キョカラ



 グラスにお酒を注ぐ。
 琥珀色が光を反射して、きらきら輝いて、まるで日の光のようだと思う。お酒に詳しくない俺でもわかる、高い、とっておきのやつ。
 それを飲む時は"この後いいですよ"のサインだった。
「乾杯」
 ぐっと飲み下せば、喉がかっと熱くなる。度数が高いからほんの少量だけ。まだ半分以上あるボトルを、もう何年もそうしてちびちび飲んでいた。それはそう言う気分だけど上手く誘えない時の彼の逃げ道だった。
「カラスバさん、ベッド行こうか」
 小さく彼が頷く。アルコールのせいなのか、はたまた別の理由か、赤く色付いた頬にキスを落として、腰を抱いてエスコートする。
 嗅ぎ慣れたボディソープの匂いがふわっと香って、俺がここに帰って来る前にシャワーを浴びたのだと悟る。
 準備万端じゃないか。その事実に興奮しながらも、素知らぬ顔で寝室の扉を開けた。
「キョウヤ」
「ん、なぁに?」
「……、」
 何か言おうとして、でも言えなくて固まっている愛しい恋人を、ベッドの前へと連れていくと、そのまま押し倒す。
「カラスバさん、かわいー」
「別に可愛ないわ」
「だって、抱いて欲しくてもだもだしてるの可愛いんだもん」
 ふっと微笑んで首筋に齧りつく。白い肌に赤い跡を残しながらその感触を楽しめば、カラスバさんがキスをして欲しそうにこっちを見ているのに気付いた。
 それに答えるように唇にキスを落とすと、差し出された舌を食む。ぴくりと彼の身体が跳ねて、服を掴む手に力が籠る。目を瞑って受け入れる姿にずくりと下半身に血がいくのがわかった。
 何それ、処女みたいじゃん。
「ちゅ、んっ……はぁっ」
 ちゅうちゅうと音を立てながら夢中で口内を蹂躙していると、ぐっと胸を押されて。小さな抵抗にますます興奮する。もっと貪っていたくて、カラスバさんの口内に奥まで舌を滑り込ませて、唾液を啜る。甘い、甘くて溶けてしまいそうだった。
「はっ、ふふ、キス気持ちいいね」
「ん、気持ちええ」
 素直にそう言うカラスバさんの表情は、すでにとろんととろけていて、食べられるのを今か今かと待ちわびているようですらあった。
「おいしそう」
 思わずごくりと唾液を飲み込む。薄く開かれた口も、ほんのり色付く頬も、全てが俺を誘っていて。誘われるがまま、シャツの上からピンと勃ち上がった突起を撫でる。びくりと彼の身体が跳ねて、かあっと顔の血色が良くなった。可愛くて、服の上からそこを舐れば、ここ何年かで少し濃くなったピンク色が透けて見える。
「あうっ……」
「ここ、いつの間にかこんなに大きくなって……」
「んっ、誰んせいやろなぁ?」
「俺かな?」
「あ、ぁっ!」
 シャツがぴっちり張り付いた突起を愛おしげに撫でれば、彼の口から喘ぎ声が漏れた。すっかり敏感になってしまったそこは少し触るだけで快感を拾うらしく、彼の弱点と化してしまっていた。
 もう片方もかまってあげないと。そう思って、すりすりと指の腹で撫でてやる。
「きょ、やぁ……も、直接触ってや」
「切なくなっちゃった?」
「うっさいっ」
 ふいっとそっぽを向いてしまった彼に、思わず微笑む。
 ふふ、否定はしないんだ。
 本当はもっといじめてあげたいけど、あんまりやりすぎると後で怒るから、素直にプチプチとシャツのボタンを外していく。
 半分まで外して、無理やりずらすと剥き出しになった突起にしゃぶりついた。
「あぁんっ!」
 じゅるじゅると吸い付きながら、もう片方は布越しに可愛がってやれば、シーツを掴む手に力が入って、彼の身体が強張る。あ、だとかだめ、だとか、ひっきりなしに漏れる声に気を良くしながらそこを苛めて、彼を着実に追い詰めていく。
「んんっ、ひっ……キョウヤぁ♡」
「気持ちいいね」
 こくこくと彼が頷く。どうやら会話すら出来ないらしい。舌先で凹みをほじくれば、短い悲鳴と共に果ててしまったのかぶるぶると身体を震わせた。
「~~~~っ!♡」
 もっと可愛がってやりたくて、甘く食めばぜえぜえと肩で息をしながらカラスバさんが叫ぶ。
「い、ぅ……もうええやろっ!」
「ええ~、まだまだこれからなのに」
「……いけず」
 こっち、準備しとるから……。ごろんと下半身だけ動かしてこちらに尻を向けながら彼が言う。そんなの、殺し文句にも程がある。シャワーを浴びてくるからと消えた数時間前からすでに準備万端だったってことですか?えっちすぎません?
「キョウヤ?」
「すみません、いつものことながらあまりにすけべすぎて……」
「誰のせいや思ってん」
「俺ですねぇ」
 だってカラスバさん、俺のこと大好きだもんね。ゆっくりスラックスを下ろして、少し肉付きの良くなった尻を下着越しに撫でまわす。時折ぺしんと叩けば、良い音と共に小さく彼の喘ぎが聞こえてきた。
「準備、俺がやりたかったなぁ」
「んなもん、オマエに任せとったら夜が明けてまうよ」
「じゃあ今度はやらせてね?」
 ちゅっと頬にキスを落としながら言えば、彼は少し黙った後「時間がある時なら」とだけ言った。よし、言質。今度はめちゃくちゃ時間をかけて解してやろう。
「ローションは?」
「ちゃあんと仕込んどるよ」
 じゃあ何か。この数時間ずっと尻を濡らしていたと言うのか。素知らぬ顔で?
「ほんとにも~。じゃあ早く言ってくれたらいいのに」
「言えるわけないやろ」
 はぁっと熱い息を吐きながら彼が言う。期待しきっているだろうにこの人は。乱雑に下着を下ろすと、尻たぶを割り開く。片手でベルトを外して前を寛げると、そのままひくつく後孔に陰茎を押し付けた。
 ちゅうっと後孔が先端に吸い付いて、離してくれない。
「あっ♡」
「ふふ、とろとろだ。そんなに抱かれたかったの?」
「……言わせんなや、いけず」
 にぃっと彼が笑った。なんだか悔しくて、慣らすように浅いところを抜き差しすれば、彼が腰をくねらせる。
 誘っている。そうして、俺がそれにあてられて激しく抱くことを彼は好んだ。どうも、愛されているのだと実感するらしい。
 酷く抱くだけが愛じゃないと思いつつも、結局はいつも負けてしまうのだ。
「っ、カラスバさん」
 くねる腰を掴んで、ごちゅっと奥まで陰茎を推し進める。ナカがきゅうきゅう絡んできて、気を抜けばもっていかれそうだった。
「あ゛っ♡んんっ、!♡♡」
「カラスバさん、この体勢好きですよね。前擦れるの、気持ちいい?」
「ぐっ、あ♡すきぃ♡♡こすれんの、頭おかしなるっ♡♡」
 腰を打ち付けるのに合わせて、彼のセットされていない髪がぱさぱさ揺れる。でもこの体勢、感じてる顔が見えないんだよなぁ……。
「カラスバさんっ、こっち向ける?」
「お゛っ♡♡あぐっ♡♡きょーやぁ♡♡」
 振り向いたカラスバさんはだらりと舌を垂れ下げていて。その舌を絡め取って、キスをしてやる。
 それに合わせてナカがぎゅっと締まって、随分わかりやすいな、と思った。そう言う快楽に弱いところ、大好きだけどね。
「ん゛ん゛っ、♡♡はぁ、♡♡じゅるっ♡♡」
 結腸目掛けて容赦なく腰を振る。カラスバさんが好きなところなんてもうこっちは知り尽くしているから。例のごとくぐりぐりと結腸口に押し付けるように動かせば、ぐぽっと嫌な音がして、先端が結腸口にめり込んだ。
「~~~~~っ!!♡♡♡」
 悲鳴さえも逃さないと言わんばかりに貪り食う。もっと気持ち良くなって欲しくて、口を離すと項に噛みついた。
「おぐぅ!♡♡ん゛、きょーやぁ♡♡も、いってるからぁ♡♡かんにんしてぇ♡♡」
「んー?やぁだ♡」
 だって俺まだイってないし。もっともっとカラスバさんを貪っていたいから。制止を無視して、そのまま結腸を苛めれば、彼は壊れたようにがくがくと身体を震わせた。
 可愛い。こうなるってわかってて、その上でこの人は抱かれたがるのだ。

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