終末地
アルダシルの尻尾は意外と甘えただ。
例えば朝起きた時。朝が苦手なアルダシルより先に起きることが多いけど、まるで行かないでと言わんばかりに絡み付いてくる。
勿論、痛くないように加減はされているんだろう。もっと強くても構わないのに、と思うが、そこは彼の事だから。とてつもなく酔っているだとか、よほどの事がなければそこは譲れないのだろうと思う。
そこまで考えて、そう言えば彼が酔っているのを見たことがないと気付く。恋人同士になって一緒にいることが増えたけど、そもそもお酒を飲んでいる所を見たことがない。
「もしかして、弱いのかな」
もしかしたら、酔ってふにゃふにゃになってしまうのかも。そんなの、見た過ぎる。
そうと決まれば話は早い。とびきり度数の高い奴を用意しよう。あ、でもただ高いだけじゃ飲んでくれないかもしれないから、美味しくて飲みやすいのを見繕って貰おう。立ち上がり、その手の事に詳しそうなオペレーターの元へ急いだ。
「お酒?」
「そう、美味しいのを貰ったんだ。良ければ一緒にどうかなって」
いつものように部屋へとやってきたアルダシルに、二つ分のグラスと共に酒瓶を見せる。お洒落な形の瓶の中に、とろりと琥珀色のお酒が揺れる。
テーブルの上にそれらを置いて、手招きをすれば素直に寄ってきたアルダシルに思わず微笑む。手に尻尾が絡み付いてきて可愛らしい。
「あ、もしかしてお酒駄目だった?」
「いや、大丈夫だよ」
椅子に座って、グラスにお酒を注ぐ。これを用意してくれた彼曰く、蜂蜜のお酒だそうだ。甘くて飲みやすいから飲み過ぎに注意、とまで言われたそれを口に含めば、とろけるような甘さとハーブの風味が口に広がる。確かにこれは飲みやすい。アルコールの風味が消えていて、お酒が苦手な人でも飲めそうだった。
「ふふ、甘い」
「こう言う物もあるんだね」
「アルダシルってお酒強い?」
「それなり、かな?」
身体が暖かくて、ふわふわする。楽しくてしょうがない。良く良く考えてみれば普段お酒を飲まない人間が強いわけないのに、そんなの頭から抜け落ちていた。
「管理人、もう顔が赤いけど大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
そうしてあっと言う間に空になったグラスにもう一杯お酒を注ぐ。
「アルダシルも飲んで」
にこにこ微笑みながらお酒を継ぎ足せば、アルダシルが心配そうにこちらを覗き込んでくる。そんな、このくらいならまだ大丈夫なのに!
そうして3杯目を飲み干す頃にはほろ酔いを通り越していた。
「管理人、そろそろやめておいたほうがいいよ」
「アルダシル」
元々の計画なんてすっぽ抜けて、お酒の水分で潤んだ唇にキスを落とす。くっついていたくてしょうがなくって、ふにゃふにゃ笑いながらアルダシルにもたれ掛かった。
「管理人」
「ふふ、アルダシル。いっぱい愛して」
「……」
あれ、アルダシルが絶句してる。何か変なこと言ったかな。
そう思って首を傾げていると、身体がふわりと宙に浮いた。抱き抱えられたと気付いたときにはベッドに押し倒されていて。珍しく余裕のない表情のアルダシルが言う。
「僕のいないところでお酒飲むの禁止ね」
「なんで」
「管理人が他の人にそんな風に甘えるの、見たくないから」
ちゅっと音を立ててアルダシルが首筋に吸い付く。見たいものとは違ったけれど、これはこれでいいか、と目を閉じた。
ぎゅっと彼にしがみついて、大人しく服を脱がされる。そうして剥き身にされて、シーツの海に転がされた。
「アルダシル」
「これは管理人が悪いよ」
吐かれる息が熱い。ぶるりと身震いをして、もたらされるであろう快感に備える。アルダシルの手がすーっと肌を撫でて、ぞわぞわと鳥肌が立った。
「っ、」
いつもなら、しつこいくらい撫で回してくるのに。本当に余裕がないのだろう。まだ勃ってない胸の突起を舌が舐る。
いつからか快感を拾うようになってしまったそこは、ちょっと舐められただけですぐに固くなって、じりじりと追い詰められていく。
「あっ、う……」
口の中が熱い。アルダシルもちゃんと酔ってるんだ。なんだか嬉しくなって頭をぎゅっと抱き締める。
「管理人、ごめんね。優しく出来ないかもしれない」
「いいよ。好きにして?」
ふっと微笑んで言ってのける。恥ずかしさは無い。きっとそれは酔っているからで、冷静な頭なら絶対言えないな、なんて思った。
ぐつぐつ、煮えたぎるように身体が熱い。
身体を穿つ剛直を締め付けながら、何度目かもわからない絶頂を決める。
「ああっ、ん!う~~~~っ!」
「ふふ、気持ちいいね」
アルダシルの優しい声が頭に響く。必死にこくこく頷いて、揺さぶられる。
ぐちぐちと聞くに耐えない音を立てながら、陰茎が出し入れされて、目の前がチカチカ明滅した。
「あ、んんっ!あるだしる」
「管理人、可愛いね」
ぎゅっとアルダシルの尻尾が身体を締め付ける。何時もよりも強いその力に、嬉しくなってスルリと撫でればアルダシルが小さく呻いた。
「ふふ、気持ちいい?」
「うん、とっても」
アルダシルって、そんな顔も出来たんだ。可愛い。調子に乗って尻尾に舌を這わせれば、ナカを穿つ陰茎がぶるりと震えた。
ゴム越しにびゅくびゅくと精が吐き出されているのが分かる。なんでゴムなんかしてるんだ。そのまま腹のナカでぶちまけて欲しいのに。
陰茎がそのまま出ていって、ぽっかりと口が開く。寂しくてひくつくそこを早く埋めて欲しい。
「アルダシル、ごむ、いらないから」
「駄目だよ」
「やだ」
精を吐き出したゴムを結んで、次のそれの袋を開けようとしているのを引ったくり投げ捨てる。そうして腰に足を絡めて、囁いた。
「君を奥まで感じたい」
アルダシルの顔が歪む。そうして、小さく謝ると、ひくつく後孔に先端がキスをした。
「そんなに煽られたら抱き潰してしまうよ」
「いいからっ、早く」
そんなの、最初っからそのつもりで明日の業務まで片付けてあるのだ。そのくらい、焦がれている。
「ちゅうも欲しい」
そうやって強請れば、熱い舌が口内に差し込まれて。微かに甘味の残る舌に、必死に舌を絡める。
そうしていると、奥まで一気に貫かれてびくびくと身体を震わせながら果てた。
「~~~~っ!♡♡」
チカチカ目の前が明滅する。気持ち良くて、とろけそうだ。いや、もうとっくにとろけていて、一緒くたになってしまっているのかもしれない。
いっそのこと、そうだったらいいのに。
「っはぁ!♡あぐっ、んんっ!♡」
媚びきった声が、貪られている隙間から漏れでる。奥に腰を打ち付けられる度、壊れたように身体を震わせながら潮を吹いてしまう。
「ふっ、管理人!」
「アルダシル、♡もっとっ、もっと頂戴♡♡」
頭が湯立っているみたいに熱くて仕方ない。自分が何を口走っているのかさえわからなくて、揺さぶられながら、必死にしがみつく。
「あいして♡♡あるだしる、すき♡♡」
「管理人、お酒禁止だからね」
「なんれ?♡♡」
こんなに気持ちいいのに。なんで?
バカになった頭じゃ、答えなんて出るわけもなくて。最奥にぐぽっと嫌な音を立てて先端が潜り込む。
「~~~~っ!♡♡♡」
「っ、はぁ!管理人、出すねっ」
びゅくびゅくと腹のナカで快感が弾けた。出されている満足感と、支配されているような感覚に酔いしれる。
気持ちよかった。何時もならこれで終わりだ。脱力をして、ベッドに身を委ねる。
そうして抜かれるのを待っていると、ばつん、と奥まで穿たれた。
「へ?♡♡♡」
「終われるわけ、ないでしょう?」
目の前には発情しきったアルダシルの顔があって。ああ、食われる。本気でそう思った。