キョカラ
キョカラで某ホラーゲームのパロディ
サンプルになります
夢を見る。
ここのところ毎日、断続的に。
内容は、何処かジョウトを思わせるような屋敷の中を何かに導かれるように奥へ奥へと歩く夢だ。古い建物によくある黴の臭いと、しとしとと降り続ける雨音。それだけが寄り添うようにそこにあった。夢なのに妙にリアルで、現実のように錯覚しながら屋敷を歩いていく。地下へ潜っていくように、深く深く。
道もわからないはずなのに、夢の中の自分は迷うことなく奥へ奥へと歩いていく。
その夢の奥で、いつも誰かに会う。白い着物のその人は、俺を見るなり何かを伝えようとしてくる。静かに口が開かれて、雨音に溶けるように音が消えていった。
「待っとるからね。ここで、ずうっと」
そうして、その人は手を差し出す。その手を取ろうと腕を伸ばした瞬間、轟音と共に決まってその夢は覚めてしまうのだ。
そうして後に残るのは、なんとも言えない喪失感と頬の涙だけだった。
「どうしたんキョウヤ。そないな顔して」
事務所に遊びに行くなり、カラスバさんは俺の顔を見て驚いたように言う。そんなに酷い顔をしていたのだろうか。まぁ、最近あまり眠れていないから仕方ない。
「いえ、最近あまり眠れてなくって。ってそう言うカラスバさんこそ目の下の隈凄いですよ?」
「んー、オレもここんところあんま寝れてへんのよな」
「それは忙しいからでしょ」
「オマエかて、どうせロワイヤルやろ?このバトルジャンキー」
カラスバさんがパソコンに視線を戻しながら言う。その顔は少しやつれていて、よっぽど忙しいんだろうな、と思った。確かに最近お互いに顔を合わせる暇すらなかったので、相当疲れているのかもしれない。
「まぁ、否定はしないですけど。それだけじゃなくって、内容はよく覚えてないんですけど夢を見るんです」
「夢?」
彼の眉間の皺が更に深くなる。俺、何か変なこと言ったっけ。そう思いながら話を続ける。
「夢を見たなって感覚だけ残ってて、凄く悲しいんですよね」
「やっぱりそれ疲れとるやろ」
「そう思います?」
そうとしか言いようがないよなぁ、なんて思いつつ彼の隣に立つと頬を寄せる。俺のことは正直どうでもよくって、どちらかと言えばカラスバさんの方が心配だ。
「カラスバさん、休んでね?」
「それはお互い様。それともオレが寝かしつけたろか?」
「そんなの、逆に眠れなくなっちゃうじゃないですか」
ふ、と微笑んで顎を擽るように撫でる。気持ち良さそうに細められた目に、吸い寄せられるようにキスをした。
「……あほ」
「お誘いじゃないの?」
「……もうちょい仕事落ち着いたらええよ」
彼は少し悩んだ後そう言うと、寄りかかってきた。すり寄るように額を肩に擦り付けてくる。こうやって素直に甘えてくれるのは中々珍しい。それだけ疲れているのかもしれない。少しでも癒しになればと、ぎゅっと強く抱き締める。
「なあキョウヤ。どこにも行かんでな」
どうしてそんなことを言うんだろうか。置いていく気なんてさらさらないのに。
「大丈夫ですよ。ずっと傍にいますから」
なんとなく、デジャヴのような奇妙な感覚に飲まれる。こんなことを前にも言ったような気がする。どこで、いつ言ったんだっけ。確かに言ったはずなのに、不思議と思い出せない。
「そろそろジプソが戻ってくるさかい、今日は帰り。また今度遊びにおいで」
どこか寂しそうに彼が言う。そんな顔するなら帰らせなければ良いのにと思うが、サビ組のボスである以上、そうもいかないのだろう。渋々離れながら言う。
「今度はバトルしましょうね」
「おん、次こそは泣かせたるわ」
手を振り、エレベーターを呼ぶ。上がってきたエレベーターにはジプソさんがいて、いつものように挨拶をすれば笑顔で答えてくれた。答えてはくれたが彼も忙しそうで、よっぽど仕事が山積みなのだろう。
季節的な物なのかはわからないけど、呼ばれないと言うことは俺に手伝えることはないということだ。こればかりはごねても仕方ないから、ここは大人しく引き下がろう。
「早くゆっくり休めるといいんだけど……」
下の階層へ向かうエレベーターの中で、静かに呟いた。
しとしとと雨が降っている音がする。閉じていた瞳を開けば、見知らぬ天井がそこにはあった。半身を起こして見渡せば、そこは薄汚れた床……畳と言うんだっけか、とにかくその上だった。
また、あの屋敷の中にいる。また?またってなんだ。当たり前のように出てきた言葉に、思わず首を傾げる。立ち上がり、尻の埃を払うと薄暗い部屋の中を見渡す。人気はない。壊れかけの家具に溜まった埃を見るに、ここは廃墟のようだ。
部屋の端に何かが落ちているのに気付いて、手探りでそちらに歩いていく。ひんやりと冷えた空気に、ぶるりと身震いをしながらそれをよく見れば、それは古びた懐中電灯だった。
「丁度良いから使わせてもらおう」
それを手に取って、スイッチを入れる。電池が残っているか不安だったが、壁が照らされたのを見て安心した。良かった、ついた。
電気がついたところで、改めて辺りを見渡してみる。薄汚れてはいるが、今すぐ崩落するような場所ではなさそうだ。一先ず腰のポーチをまさぐるが、中にボールは入っておらず途方にくれる。
どうしよう、ポケモンが頼れない。そもそも、何故自分はこんな廃墟の中で目を覚ましたのか。直前まで何をしていたのか考えてみても、思考に霞がかかったようにはっきりとしない。古めかしい、木材の湿った独特な匂いがする。五感はここが間違いなく現実だと告げていて、夢の類いではなさそうだと思った。
こういう時って、無闇に行動しない方が良いんだっけ?でも、行動しないとどうにもならないよな。何かヒントになるものはないかと懐中電灯で辺りを照らせば、押し入れが目に止まった。
なんとなく開けねばならないような気がする。
廃墟とはいえ気が引けるが、しょうがない。恐る恐る引き戸を押し開ければ、二段に分けられた上段に何かが置かれていた。
「これは……カメラ?」
レンズが二つ付いたそれを手に取る。酷く古めかしいがそれは確かにカメラだった。昔地元の博物館で見たことがある。一緒に経年劣化で黄ばんだ紙が添えられていて、手に取り読もうとするが、線がのたうっているような恐らくは文字だろうそれを見たことがない。でも、不思議と何処か懐かしささえ感じるそれを暫し眺めていると、ふとなんと書かれているのかが頭の中に浮かびはじめた。
不思議な感覚だった。読めない筈なのに、意味がわかるのだから。でも、お陰でなんと書いてあるのかわかる。内容を読めば、どうやらこのカメラのことが書かれているようだった。
このカメラ、射影機は「ありえないもの」を写し出す。我が遠い親戚である麻生邦彦氏が研究の最中作り上げた物であり、縁あって俺の元へと来た。曰く、霊を写し出すらしく、親戚の間でたらい回しになっていた所を父が面白がって持って帰って来たが、壊れているようで写真が撮影出来ないと物置小屋の片隅で忘れ去られていたところを俺が見付けて譲り受けた。
酒の席でそれとなく聞けば、何でも魂を閉じ込める事が出来るらしい。霊を写し出す、と言うのを考慮すると、除霊が出来ると言う事だろうか。
壊れていると言う話だったが、試しに撮ってみれば写るではないか。それならと使っているが、確かに極稀に変な物が写る。
それは黒い影であったり、断片的な人の部位だったりと様々だが、今の所ただそれだけだ。気味が悪いと思うが、それと同時に面白いとも思う。もしかしたら除霊の効果が出ているのかもしれない。
仕事で暫し滞在する事になったこの水無瀬村にて、何か面白い物が撮れればと思う。
「霊を写し出す……」
繁々と射影機と書かれていたそれを眺めるが、古めかしいことを置いておいて変わったところは特にないのではないか。
それと、水無瀬村と言う名前。聞いたこともないが、恐らくここの名前なんだろう。スマホで探せば出てくるだろうかと思ったが、スマホも持っていなかった。
仕方ない、部屋を出てみよう。そう思い立って、襖を見る。ほんの少し隙間が開いていて、そこから瞳が一つ、こちらを覗いていた。
「……」
悲鳴を慌てて飲み込んで、視線を逸らす。明らかに人間ではない。だって、あの目の角度ならもう一つ見える筈だ。それに、あの死んだような濁った目。じっとりと背中に嫌な汗が伝う。そうして、思い出した。
ーー除霊が出来ると言う事だろうか。
もし、この射影機の力が本当なら、写真を撮れば消えるかも知れない。恐る恐る、手に持った射影機をそちらに向ける。そうしてファインダーを覗き、その瞳に合わせてシャッターを切った。
かしゃり、と軽い音がする。そうして、小さな呻きと共にその瞳は溶けるように消え失せた。
「……本当に消えた」
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夢を見る。
ここのところ毎日、断続的に。
内容は、何処かジョウトを思わせるような屋敷の中を何かに導かれるように奥へ奥へと歩く夢だ。古い建物によくある黴の臭いと、しとしとと降り続ける雨音。それだけが寄り添うようにそこにあった。夢なのに妙にリアルで、現実のように錯覚しながら屋敷を歩いていく。地下へ潜っていくように、深く深く。
道もわからないはずなのに、夢の中の自分は迷うことなく奥へ奥へと歩いていく。
その夢の奥で、いつも誰かに会う。白い着物のその人は、俺を見るなり何かを伝えようとしてくる。静かに口が開かれて、雨音に溶けるように音が消えていった。
「待っとるからね。ここで、ずうっと」
そうして、その人は手を差し出す。その手を取ろうと腕を伸ばした瞬間、轟音と共に決まってその夢は覚めてしまうのだ。
そうして後に残るのは、なんとも言えない喪失感と頬の涙だけだった。
「どうしたんキョウヤ。そないな顔して」
事務所に遊びに行くなり、カラスバさんは俺の顔を見て驚いたように言う。そんなに酷い顔をしていたのだろうか。まぁ、最近あまり眠れていないから仕方ない。
「いえ、最近あまり眠れてなくって。ってそう言うカラスバさんこそ目の下の隈凄いですよ?」
「んー、オレもここんところあんま寝れてへんのよな」
「それは忙しいからでしょ」
「オマエかて、どうせロワイヤルやろ?このバトルジャンキー」
カラスバさんがパソコンに視線を戻しながら言う。その顔は少しやつれていて、よっぽど忙しいんだろうな、と思った。確かに最近お互いに顔を合わせる暇すらなかったので、相当疲れているのかもしれない。
「まぁ、否定はしないですけど。それだけじゃなくって、内容はよく覚えてないんですけど夢を見るんです」
「夢?」
彼の眉間の皺が更に深くなる。俺、何か変なこと言ったっけ。そう思いながら話を続ける。
「夢を見たなって感覚だけ残ってて、凄く悲しいんですよね」
「やっぱりそれ疲れとるやろ」
「そう思います?」
そうとしか言いようがないよなぁ、なんて思いつつ彼の隣に立つと頬を寄せる。俺のことは正直どうでもよくって、どちらかと言えばカラスバさんの方が心配だ。
「カラスバさん、休んでね?」
「それはお互い様。それともオレが寝かしつけたろか?」
「そんなの、逆に眠れなくなっちゃうじゃないですか」
ふ、と微笑んで顎を擽るように撫でる。気持ち良さそうに細められた目に、吸い寄せられるようにキスをした。
「……あほ」
「お誘いじゃないの?」
「……もうちょい仕事落ち着いたらええよ」
彼は少し悩んだ後そう言うと、寄りかかってきた。すり寄るように額を肩に擦り付けてくる。こうやって素直に甘えてくれるのは中々珍しい。それだけ疲れているのかもしれない。少しでも癒しになればと、ぎゅっと強く抱き締める。
「なあキョウヤ。どこにも行かんでな」
どうしてそんなことを言うんだろうか。置いていく気なんてさらさらないのに。
「大丈夫ですよ。ずっと傍にいますから」
なんとなく、デジャヴのような奇妙な感覚に飲まれる。こんなことを前にも言ったような気がする。どこで、いつ言ったんだっけ。確かに言ったはずなのに、不思議と思い出せない。
「そろそろジプソが戻ってくるさかい、今日は帰り。また今度遊びにおいで」
どこか寂しそうに彼が言う。そんな顔するなら帰らせなければ良いのにと思うが、サビ組のボスである以上、そうもいかないのだろう。渋々離れながら言う。
「今度はバトルしましょうね」
「おん、次こそは泣かせたるわ」
手を振り、エレベーターを呼ぶ。上がってきたエレベーターにはジプソさんがいて、いつものように挨拶をすれば笑顔で答えてくれた。答えてはくれたが彼も忙しそうで、よっぽど仕事が山積みなのだろう。
季節的な物なのかはわからないけど、呼ばれないと言うことは俺に手伝えることはないということだ。こればかりはごねても仕方ないから、ここは大人しく引き下がろう。
「早くゆっくり休めるといいんだけど……」
下の階層へ向かうエレベーターの中で、静かに呟いた。
しとしとと雨が降っている音がする。閉じていた瞳を開けば、見知らぬ天井がそこにはあった。半身を起こして見渡せば、そこは薄汚れた床……畳と言うんだっけか、とにかくその上だった。
また、あの屋敷の中にいる。また?またってなんだ。当たり前のように出てきた言葉に、思わず首を傾げる。立ち上がり、尻の埃を払うと薄暗い部屋の中を見渡す。人気はない。壊れかけの家具に溜まった埃を見るに、ここは廃墟のようだ。
部屋の端に何かが落ちているのに気付いて、手探りでそちらに歩いていく。ひんやりと冷えた空気に、ぶるりと身震いをしながらそれをよく見れば、それは古びた懐中電灯だった。
「丁度良いから使わせてもらおう」
それを手に取って、スイッチを入れる。電池が残っているか不安だったが、壁が照らされたのを見て安心した。良かった、ついた。
電気がついたところで、改めて辺りを見渡してみる。薄汚れてはいるが、今すぐ崩落するような場所ではなさそうだ。一先ず腰のポーチをまさぐるが、中にボールは入っておらず途方にくれる。
どうしよう、ポケモンが頼れない。そもそも、何故自分はこんな廃墟の中で目を覚ましたのか。直前まで何をしていたのか考えてみても、思考に霞がかかったようにはっきりとしない。古めかしい、木材の湿った独特な匂いがする。五感はここが間違いなく現実だと告げていて、夢の類いではなさそうだと思った。
こういう時って、無闇に行動しない方が良いんだっけ?でも、行動しないとどうにもならないよな。何かヒントになるものはないかと懐中電灯で辺りを照らせば、押し入れが目に止まった。
なんとなく開けねばならないような気がする。
廃墟とはいえ気が引けるが、しょうがない。恐る恐る引き戸を押し開ければ、二段に分けられた上段に何かが置かれていた。
「これは……カメラ?」
レンズが二つ付いたそれを手に取る。酷く古めかしいがそれは確かにカメラだった。昔地元の博物館で見たことがある。一緒に経年劣化で黄ばんだ紙が添えられていて、手に取り読もうとするが、線がのたうっているような恐らくは文字だろうそれを見たことがない。でも、不思議と何処か懐かしささえ感じるそれを暫し眺めていると、ふとなんと書かれているのかが頭の中に浮かびはじめた。
不思議な感覚だった。読めない筈なのに、意味がわかるのだから。でも、お陰でなんと書いてあるのかわかる。内容を読めば、どうやらこのカメラのことが書かれているようだった。
このカメラ、射影機は「ありえないもの」を写し出す。我が遠い親戚である麻生邦彦氏が研究の最中作り上げた物であり、縁あって俺の元へと来た。曰く、霊を写し出すらしく、親戚の間でたらい回しになっていた所を父が面白がって持って帰って来たが、壊れているようで写真が撮影出来ないと物置小屋の片隅で忘れ去られていたところを俺が見付けて譲り受けた。
酒の席でそれとなく聞けば、何でも魂を閉じ込める事が出来るらしい。霊を写し出す、と言うのを考慮すると、除霊が出来ると言う事だろうか。
壊れていると言う話だったが、試しに撮ってみれば写るではないか。それならと使っているが、確かに極稀に変な物が写る。
それは黒い影であったり、断片的な人の部位だったりと様々だが、今の所ただそれだけだ。気味が悪いと思うが、それと同時に面白いとも思う。もしかしたら除霊の効果が出ているのかもしれない。
仕事で暫し滞在する事になったこの水無瀬村にて、何か面白い物が撮れればと思う。
「霊を写し出す……」
繁々と射影機と書かれていたそれを眺めるが、古めかしいことを置いておいて変わったところは特にないのではないか。
それと、水無瀬村と言う名前。聞いたこともないが、恐らくここの名前なんだろう。スマホで探せば出てくるだろうかと思ったが、スマホも持っていなかった。
仕方ない、部屋を出てみよう。そう思い立って、襖を見る。ほんの少し隙間が開いていて、そこから瞳が一つ、こちらを覗いていた。
「……」
悲鳴を慌てて飲み込んで、視線を逸らす。明らかに人間ではない。だって、あの目の角度ならもう一つ見える筈だ。それに、あの死んだような濁った目。じっとりと背中に嫌な汗が伝う。そうして、思い出した。
ーー除霊が出来ると言う事だろうか。
もし、この射影機の力が本当なら、写真を撮れば消えるかも知れない。恐る恐る、手に持った射影機をそちらに向ける。そうしてファインダーを覗き、その瞳に合わせてシャッターを切った。
かしゃり、と軽い音がする。そうして、小さな呻きと共にその瞳は溶けるように消え失せた。
「……本当に消えた」