以外には興味ないよ」

エース「なんでオレがフラれる形になってんだよ!!!」

トレイ「いやいや、俺は後輩から金は巻き上げないからな?
 次にリドルが食べたがってたタルトに栗が必要なんだ。集めてきてくれるか?」

ジュゼ「栗!つまり、マロンタルト!」

ジェード「あ、ジュゼが食いついた…」

エース「めんどくせぇ…
 で、どんくらい必要なんですか?」

トレイ「『何でもない日』のパーティに出すなら…
 2〜300個は必要かな?」

デュース・グリム「「そんなに!?」」

トレイ「栗に熱を通して革を剥いて、裏ごしするところまで手伝ってもらうか…」

グリム「オレ様、帰っていいか?」

デュース「僕も」

エース「薄情者!」


そんな中、目を輝かせたジュゼがチラチラとジェードを見ている。
どうやら彼は、お菓子作りに参戦したいようだ。


ジェード「はぁ…トレイ先輩、おれ手伝いますよ。
 うちの甘党ちゃんが欲しがっているので…
 ジュゼ、お手伝いするよね?」

ジュゼ「する!甘いものの為なら努力は惜しまない!」

エース「ジュゼ!お前ほんと良いやつだな!!」

ジェード「ま、ジュゼは本当にマロンタルトが食べたいだけなんだけど…」

ケイト「ほらほら、みんなで作ってみんなで食べたら絶対美味しいって!
 思い出づくりってやつ?お料理ブロガーデビュー出来ちゃうかもよ?」

トレイ「寮長には内緒だけど、マロンタルトは作りたてが一番上手いんだ。
 出来たてを食べられるのは、作ったやつの特権だぞ」

グリム「おうおうお前ら気合入れろ!
 栗を取って取って取りまくるんだぞ!!」

ジェード「変わり身早っ」

エース「まるでジェードみてーだな」

ジェード「あ゙ぁ…!?」


からかってきたエースに睨むジェード。
それをすかさずジュゼは止める。


ジュゼ「ジェード、怒らない怒らない…
 それで、栗はどこで手にはいるんですか?」

トレイ「栗の木は、学園内にある植物園の裏の森に沢山あったはずだ」

エース「じゃあ放課後、植物園前に集合な」

グリム「ゴーゴー栗拾い!なんだゾー!」

トレイ「料理ができるのは…ジェードの方だったな」

ジェード「ん、おれはそっちに行ったほうがいいかな?
 ジュゼ、放課後グリムのこと頼める?」

ジュゼ「大丈夫、任せて」

ジェード「ん、じゃあまた放課後ね」



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