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こちらお礼の小話です…

 春。忘却の季節。全てをリセットするこの時期、私の世界も真っ白に染まる。
 数軒先にある幼馴染の家に生える桜の木。それが白い花を付け始めると、いよいよ春が来たのだと自覚する。いつだって、私に春の訪れを知らせるのは、梅でもなく桃でもなく、その家の桜なのだ。
 なんとなく草木の多い印象を受けるこの地域で、偶然か必然化桜を植えているのはこの幼馴染の家くらいなもので、否、地域内でも他の路地に入れば植わっているのかもしれないが、私と幼馴染の家のある一本の通りには桜は幼馴染の家にしかない。ゆえに、春が来ると幼馴染の家だけが無条件に華やぐ。
 その桜の花が白く見えるのはいつ頃からだったのだろうか。物心ついた時には既に白いと感じていた気がするが、皆はそうではないらしい。桜の花は淡いピンク色なのだと皆は口を揃えて言う。
 しかし私にとって桜の花は何度見ても白色で、はらはらと散る桜の花はさながら牡丹雪のようで、その桜の雪を見て私は春の訪れを知るのだ。

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