キョカラ



 20歳のお祝いになんでも叶えたる。
 確かにキョウヤが18ん時、そう言った。それをまさか覚えとるなんて思わんやん。しかもコイツ、なんて言ったと思う?
「俺、ラブホテルに行ってみたいんです」
「はあ?」
 なんでも叶えたる言って、何年も考えてそれ?なんて思いながらキョウヤを見る。いたって真面目その物な顔で言うもんだから笑ってしまった。
「そんなんでええん?」
「俺必死に考えたのに!」
「必死でそれなん?」
 口を尖らせてむくれるキョウヤの頬をつつく。そう言うとこ、あざとい。ずるくて、可愛いオレの恋人。
「じゃあ、これから行こか」
「良いんですか!?」
「ええよ。別に」
 そんな細やかな願いくらい叶えたろか。何でも屋さんやもん。ふっと微笑んで、キョウヤの手を掴む。
「おいで?」
 


 結局キョウヤが選んだのは鏡張りの部屋だった。回転ベッドだとか、色んな部屋があるなかで、だ。
「ここでよかったん?もっとおもろい部屋もあるんやで?」
「いいんです!」
 そう言いながら、キョウヤはオレを抱き締める。シャワーだってまだなのに、そんなの関係ないと言わんばかりに身体をまさぐられて、身体が熱を持つ。
「キョウヤ、オレシャワーまだや」
「俺は気にしないので大丈夫ですよ」
「あほ、オレが気にすんねん」
 なんとか逃げ出そうと踠くが、キョウヤはびくともしない。そのまま顔が近付いてきて、鼻先が触れる。
 コイツ、退く気全然ないやん。
「なあ、キョウヤ……」
「俺が準備するから」
 目が合ったまま唇にちゅっとキスを落とされて。あかん、そんな風に微笑まれたら抵抗する気なんてなくなってまう。
「……そんなに抱きたいん?」
「そりゃあもう」
「はは、今日はお祝いやもんな。……特別やで?」
 腕を背中に回してぎゅうっと抱きつく。可愛い恋人の頼みだ。聞いてやらないわけにはいかない。
 ゆっくり、確かめ合うように何度も何度も触れるだけのキスをする。だんだんと気持ちが高ぶってきて、薄く口を開けば舌を差し込まれた。
「んんっ、……はぁ」
 そのまま舌を絡め取られて蹂躙される。ぞりぞり、削るように舌先を舐められて、ぞわぞわと鳥肌が立った。気持ちいい。付き合い始めた頃のキスなんて目も当てられなかったのに。慣れてしまった今では、こちらの方が弄ばれてしまって良くない。
 ぴちゃぴちゃと卑猥な音が部屋に響く。ふと、耳に手を添えられて、不思議に思っていると耳を塞がれた。
「っ!」
 脳にダイレクトで水音が響いて、まるで脳ごと犯されているような錯覚さえ覚える。なんだこれ、どこで覚えてきたんやこんなん。
 がくがくと足が震えて力が入らない。気持ちいいけど、せつない。足りなくて、自分から舌に吸い付けば、キョウヤが嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ、可愛い」
「うっさい」
「えへへ、すみません」
 そう言いながら、顔が全然謝ってない。まあ、ええけど。
 脇腹を撫でていた手がするするとジャケットを脱がしていく。そうして、シャツだけにされると、すでに主張し始めている胸の突起をそっと撫でられた。
 この二年間散々触られて急所になってしまったそこは、指の腹で優しくなでられただけで快感を拾ってしまって、じくじくと疼きだす。
「んんっ!」
 鼻にかかった声が漏れて、かあっと顔が熱くなる。気持ちいい、立っていられない。半ばキョウヤにしなだれかかりながら、逃げ場のない快感に焼かれていく。
「はぁ、きょうやぁ」
「ふふ、えっちな顔♡」
 自然と後ろを向かされ、鏡の中のオレと目が合う。そこには肌を赤く染め、目を潤ませるオレがいて……。
「ね、この部屋で良かったでしょう?」
 雄臭い顔になったキョウヤが笑う。背だってあっという間に追い越されてしまった。弄んでいたつもりが、気付けばすっかり手込めにされて。オマエはオレを毒だと言うが、そっちの方がよっぽど毒だと思う。
 じわじわと効いてくる、遅効性の毒だ。
「ここもえっちになりましたね」
 見せびらかすようにわざとゆっくりボタンを外してシャツをはだけさせられて、時間を掛けて開発されてしまった胸の突起が姿を表す。すり、と撫でられて分かりやすく頭を持ち上げたそこに、くらりと眩暈がする。
「はぁっ、あ……キョウヤ、いやや♡」
「本当に嫌?」
「っ、う♡」
 嫌じゃない。そんなの、わかってる癖に。
 ちゅっと項に吸い付かれて、跡を残される。じりっと痛みが走って、それさえも興奮の材料になる。
 指の先で突起をぴんと弾かれて、思わず「あ゛っ♡」と大きな声が漏れる。剥き出しの神経を触られているみたいに頭がびりびり痺れて気が狂いそうだ。
「かわいー、気持ちいいですか?」
「ん゛あ゛っ♡それぇっ……!♡」
 気持ちがいい。でも苦しくって、キョウヤの腕にしがみつく。ずりずり、力が抜けて落ちていく身体を、キョウヤが支える。でも、決してベッドに寝かせてはくれない。
「はぁっ、んっ……♡もっ、キョウヤぁ♡」
「なぁに?カラスバさん」
「もっと、ちゃんと触って欲しいっ♡」
「ふふ、いいよ」
 にこりと無邪気に笑ったキョウヤは、そのまま突起をぐりぐりと押し潰してきて。急な刺激にがくがくと身体が震える。
「ひぁっ♡あ゛ぁっ!♡♡」
「ほら、ちゃんと立って?」
「無理ぃ♡いっ、くぅ……♡」
 絶頂の気配に膝が笑う。ぎゅっと目を瞑れば、見ろと言わんばかりに耳を舐められて、ひっと目を開ける。
 感じとる顔なんか見とうないのに、目を逸らすことを許されていなくて。追い詰められて、ぞわぞわと鳥肌が立った。
「カラスバさん、乳首だけでイっちゃうの?」
「オマエっ、ええ加減にっ!い゛っ♡」
 言い終わる前に肩に噛み付かれて、ぎくんと身体が軋む。ぐりぐりと突起を押し込まれ、そのまま呆気なく果てた。下着が精液で張り付いて気持ちが悪い。帰る時どうすんねん、あほ。
 鏡に呆けた顔のオレが映る。首まで赤く染まっていて、ぜえぜえと肩で息をしている。
「ふふ、可愛い。噛まれてイっちゃいましたね♡」
「……あほ」
 キョウヤの手が股座に伸ばされる。勃ち上がったそれを、布越しにゆっくりと撫でられてびくんと身体が跳ねた。
 もう、とっくに食われ尽くされた身体が疼く。酷く熱くて、助けを求めるようにすり寄れば、鏡越しにキョウヤと目が合った。
「直接触って欲しい?」
「聞くなや……」
「貴方の言葉で聞きたいんです」
 噛まれたところをちゅ、と吸われて歯形を舌でなぞられる。恐る恐る「早よし」と言えば、キョウヤは嬉しそうに笑った。
 ベルトを緩めて、重力のままスラックスがずり下がっていく。下着も脱がされると、上半身だけ中途半端に服を着た状態になる。なんつー格好やこれ、ギャグか?と思うがキョウヤはそれで興奮するらしく、荒い鼻息が項に当たった。
「カラスバさんの匂い」
「嗅ぐな」
「いい匂いですよ。とっても美味しそう」
 準備がいいことに、ポケットから携帯用のローションの袋を取り出し開けると、指に絡めていく。鏡越しにそれを見せつけられ、これからされることを想像して、そわついていると、キョウヤが笑った。
「ふふ、物欲しそうな顔。知ってました?貴方、こんな顔してたんですよ?」
「最悪な気分やわ」
「俺はね、貴方のその顔が好きなんです。欲情しきった雌の顔♡」
 がじがじと項に噛み付きながら囁かれ、羞恥から顔が熱くなる。そんな言葉、どこで覚えてきたんや、ネットか?やとしたらコイツからネットを取り上げるしかない。
 ふと、ローションまみれのキョウヤの手が後孔に触れる。自然に強ばる身体を優しく撫でられて、魔法みたいにゆっくり力が抜けていく。
「んっ、ぁ……」
 皺を伸ばすように拡げられて、ぞわぞわと鳥肌が立つ。びくりと身体が跳ねて、つい期待して、腰がゆらゆら揺れる。
「カラスバさん、可愛い」
 指がナカに挿入ってくる。異物感に震えながら呻いていると、指が良い場所に触れた。瞬間、びりびりとした、電撃にも似た快感に襲われる。
「はぁ、ああっ……♡」
「ふふ、可愛い。ここ好きですもんね」
 とんとんと叩くように刺激されて思わず首を振る。気持ちいい、苦しくて、早く楽になりたくて、助けて欲しくて。キョウヤの腕にすがり付くようにすり寄りながら助けを求める。
「キョウヤぁ♡」
「なぁに?」
「足りないねん、ここっ♡早く埋めて?♡」
「でも……」
「いいからっ♡」
 指が挿入されたそこを自分の手で拡げて、腰を揺らす。流石に来るものがあったのか、キョウヤがごくりと息を飲んだ。
「もう、ころして?」
「っ!」
 指が引き抜かれて、すぐに熱い物が押し付けられる。ゆっくりと先端が飲み込まれて、息が漏れた。
「はぁ♡♡あぁっ……♡」
 鏡の中のオレが、はくはくと口を開く。息がうまく出来なくて、涙がポロポロとこぼれ落ちていく。
 オレを泣かすヤツなんか、キョウヤくらいや。
「う、すごいっ……ナカうねってる」
「キョウヤぁ……!♡♡すごっ、おかしなる♡♡」
 溶けそうなくらいの熱に、じわじわと思考が溶かされていく。自分が何を口走っているのかもわからなくて、腕に爪を立てながらただ熱を受け入れていく。
 奥にこつりと先端が当たって、じわりと胸が熱くなる。
「ふふ、ちょっと頑張っちゃおうか……なっ!」
 ふわっと身体が浮いた感覚がして、自分が持ち上げられたと知る。穿たれたそこが鏡に映されていて、暴力的な視界に眩暈がした。
 オレのそこ、もう縦に割れとるんや。こんだけヤってりゃ、そりゃそうか。でも知りとうなかった。
「あぅっ、……ちょ、おろしてや」
「ふふ、ダメ。せっかくだからよーく見て?」
 ぐぷぐぷと音を立てながら抜けていく陰茎を見せつけられて、そこから目が離せなくなる。
 そのまま奥に叩きつけるように腰を打ち付けられれば、口から悲鳴がこぼれ落ちた。
「ひぃっ♡♡あ゛ぐっ♡♡」
「良い声、もっと聞かせてください♡」
「んう、!♡♡きょーやぁ、それやばいっ♡♡」
 勝手に甘えるような声が漏れていく。こんなにどこもかしこも見られて恥ずかしいと言う思いと、その視線がまた気持ちいいのとで頭がぐしゃぐしゃになっておかしくなる。
「カラスバさんっ、気持ちいい?」
「うん、きもちいっ♡♡」
 必死で頷けば、良いところをカリ首でごりごり押し潰されて、目の前がチカチカ明滅する。気持ち良すぎて焼ききれてしまいそうだった。
「あ゛んっ、♡♡やらぁっ♡♡それぇ……っ!♡♡」
「ふふ、かわいー」
 もう、自分がイっているのかすらわからなくって。陰茎から透明な液体を吐き出しながら、首を振る。
「っ、きょうや♡♡もっとちょうだい?♡♡」
「はぁ、!いいですよ?♡」
 そのままベッドに下ろされて、腰を掴まれる。
 ああ、来る。そう思った時には、結腸に先端が潜り込んでいて。目がぐりっと裏返る。意識が飛び掛けて、でもすぐに快感で叩き起こされて。終わりのない地獄の業火に焼かれているようだった。
「~~~~っ!♡♡」
「っ、一回出しますね」
 キョウヤが小さく呻いて、腹の奥に吐きかけるように精を出された。
 一回ってことは、まだ終わらんのか。半ば絶望しながら、目を閉じた。 

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