キョカラ
どうしてこうなったんだっけ。確かカラスバさんにツラを貸せって言われて、そのままバトルをして、それでどうしてこうなったのか。
なんで俺はベッドに押し倒されているのか。
何度考えても、答えは出そうになくって。手持ち無沙汰で思わず彼にすがり付きそうになる。
「オレに任せとき」
そう言いながらカラスバさんは俺の上で笑う。確かに、先に手を出したのは俺の方なんだけども。
「ちょ、カラスバさん」
「なんや、こういうことしたかったんちゃうんか」
そりゃ、俺だって男の子だし、興味はあるに決まってる。そう言うことをしている時、どんな顔をするのかななんて思ったことは多々ある。でも、いいのかな。なんて思って焦っていると、カラスバさんが笑い出した。
「はは、冗談や冗談。その気もなしに大人をからかったらあかんで」
そう言って俺の上から退こうとするものだから、手首を掴んでそのままベッドに押し倒した。
「誰がその気もなしに、ですって?」
「なっ、」
「俺、リードされるの苦手なんですよね」
眼鏡を外してサイドテーブルに置くと、そのまま口付ける。何度も何度も、触れ合うようなキスを繰り返すと、彼が物欲しそうに口を開いた。
照れ隠しなのかめちゃくちゃ睨んできてるけど。いや、可愛いな。なんて思いながら舌を差し込む。
そう言うことは、全部この人が教えてくれた。これから先も多分きっと、そうなのだろう。
舌足らずな動きにも合わせてくれる彼が愛おしくて仕方ない。
「ふっ、ぅ……」
舌を探り合って、絡めて。隙間からちゅくちゅくといやらしい音が響いて、溢れていく。気持ちがいい。彼もそうだと嬉しいな、と閉じていた目を開けば、険しい顔で睨んでくる瞳と目があった。
閉じればいいのに、負けた気がするからと彼はいつでもそうだった。まぁ、そんな何度もしたわけではないのだけれど。
「んんっ、キョウヤ……」
「ちゅ、なんですか?そんな声で呼ばれたら、その気になっちゃいますよ」
すると眉間の皺が更に深くなって、ぎろりと睨まれる。ピュールだったらきっとその場で飛び上がるだろう迫力だけど、俺には可愛いとしか思えないんだよね。
「どうします?続き、しますか?」
「っ、わかってて聞くんか」
「だって、カラスバさんの言葉で聞きたいから」
「オマエ、後で覚えときや」
「わぁ怖い。で、どうするんです?」
ちゅうっと首筋に吸い付きながら聞けば、小さな声で「続き、しよか」なんて言われて胸がいっぱいになった。何この人可愛い。抱く。絶対泣かせる。
「良いですよ」
「素人童貞の癖に」
「その節はどうも」
貴方で捨てたんですけどね。なんて思いつつ、ネクタイを緩めてシャツのボタンを外す。ジャケットは皺になったらいけないからととりあえず近場の椅子にかけておいて。ほどよく鍛えられた腹筋をなぞる。
「っ、ぅ……」
「何度見てもカッコいい身体してますよね」
するすると脇腹を撫で、なるべく見えないところに吸い付いて跡を残す。吸い付く度にびくびくと身体を跳ねさせるのだから、心配になるくらい敏感だ。
「なぁ、脇腹撫でるん、やめや……っ」
「擽ったいんですか?」
そう聞けば、ゔぅっと彼が唸った。どうやら図星だったみたいだ。
「そう言われるともっと触りたくなりますよね」
「っ、」
はぁ、と彼が熱い吐息を吐く。擽ったいだけなら、そんな風に物足りなそうな顔にならないだろう。
「ここも触ってあげましょうね」
まだまだ小さいながらも主張をしている胸の突起を指の腹で優しく撫でる。色々と調べて知ったのだが、慣れるとここでも感じられるらしい。が、彼は擽ったい止まりのようで、焦れったそうにこちらを睨み付けるばかりだった。
「っ、うぁ……」
「擽ったい場所って性感帯らしいですよ」
耳元でそう囁いてやれば、ぶわっと顔を赤くしながら「うるさっ」とだけ呟いてそっぽを向いてしまった彼を微笑ましく思いながら、突起に舌を這わせる。
「ここも気持ちいいって、覚えてもらわないと」
「男の胸なんて触ってもおもろないやろっ」
「カラスバさんのならいくらでも触れます」
ちゅっと吸い付きながら、片手でズボンのチャックを下ろすと中に手を滑り込ませる。すでに緩く勃ち上がった陰茎を下着の上から撫でれば、彼が小さく喘いだ。
「可愛い」
「はぁ、オレに可愛いなんて言うん、オマエくらいや」
「ずっとそうがいいです」
ちゅ、と頬にキスを落としてそう言えば、彼はふっと微笑んで。決して全てを言葉にはしてくれないけれど、喜んでいるのがわかって嬉しくなった。
そのまま唇に吸い付くと、下着の中に手を入れてそれに直接触れる。そうすると、彼の身体が大袈裟に跳ねて、居たたまれなくなったのかきゅっと目を閉じてしまった。
「カラスバさん、目閉じないで」
「うぁ……うるさ、いっ」
「ちゃんと見て?」
開かれた瞳と至近距離で目が合って、かあっと顔が赤く染まる。彼が恥ずかしがっているのが新鮮で、つい口角が上がってしまう。
「可愛いですね」
「ぐぅ、オマエ後で覚えとれよ」
首筋にちゅっと吸い付いて、とろとろと溢れ出した先走りを指に絡めて扱くと、直接的な刺激に彼が息を飲む。
自分でするときみたいに手を動かして追い詰めて行けば、少しずつ控えめな声が漏れ初めた。
「ぁ、あっ、くっ……!」
「ふふ、声可愛い。もっと聞かせてください」
「んっ、ぅ……うぅ、やあっ」
そのまま先端を手のひらに擦り付けるように刺激して、空いたもう片方の手を重ね握り締めれば、彼は答えるように握り返してきた。
「い、ぅっ!~~~~っ!」
びゅくびゅくと勢いよく精が吐き出されて腹を汚していく。一瞬彼の服に付いたかと心配したが、ぎりぎりセーフだったみたいで一安心する。あの高そうな服に付いてしまったら、きっと染み抜きが大変だろうから。
「はぁっ、はぁっ……」
「気持ちよかったですか?」
「聞くなっ、あほだらぁ」
「ふふ、可愛い」
肩で息をしている彼を労りながら、キスの雨を降らせる。それすら感じるのか、びくびくと震えるのを特等席で眺めながら戯れていると、彼がもぞもぞと動き出す。
「なぁ」
「なんですか?」
「こっち、準備してきたんやけど」
こっちとは、と思って固まっていると、俯せになった彼は自分からズボンを脱いでそこを拡げる様に見せつけてきた。
この人は、自分が何をしているのかわかっているんだろうか。わかっててやってるならたちが悪い。いや、わかっててやってるんだろうなぁ。
「はは、キョウヤ……ココ、埋めてくれるんやろ?」
「っ!カラスバさん!」
がばっと覆い被さって、唾液を指に絡めると誘うようにひくつくそこに指をゆっくり差し込む。予想外だったのか驚いている彼をそのままに、柔らかく解されたそこは切れることなく指を迎え入れた。
「っ、ぅ……指挿入れんでもいけるやろ」
「自分でやったんですか?俺に抱かれるために?」
そう耳元で囁けば、彼は顔を真っ赤にして「ばっ!」と叫んで誤魔化そうとしたので思わず微笑む。言うな、と言わんばかりに睨んでくるが、そこに何時もの迫力はない。まぁ、あったとしても俺には効果はないのだけれど。
「ふふ、嬉しいです。ねぇ、俺まだカラスバさんの気持ちいいところをちゃんと知らないんです。ちゃんと声に出して教えてください」
「……んな、オレに言えってゆーとんのか」
「はい」
満面の笑みで言ってのければ、そのまま顔をベッドに埋めて隠してしまった。やりすぎたかな、なんて少し反省していると、ぎりぎり聞き取れるくらい小さい声で「浅いとこ、出し入れされんの良い」なんて聞こえてきたものだから、思わず勢いよく指を引き抜いた。
「はぁっ、あっ」
「もう!ズルいですよ」
我慢なんてもう出来そうもなくって、チャックを下ろして自分の陰茎を取り出すと後孔に押しあてる。
「ぁ、っ!キョウヤっ」
「浅いところが良いんでしたっけ?」
言われた通りにゆるゆると浅いところを抜き差しする。慣らすようなゆっくりとした動きで、こちらとしてはもどかしくて仕方ないけど。でもカラスバさんには出来るだけ気持ちよくなって欲しいから。その思いだけで何とか気張る。
「うあ、……ん、あっ!……こえ、おさえられへん」
「良いですよ。好きなだけ出して」
「や、あっ……、はぁっ!声だしたらバレる」
「だいじょうぶです。今ホテルにいるの俺たちだけですから!」
AZさんはフラエッテと買い出しに行くと言っていたし、みんなはそれぞれ出掛けている。てっきりそれを知ってやって来たのかと思ったのだけれど、違ったようで……。
「っ、」
「ほら、大丈夫ですから」
ゆっくり、ナカを押し拓いていく。慣らしたとは言えやっぱり少しキツくて、すぐに出しそうなのを持ち前の気力でなんとか耐える。
「他に気持ちいいところはありますか?」
「……」
少しの沈黙、その後に「奥、乱暴に突かれるの」とだけ返ってきて、自分の中でぷつりと何かが弾けた。
「だからそう言うのズルいですって!」
「あ゛ぁっ!」
容赦なく奥に腰を打ち付ける。ぎゅうっとナカが搾り取るように蠢いて、こちらも気持ちがいい。油断したら持っていかれそうだった。
「ひあっ、ん゛っ!キョウヤ、あ゛っ……!」
抑えきれない声が隙間から漏れ出していく。少し掠れたその声にどうしようもなく煽られて、さらけ出された項に思わず噛みついた。
「ぐっ、あ!ん゛、ぅ!いくっ、い゛っ!」
「はぁっ、俺だって限界です!」
「ナカに、ほしっ……!」
そう息も絶え絶えに言うと、彼は振り向いてキスを強請る。強請られるがままに唇にしゃぶりついて腰を最奥に叩き付けた。
「く゛、ぅ~~~っ!」
「っ、う!」
びゅくびゅくと腹の奥に精を吐きかけ、彼を汚していく。あれ、中に出すとお腹壊すとか言ってなかったっけ。そう思ったときにはもう全てを出しきった後だった。
ぜえぜえとお互いに肩で息をしながら、余韻に酔いしれる。もっと、と言わんばかりナカが絡み付いてきて、すぐに硬さを取り戻した陰茎で、彼の良いところを探るように動かした。
「……あー、ほんにあほ」
ベッドに突っ伏したままカラスバさんが言う。その喉はがらがらで、鳴かせ過ぎてしまったな、なんて思った。バレないよな?大丈夫だよな?なんて心配して、とっておきのよく効くキャンディを渡して、てきぱきと周辺を片付ける。
「ほら、ナカの掻き出さないとお腹壊しますよ」
「わかっとるわ。オマエと違って若くないねんこちとら」
「え、そんなそこまで変わらないでしょ?あれ、そうですよね?」
「ノーコメント」
気だるそうに身体を起こした彼は、ティッシュで精液を拭うと、そのまま口にキャンディを放り込む。
「あっま」
「そりゃ、ハチミツですから」
「はー……」
「どうしました?」
眉間の皺を何時もより深くしながら頭を抱えている彼に問いかければ「また手ぇ出してしもた」なんて言うから賢者タイムか、と思いつつ一先ず濡れタオルを差し出す。
「大丈夫ですよ。と言うかいくらでも出してくれて構わないので」
「そう言う問題やないねん」
のそのそと起き出した彼を横目に、本当は全部自分が後片付けをしたいのだけれど、と思う。でも正直、そのままもう一回戦なんてなりかねないからシャワールームに消えていく彼を黙って見送ったのだった。
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