スタレ



 薄暗いバーのテーブルに彼と向かい合い、グラスを傾ける。つい数時間前、たまたま近くにいると分かるやいなやブートヒルさんから飲まないかと誘いが来た。それに飛びつくように了承し、合流したのがつい先程。
「さあさ、飲もうぜ」
 お互いにグラスを持ち、乾杯をする。にっと微笑む彼に目を奪われながらグラスを傾ける。
 僕は彼の戦う姿が好きだ。そも、共に戦える機会なんてそうそうないので数える程しか見たことはないけれども。それでも、心底楽しそうに笑むその一瞬に胸を打たれたのは確かだ。
 一目惚れにも近いその想いを、僕は持て余している。
「なんだ、考え事かよ兄弟」
「ああ、すみません。僕としたことが、楽しい時間に水を差してしまって……」
「何、気にすんな。で、何に悩んでるんだよ」
「それは……」
 まさか貴方のことを考えていたなんて、とてもじゃないが言えるわけがない。だって、口にした瞬間きっと困らせてしまうから。
「大丈夫です。取るに足らないことですから」
「そうか?」
 ふっと微笑み、グラスを傾ける。とろりとした液体を口に含めば、独特な風味が広がる。それを見ていた彼も、同じ様にグラスを手に取り豪快に飲み干した。
「はー、美味ぇ……カンパニーの奴らを追い返した後のモルトジュースは最高だぜ」
 その様子を微笑みながら眺める。僕の知らない所で、どうやら彼は一戦交えて来たようだった。ほんの少しだけ、相手をすることになってしまった彼等が羨ましいと思ってしまったのは心にしまっておこう。
「で、そっちはなんかおもしれぇことあったのかよ」
「僕ですか?僕は貴方から連絡が来るまではただ宇宙空間を飛行中でしたから……」
「そういやそうだったな。……なぁ、気付いてるか?」
 彼が意味ありげに微笑む。
「ええ、気付いておりますとも」
「それなら話は早ぇ……おい、そこのキューティ共!隠れてねぇで出て来いよ!」
 彼が高らかに叫ぶと、物陰から数人の男が出てきた。殺気を隠すのが下手なその人物達は、各々手に武器を持ちながら吠え立てる。
「そこのテメェ、賞金首だろ?」
「あ?だから何だってぇんだ」
「俺達のテリトリーに入って来ちまって可哀想にな」
「なんだよ、バウンティハンターか?」
 言い終わる前に一人が銃を構えた。咄嗟に庇うように間に入ると、弾丸を槍で弾き飛ばし、彼等を威圧する様に睨みつける。
「話し終わる前に攻撃を仕掛けるなんて……マナー違反ですよ」
 バウンティハンター達がたじろぐ。それを見て、彼は面白いものでも見たように腹を抱えて笑った。
「ははっ、それでも普通間に入らねぇだろ。オレぁサイボーグなんだぜ?」
「例えそうであっても、です」
「……そうかよ」
 何処か嬉しそうな彼に微笑みかけ、敵に斬り掛かった。




「何だよ、あんだけイキってた癖にその程度かぁ?」
 慌てふためいて逃げていったバウンティハンターに、彼が笑う。なにはともあれ彼が無事で良かった。店内で暴れてしまったことを申し訳無く思いながら、無関係な人々に謝罪をして回ろうとすると、彼に止められてしまった。
「おい店主、暴れて悪かったな。釣りは取っておいてくれ。ほら、行くぞ」
「ブートヒルさん……」
「いいから」
 手を引かれ、その場を後にする。
 確かにそのままそこに留まっていても無関係な人を怖がらせるだけか。静かに納得しながら、自然と繋がれた手に気付いて鼓動が早くなる。人通りの少ない路地まで来た所で、彼が口を開いた。
「アルジェンティ、その……悪かったな」
「僕は構いませんよ!」
 本心をそのまま口にする。だって、彼は悪くないのだから。
 暫く沈黙が続いて、重苦しい雰囲気がのしかかってくるようだった。その空気をなんとか変えようと考えなしに口を開く。
「何処かゆっくり出来る場所で仕切り直しましょう。そうだ。僕の船に来ませんか?」
「アンタの?なんだっけか、あの長ったらしい名前の……」
「プライスレス号、です!生憎モルトジュースはご用意できませんが、安らぎを得るには十分かと」
 彼の手を握り返し、手を引く。行き先は勿論僕の船を止めた港だ。それでいいのかはわからない。わからないけれど、彼は拒まない。腕を払えばそれで終わりなのに。
「……着いてきて良いのですか?」
「あ?アンタがオレに何かするわけねぇだろ」
「ああ、そこまで信頼して頂けるのですね」
 嬉しくなって口角が上がる。ああ、この時間がずっと続けばいいのにとすら思ってしまっていけない。彼は友人として慕ってくれているのだ。僕のそれとは違う。いや、それでもいいと己を納得させて歩く。
「そこの角を曲がればすぐそこですよ」
 思ったよりも早く船に着くと、パネルを操作して中へ乗り込む。小型の船とはいえ、生活するには十分な設備は揃えてあるつもりだ。
「で、いつまで手ぇ繋いでるつもりだ?」
「ああ、すみませんでした。痛くなかったですか?」
「別にこれっくらいどうって事ねぇよ」
 そう言ってへらっと笑ってみせる彼をひとまず来客用のソファに案内し、自室へと急ぐ。流石にリラックスするには鎧は不適切だろうと、金具の音を立てながら一つ一つ大切に扱い脱いでいく。最後にインナーを脱ぐと、黒いタートルネックに首を通した。ソファへ戻れば、落ち着かなそうにそわそわしている彼が目に入って思わず笑む。
「ふふ、お茶でも飲みますか?」
「おう一杯貰おうか」
 そう言いながらサイドテーブルにある電気ケトルのスイッチを入れお湯を沸かす。確かこの間馴染みの商人伝に仕入れた茶葉があった筈だ。アレなら彼も気に入るかもしれない。
 そうやってお茶を淹れる僕を彼は珍しいものでも見るような目でただ見ていた。
「はいどうぞ。ほら、良い香りでしょう?」
「茶の事はよくわからねぇけど、確かに良い匂いだな。うん、アンタらしい」
 一口、また一口と消えていくティーカップの中身に安心する。良かった、どうやら気に入って貰えたようだ。向かい側のソファに座り、自分も紅茶を口に含む。
「で?アルジェンティ、アンタはオレとどうなりてぇんだ?」
「!」
 衝撃で危うく飲んだものが変なところに詰まるかと思った。まさかそんなことを聞かれるだなんて思っても見なかったから、聞き間違えかと疑ったがそんなわけはない。この耳が、彼の言う事を聞き逃すわけがない。
「……直接的過ぎませんか?」
「隠してたつもりかもしれねぇけど、アンタ結構分かりやすいぜ?」
「……」
 だとすると、次の言葉は拒絶だろうか。この良好な関係が終わってしまうのは寂しい。が、彼が嫌がるのなら無理強いはしたくない。
 叶うはずのない恋だったのだと諦めるだけだ。
「僕は……」
「今のオレぁ気分がいいんだ。聞いてやるよ」
 ああ、覚悟を決めるときが来たのだ。
「僕は、貴方のことが好きです。気が合うと言うか、こうやって会話を交わすのも全部楽しくて素晴らしい経験だ思っています」
「それで?」
「出来ることなら、貴方もそうであって欲しい。高望みなのは分かっています。貴方が僕をどう思っているのかも」
 包み隠さず、なるべくストレートに言う。逃げようと思えば逃げられたのかもしれない。或いはのらりくらりと交わし、上手く誤魔化せばこの関係を続けられたのかも、とも思う。それでも、もう自分に嘘はつけなかった。
 僕は、彼が好きだ。
「おいおい、オレはまだ答えちゃいねぇだろ?答えを勝手に決めんなってのベイビーが。それで?アンタはオレと付き合いてぇの?」
「っ、はい……貴方のことを愛しく思っています。どうしようもないくらいに」
「ははっ、そうかよ」
 彼が立ち上がり、こちらに近付いてくる。心底楽しそうに微笑みながら、彼の冷たい手が頬に添えられた。そうして彼にしては珍しい小さな小さな声で呟いたのだ。
「なら、答えはYESだ」
「!」
 頭で考える前に彼の腕を引っ張って抱き締める。嬉しくって仕方がない。まさか肯定が貰えるなんて思ってもみなかったからだ。もう一度彼の目を見れば「一度しか言わねぇからな」と恥ずかしそうに目線を逸らした。
 ああ、なんて可愛らしいのだろう。手を取りその場に跪くと手の甲にそっとキスを落とす。
「貴方の全てを護ると誓います」
「っ、……ハハッ、童話みてぇだな」
 力の抜けたようにへにゃっと笑う彼は、輝いて見えた。ああ、なんて幸せなんだろう。
「ああ、ブートヒルさん」
「なんだよ」
「貴方のその、全てを射殺してでもしまいそうな眼差しが好きです」
「それ、褒めてんのか?」
 冷めかけた紅茶を啜りながら彼が言う。言葉にするのがこんなにも難しいなんて、普段の僕なら思いもしなかっただろう。
「こう言う時ぁ、キスすんだよ」
 彼の顔が近付いてくる。至近距離に欲しかったものがある状況に頭が追い付かない。そのまま、口と口か合わさって、それで。
「たく、ほら……来いよ」
 彼が誘うように両手を拡げる。ぎゅうぎゅうと抱き締めながら、何度も何度もお互いの存在を確かめ合うように夢中で唇を吸い合った。
「っ、ブートヒルさん」
「なんだよ、アルジェンティ。こんなんで満足なのか?」
「……余り煽らないでください」
「ハハッ、童貞にゃ刺激が強かったか?」
 挑発するように彼が言う。そんな挑発、乗ったらいけないと思っているのに、僕の中の欲が暴走していくのがわかった。
「僕はこのまま貴方を抱いても構わないんですよ?」
「っ、アンタも物好きだな。鉄の塊なんざ抱きてぇなんてよ」
 鉄の塊であろうとも、貴方だから抱きたいんです。耳元でそう囁けば、彼の動きが止まった。何かあったのかと彼の顔を覗き込めば、彼は顔を真っ赤に染めながら視線を逸らす。
 ああ、本当に可愛らしい人だ。
「抱いても……良いぜ?」
 囁くように小さな声で発せられた言葉に思わず彼を抱きかかえる。向かう先は勿論ベッドルームだ。こんな風に言われたら、誰だって断れなどしない。
 片手でなんとかコードを入力し、ベッドルームへ足を踏み入れる。そこは、今まで誰にも許したことのない本当にプライベートな空間だ。シーツの海に優しく彼を降ろし、覆いかぶさる。
「ブートヒルさん、今更逃げようとしても遅いですからね?」
「あ?誰が逃げるっ……っん」
 彼が何かを言い終える前に、また彼の唇を塞ぐ。今度は唇の隙間から舌を差し込み口を開けるよう促すと、恐る恐る閉じていた口が開いていく。
「んんっ、ぅ、ふっ、……っ、」
「はぁっ、ちゅっ……」
 薄暗い部屋の中にぴちゃぴちゃと水音が響く。我ながらがっつきすぎだと反省するが、だからと言って、もうすぐには止められそうになかった。
 舌先を擦り合いながら、逃さないように彼の頭を押さえつける。健気にも、合わせようと必死そうな彼に下腹が重くなるのを感じながら、口内を蹂躙していく。
 ある程度堪能した後、ゆっくりを唇を離せば、とろんとした目でこちらを見てくる彼が目に毒すぎて思わず頭を抱えた。
「あるじぇんてぃ」
「ふふっ、まだキスだけですよ?」
「アンタっ、さては童貞じゃねぇな?」
「さあ、どうでしょうね」
 そんなこと、些細なことでしょう?そう笑えば、彼は少し悔しそうに眉間に皺を寄せた。それがまた可愛くて、もっと苛めてしまいたくなる。
 彼の腹の傷をなぞるように指先で撫でながら、その鉄の身体に何度もキスを落とす。跡さえ残らないけれど、それでも十分だった。柔らかい首元に噛みつけば、その度にぴくりと身体を跳ねさせる彼に口角が上がる。
「んんっ、アルジェンティ」
「なんです?」
「それっ、擽ってぇっ」
 ボディパーツの継ぎ目を撫でているだけなのに、それだけで彼は目を潤ませながらノイズ混じりの声で言った。随分と感じやすいなと思っていると、耐えかねた彼が白状した。
「……さっき、感度が上がるっていう電子ドラッグ挿したんだ。元々オレに性感なんて機能はねぇからな」
「っ、そんな物を用意していたんですか?」
「……アンタと会う時はいつも持ってた」
 まったく、この人は。そんな危なそうな物に手を出してまで僕に抱かれたかったのか、と一種の感動さえ抱きながら、それでも彼の身体が心配だった。
「それは合法な物なのですか?身体に害はないのですね?」
「はぁっ、じゃねぇとアンタ怒るだろ。そう言う遊び用のちゃんと出どころが分かってるヤツだっての」
 世の中は広い。サイボーグ相手に欲情する者が僕の他にいても不思議ではないから、そういう物もあるんだろう。態々それを使ってくれたことに愛しさを感じながら、彼の胸板にキスを落とす。
「あっ、ぅ……」
「ふふっ、可愛らしい。ねぇ、どうしたら気持ちいいのか教えてください」
「っ、」
 耳元で囁けば、彼は一瞬躊躇った後ぼそぼそと呟き始めた。
「……わかんねぇけど、胸のネジ、触られんの……気持ちいい」
「わかりました。ここですね?」
 言われた通りに指先でかりかりと引っ掻くようにネジを刺激すると、彼の身体が一際大きく跳ねた。
「あ゛っ、んんっ!」
「良さそうですね。安心しました」
「アルジェンティ、それっ、やべぇっ……あ゛ぁっ!はぁっ、ん〜〜〜〜っ!」
 堪らず声を上げる彼に、酷く煽られる。もう片方のネジも撫でるように刺激してやれば、彼は身体を弓形に反らしながら果てたようだった。
「はぁっ、はぁ……」
「上手にイけましたね……可愛かったですよ」
「うるせぇっ、」
 息も絶え絶えな彼を気遣いながら、ボディについた数々の傷をなぞる。深さもまちまちなそれらは、彼が生きている証でもあった。
「はぁっ、んんっ……あるじぇんてぃ」
「はい、どうしました?」
「こっち、切ないっ」
 ジーンズをずり下げた彼のそこには女性器が付いていた。最初からそうだったのか、後々に改造したのかは自分にはわからないが、衝撃を受ける。
「んっ、あんまじろじろ見んなよ……」
「すみません。あまりにも扇情的だったものですから」
「?」
「ああ、可愛らしいって意味ですよ」
 彼の首筋に舌を這わせながら、そこへと手を伸ばす。ひくひくと健気に震えるそこは、しっとりと湿っていて柔らかい。陰核に相当するであろう突起を優しく転がせば、彼はびくりと身体を跳ねさせた。
「は、あ゛っ!んっ、う゛っ……そこ、気持ちいいっ」
「ちゃんと言えて偉いですね」
「ん゛あっ、ァ……っ!またいくっ、ぅ、〜〜〜〜っ!♡♡」
 滲み出た粘液を指に絡めながら、陰核を苛め抜く。勃ちあがったそこをこりこりと潰すように刺激してやればあっという間に彼は二度目の絶頂を迎えた。
「ふふ、気持ちいいですね」
「うあっ、♡♡きもちいっ♡♡あるじぇんてぃ……」
 舌っ足らずに名前を呼びながら擦り寄られ、危うく理性が飛ぶところだった。それだけはなんとしても避けたい。初めての記憶に、怖い思いを植え付けたくはないのだ。
「ブートヒルさん、ここに指を挿入れてみてもいいですか?」
「っ、はやくしろよぉっ♡♡」
「ふふ、痛かったら言ってくださいね?」
 分泌液を指に絡め、ゆっくりと腟内に指を埋めていく。ゴムのような材質のそこはひだが絡みつき、明らかにそう言う目的で作られたとわかる。
 殺意にも似た感情を改造を施した人物に向けながら、じゅぽじゅぽと卑猥な音を響かせ出し入れを繰り返した。
「あ゛っ♡♡はげしっ、ん゛ん゛っ!♡♡」
「激しいのもお好きでしょう?」
「すきじゃなっ、あ゛あっ!♡♡」
 枕を抱え、顔を隠してしまった彼に思わず微笑む。でも、これじゃあ感じている顔が見れないじゃないか。
「ブートヒルさん、ほら、顔を見せてください」
「いやだっ、見せれねぇっ、んあっ♡♡」
「これじゃキスが出来ませんよ?」
 そう囁きかければ、おずおずと枕から手を離したのでそのまま枕を奪い取り、ベッドの外に投げ捨てる。
 驚いたように目を見開く彼の唇に望み通りキスを落とし、2本目の指を挿入した。
「ひあっ、♡♡あ゛っ、あるじぇんてぃ♡♡」
「はぁっ、気持ちよさそうですね」
「いいっ!良いからっ♡♡まってっ、またイクっ♡♡」
「ふふ、待ちません♡」
 ざらついた場所をぐっと強く押し込めば、彼はまたも果てたのか身体を弓形に反らしがくがくと身体を震わせた。そうして、かくんと力が抜けると息も絶え絶えにこちらを睨んでくる。
「はぁ、はぁっ……このキューティがっ」
 それさえ可愛らしくて、ただただこちらを煽るだけなのを彼は気付いていないのだろう。
「ブートヒルさん、今から貴方を抱きます」
「っ、」
「貴方の許しが欲しい」
 耳元で囁くように呟けば、彼が半身を起こす。何をするのかと様子を眺めていると、服の上から首筋に噛みついてきた。
「いっ、」
「ははっ、ざまあみろ。ほら、早く挿入れろよ……」
 じくじくと痛む噛み跡をさえ愛おしくて、彼の唇にキスを落とせば微かに鉄臭い血の味がした。許しを得たので、スラックスを下着ごと脱ぎ捨て膣口に陰茎を押し当てる。
「アンタでも勃つ時あんだな」
「僕をなんだと思っているんですか?」
「んっ♡気狂いだろ」
 こんなサイボーグ相手におっ勃ててるんだからよ。そう続ける彼に微笑みかけながら、腰を押し進めた。気狂いと呼ばれようが、どうでもいい。彼にそう言われるのなら、いっそ本望だ。
「あ゛っ、♡♡」
「っ、くっ」
 馴染ませるように浅い所で出し入れを繰り返す。抜こうとする度、ナカが絡みついてすぐにでも出てしまいそうだった。
「ある、♡♡ん゛っ、きもちいいか?」
「ええ、とても」
「よかったっ、♡♡あ゛っ、!♡♡」
 とちゅんと奥に腰を打ち付ければ、彼は喉を晒して喘いだ。その表情はとろけきっていて、旗から見ても気持ちいいのだとわかる。一つになれたことが嬉しくて、行き場をなくしていた彼の手に自分の手を絡ませると、ぎゅっと握った。
「はぁ♡♡んあっ、〜〜〜〜っ!♡♡」
「っ、ブートヒルさんっ!」
 名前を呼びながら何度も何度も腰を打ち付ける。ぱんぱんと乾いた音が部屋に響き渡って、それにさえ興奮する始末だ。もっと余裕を持って抱きたかったが、到底無理な話だった。好きな人が乱れる様を見て、平気な人なんてきっといない。
「あるっ、♡♡あるじぇんてぃ!オレもうっ♡♡」
「っ、ブートヒルさん、好きです」
「あ゛、〜〜〜〜っ!♡♡オレもすきっ♡♡」
 好き、と声に出して言われるとこんなに幸せな気持ちになるのかと驚く。ああ、どうしてこんなに愛らしいんだろう。
「あぁっ、♡♡きちゃうっ、♡♡」
「良いですよ、一緒にイキましょう?」
「っ!♡♡ん〜〜〜〜っ♡♡」
 何度も果てているのかぶしゅぶしゅと壊れたように潮の様な物を吹く彼の最奥に、マーキングするように濃い精を吐き出す。
「ぁ、♡♡あるじぇんてぃ♡♡」
 もう、誰にも渡すものか。そう強く思いながら彼の口にキスを落とした。
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