キョカラ

※攻めフェある


 サビ組の事務所の上、休憩室とは名ばかりの、ほとんど自室と化した部屋にオレたちはいた。
「オレな、キョウヤにやったら何されてもええねん」
 酒を片手に、隣に座ってジュースを飲んでいるキョウヤに伝える。
「またまた、酔いすぎですよ」
「酔ってへんよ」
「とか言って、酔っぱらいはみーんなそう言うんです」
 はい、と水の入ったボトルを差し出され、受け取る。それを半ば自棄になりながら飲めば「少し落ち着きましたか?」なんて聞かれて。そう言われてしまえば、イエスとしか答えられなかった。
「あー、なんかしら口走った気ぃするけど堪忍な」
 適当に合わせて、熱いからとはだけさせたシャツを正してなんとか誤魔化す。
 据え膳食わぬはなんとやら、オレの方はこんなにも準備万端だと言うのに、恋人であるキョウヤは一向に手を出してこないのである。
 恐らくは童貞だろうから、進み方がわからないのかと思ってあれやこれやと誘ってみたが、その度にさっきのように躱されて……。ああ、なんやろ、だんだん惨めになってきた。
「カラスバさん?」
「あ?ああ、なんでもあらへんよ」
 そもそもの話、恋だって初めてだと言うのにどうしろと言うのか。別に今まで付き合った女が居なかったわけではない。居たには居たが、結局のところ、それは恋でもなんでもなかったのだとキョウヤに出会って気付いてしまったのだ。
 こちらの気も知らないで、キョウヤがにこりと笑う。その笑みで何人の女を虜にしてきたんだろうか。ほんに、悪いヤツ。
「俺、そろそろ帰りますね」
「泊まっていかへんの?あ、さてはバトルしに行きたいんやろ」
「違いますよ。あんまり長居しても迷惑になるかなって。あー、でも酔っぱらいをこのままにするのもなぁ」
 そうやって悩むような素振りを見せるキョウヤの手を掴む。今日という日は逃がさん。絶対に落とす。
「帰らんといて」
「ふふ、そんなに俺と居たいんですか?」
 当たり前やろ。許されるんならずっと引っ付いてたいわ。でもそんなこと今更素直に言えるわけもなく、困っているとキョウヤが続ける。
「明日お休みなんですか?」
「そうやなけりゃ、呼んでへん」
「それもそうか。お酒もだいぶ飲んでますもんね」
 だから準備万端なんやって!そも、こんだけ誘っても靡かないってことはよっぽどオレに魅力がないんだろうかと不安になる。
 ……まさか脈なしか?そもそもの話付き合っていると言う認識自体間違っているまである。いやそんなわけ、だって、オレ好きだって伝えて……。
「カラスバさん、顔色悪いですよ?」
「なあ、キョウヤ。オレんこと、好き?」
「え?」
 ほとんど反射的に出た言葉に、しまったと口を押さえる。こんなん聞くつもりなかったのに。
「カラスバさん?」
「はは、なんでもあらへんよ。さ、帰り?」
 さすがにこれは惨めすぎる。もう、何も聞きたくない。立ち上がろうとして、腕を掴まれて。そのままソファに引き倒された。
「へ?」
「そんな顔しないでくださいって。ちょっとからかいすぎましたね。すみません」
 ちゅ、と頬にキスを落としながらキョウヤは言う。あまりに急だったため、着いていけずにきょとんとしていると、キョウヤは笑った。
「カラスバさんがあんまりにも可愛いからつい遊び過ぎちゃいました。ちゃんと貴方が好きですよ。カラスバさんこそ、あまり好きって言ってくれないじゃないですか」
 そんなこと……あるかもしれん。確かに言われたら、あんま表立って言ってはないかもしれない。あれ?もしかしてオレが悪い?
「……好きや」
「うん、知ってます」
「オレな、オマエに抱かれたい」
「それも、わかってます」
 わかっとるんかい!じゃあ、その上で誘いを見て見ぬふりされとったってことか。
「でも、俺まだまだ未熟だからさ。ちゃんとカラスバさんを護れるくらい強くなってからって思ってたんだけど。俺たちちゃんと話すべきだったかもね。……ちょ、泣かないでくださいよ」
「泣きもするわ、あほだら」
 大の大人なのに、ぼろぼろと涙が溢れて止まらない。一番は安心感からだろう。酒も入ってるから余計だ。
 落ち着くまでぎゅっと抱き締められて。ずびずびと情けなく鼻を啜りながらすり寄る。あほキョウヤ。全部わかってたんやないかい。
「あーもう、かわい。そんなに俺に抱かれたかったんです?」
「言わせんなや、あほ」
「でも、ここで抱いても大丈夫なんです?一応事務所でしょ?」
「人払い、してある……」
「ん゛ん゛っ」
 キョウヤが変な声を出す。オレ、なんか変なこと言ったか?と顔を覗き込めば、そのまま唇にキスを落とされた。そうして何度も触れるだけのキスをして、薄く開いた隙間に舌が差し込まれる。
 鼻がつまっているから息が出来なくて苦しい。ぎゅっとキョウヤの服を掴んで、耐える。
「う゛、んんっ……はぁっ!」
 キョウヤとのはじめてのディープキス。苦しくて、でも気持ちよくて。端から溶かされていくような、そんな感覚。
「ちゅっ、ほら、息継ぎして」
「はあっ!いき、できへん」
「かわいー……ね、もう一回」
 返事をする前に、また舌が入り込んできて歯列をなぞられる。こいつ、上手い!もしかしてはじめてじゃ、ない?
「ふっ、んんっ!」
 舌同士を絡め合って、じゅるじゅると唾液を吸い取られる。気持ちいい、溶ける。
「はぁ……ふふっ、まだキスだけなのに蕩けてる」
「んっ、キョウヤ、オマエはじめてやないやろ」
「そりゃ、ね。でも、こんなに誰かに入れ込むのは初めてだよ」
 童貞がこんなキスせぇへん。流石にオレでもわかる。耳元で「本当に抱いていいの?」と囁かれて、こくりと頷いた。
 恥ずかしいけど、オレはやっぱりキョウヤに抱かれたい。
「ふふ、可愛い。カラスバさん、色白だから赤くなるのわかりやすいね」
 肌を手が這い回る。恥ずかしくて、擽ったくて、身動ぎをしようとするが、体重をかけて押さえつけられて叶わなかった。
 本当に、このまま抱かれるんだ。そう思うと、その先を期待してしまってダメになる。
「キョウヤ」
「ん、どうしたの?」
「いっぱい気持ちよくしてほしい」
「ふふ、可愛い」
 ちゅ、と首筋に吸い跡を残された。それが嬉しくて、己も首筋を吸い返す。もしかしたら見えるかもしれない位置に花を咲かせながら、そうして支配欲を満たしていく。
 服越しに胸の突起を爪で擦られて、びくっと身体が跳ねた。それが気持ちいいのかはわからないけど、嫌じゃない。
「そのうちここだけでイけるようにしてあげる」
「っ♡」
 思わず想像して、かあっと顔が熱くなった。だって、それだけ抱いてくれるってことやろ?
「あは、ぴくってした」
「うるさっ、い」
「かわいー」
 こしょこしょと爪の先で突起を弾かれて、面白いくらいに身体が跳ねる。自らキスを強請るように口を開けて舌を出せば、そのまま舌を食まれた。
「んんっ♡」
 肌を撫でていた手がゆっくり股間に伸ばされる。すでにガチガチの陰茎を布越しに撫でられて、びくんと身体が跳ねた。
「っ、はぁっ……キョウヤ♡」
「ふふ、硬い。そんなに期待してたんです?」
「オレがどれだけ抱かれたかったと思ってっ、」 
「そんなこと言われたら止まれなくなるじゃないですか」
「……止まらんでええよ♡」
「っ!もー、そう言うこと言うんだから!」
 ずるりとズボンを下ろされて、そこに顔が近付いていく。下着の上から陰茎を舐られて、目が離せない。
「ふふ、可愛い」
 口で下着を下ろされて陰茎がまろび出る。滲む先走りを舌で舐め取られ、耐えられずに喘ぎ声が漏れた。
「ひっ、♡う……!♡」
 見せ付けるように先端にしゃぶりつかれて、腰が溶けそうになる。びりびりと背筋を快感が駆け抜けて、目から涙が溢れ落ちた。
「あ、あぁっ!♡きょうやぁ……くちあついっ♡♡とけるぅ♡♡」
 かくかくと腰が勝手に動いて止まらない。だめ、こんなのすぐに出てまう。なんとか耐えようとするが、じゅるじゅると先走りを啜られてもうだめだった。
「っ、!♡ぅ~~~~っ!♡♡」
 そのままびゅくびゅくと精を口の中に吐き出す。尿道に残ったのまで啜られて、悲鳴に近い声が漏れた。
 気持ちが良すぎて狂いそうだった。いや、いっそのこと狂えたら楽なのかもしれない。
 キョウヤは口の中に放った精を吐き出し、指に絡めると後孔の皺を伸ばすように撫でた。顔が近い。全部見られているようで、かあっと身体の熱が上がる。
「跡付けちゃお」
「んんっ♡」
 じゅ、と足の付け根に吸い付かれて、花が散っていく。その度にぴくぴくと身体を震わせながら、キョウヤの動きを見守る。
「ふふ、カラスバさん、ここひくひくしてる」
「っ、わかっとるわ」
「かわいー、ゆっくり拡げますからね」
「い、♡あっ♡♡」
 ゆっくりと指がナカに挿入ってきて。はじめての刺激にどうしていいかわからずのたうつ。なんと言うか、気持ちいいより違和感が勝つ。
「ほら、挿入った」
 ぞわぞわと鳥肌が立つ。キスが欲しくて、キョウヤの頭に手を伸ばせば「でも、カラスバさんの咥えましたよ?」なんて言う。
 それでもキスがしたかった。この寂しさを埋めてほしい。
「それでもええからっ」
「じゃあ舌出して」
 言われるがまま舌を出して、そのまましゃぶりつかれる。その間も指はナカで蠢いていて、ふとあるところに触れた瞬間、びくんと身体が跳ねた。
「んんっ♡♡」
 至近距離でキョウヤがにいっと笑う。見付かってしまったそこを重点的に抉られて、びりびりと電気が走ったかのような刺激が背筋を走り抜けた。
「ふっ……ちゅ、……ここ?」
「あ♡♡そこっ!♡♡わかんなくなるっ♡♡」
 気持ちいい、わかんない、怖い。いろいろな感情がぐるぐる回る。ぎくん、と身体がへんな強ばり方をして、ぞくぞくと鳥肌が立つ。
「あ゛っ♡♡んん!♡♡きょうやぁ!♡♡」
「はいはい、ここにいますよ」
 いつの間にか増やされた指が、入り口を拡げるように動いて。良いところに当たる度、頭が真っ白になる。まだ指だけなのに。こんなの、キョウヤのが挿入されたらどうなってしまうのか。
「もうちょっとかな?」
「う~~~っ!♡♡もういいからぁっ!♡♡」
「ん、まだだめです♡」
 無慈悲にもそう告げられ、年甲斐もなくぐずる。早く楽になりたくて自分からキスをして、ぐしゃぐしゃの顔で懇願した。
「キョウヤので、ここ穿って?」
「っ、それ反則」
 ずるりと指が引き抜かれる。ひくひくと開閉する孔に、陰茎が押し当てられて。それで。
「泣いてもやめないですからね」
 瞬間、めりめりと音を立てて陰茎が挿入ってきて、指とは比べ物にならない質量に眩暈がする。苦しい、息の仕方も忘れてしまったみたいにはくはくと口を開ける。
「カハッ……!」
「カラスバさん!息して!」
 そう言われてようやく息の仕方を思い出して、深呼吸をする。苦しくてしょうがない。けど、確かな多幸感がそこにはあって。
「キョウヤぁ♡♡きすほしい♡♡」
「キス好きですね」
「きもちいーから♡♡すき♡♡」
「俺のことは?」
「すき♡♡」
 まともな思考なんかもうとっくになくなってしまっていた。恥も何もない今ならなんでも言えるんじゃないか、そんな気すらする。
「きょーや、あいして?♡♡」
「っ!もー、煽らないで!」
 どこか悔しそうなキョウヤにぎゅっとしがみついて、その唇にキスをしたのだった。

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