スタレ

当たり前のごとくカントボーイ
恋人の日らしいので



 アイツの手が、そっと頬に触れる。壊れ物でも触るみたいに撫でられて、擽ったさに身を捩れば、アイツはへにゃっと嬉しそうに笑った。
「ふふ、知っていますか?とある惑星では、今日は恋人の日だそうですよ」
「っ、だからってわざわざ連絡寄越したのかよ」
「貴方の事を思うといてもたってもいられなくって。どうしても触れたくなってつい」
「ハッ、そうかよ」
 別に会えなくったって構いやしねぇけど、でもそう言われて悪い気はしなかった。
 オレだって会いたかった。そう素直に言えてしまえたら良いんだろうけど、羞恥がそれを阻む。真っ直ぐ射貫くように見詰められ、思わず視線を逸らしながらアイツの背に手を回す。
 シーツの海に押し倒された状態で、もう今すぐにでも食われそうな距離なのに、未だ手を出してこないアイツにほんの少しやきもきしながら逃げ場を探すが、そんな場所、このベッドに上がった瞬間からあるわけもなく。ふと悪戯に肌を撫でられて身体が震えた。
「っ、擽ってぇって」
「ああ、このすべらかな曲線が愛おしい。僕の体温がじんわりと移っていって、その一時が嬉しくて堪らないのです」
「そんな事言うの、アンタぐらいだよ」
 心の底からそう思っているのだろう。露出された腹の装甲を撫でながら言うアルジェンティに、少しずつ狂わされていく。
 この物好き。そう言うの、ほんとにアンタぐらいだよ。
 でも、それが嬉しくないと言えば嘘になる。
「ずぅっとこうしていたいくらいです」
「……そうかよ。なら、気のすむまで触っていいぜ?」
 余裕ぶりたくて、息が上がるのを堪えながら耳元で囁けば、アイツが嬉しそうに微笑んだ。
 ああ、その顔が好きなんだよなぁ。なんでも叶えたくなっちまう。
「ああ、ブートヒルさん。そんな風に言われては、貴方を抱きたくなってしまう」
「最初っからそのつもりだったんじゃねぇのかよ。……いいぜ、好きにしな」
 鼻先が触れるくらい近い距離で、宝石みたいに美しく光を反射させる瞳と目が合う。
 好きだ。好きなんだ。どうしようもないくらい。その先を強請るように自分から唇にキスをしてぎゅうっと抱き付けば、アイツがかあっと顔を赤くした。
 なんだよその反応。初な様子に、ついこっちまで恥ずかしくなってくる。そんな反応しておきながら酷く抱く癖に、だ。
「アルジェンティ、アンタが欲しい」
「っ、」
 ギラリとアルジェンティの瞳に欲が宿って。その目で見詰められて、何度も拓かれた腹の奥がじんわりと熱を持つ。そのまま唇を奪われ、舌が口内に侵入してきた。
「んんっ、ぅ」
 熱い舌が上顎を擽るように撫でる。辛うじてあったはずの余裕なんてすぐ引き剥がされて、好き勝手に蹂躙され、飲みきれなかった唾液が口の端から顎に伝い落ちていく。
 なんとか息継ぎをしながら、夢中で舌を絡め合う。気持ちいい、熱が移って蕩けそうだった。そうやってしばらくの間くっ付け合っていると、腹を撫でていた手が胸の装甲に伸ばされる。何だってことはないハズなのに、そこをやんわり撫でられると腰が跳ねた。
「っア、ぅ!」
 アルジェンティの手によって、とっくに躾られてしまった身体が快楽を欲しがる。自分で触ったところでなんでもないのに、アイツに触れられるとあっという間にぐずぐずになってしまう。なんで、なんて思ってもオレにはわからなかった。
「ここ、感度が上がりましたね」
「誰のせいだとっ、んんっ」
 ぞくぞくと、ないハズの鳥肌が立つ感覚がする。熱が籠ってきて、処理スピードが落ちるが構っていられない。
「やぁ、あっ!はぁ……っ」
 両のネジを指先で弾くように刺激され、耐えきれず上擦った声が漏れる。ぎゅうっとアイツにしがみつきながら震えていると、また唇にキスを落とされた。
「っ、そこばっか」
「ふふ、わかっています」
 触って欲しいのは此方でしょう?そう囁かれながら、興奮ですでにしとどに濡れたズボン越しに股座を撫でられびくんと身体が跳ねる。吐息が耳に当たって擽ったい。そこさえ犯されているような感覚に、勝手に興奮する。
「あ、あっ!早く触れって、ぅんんっ!焦らしてんじゃ、ねぇよ」
 布越しにそこの形を確認でもするように撫でられ、そのまま強調された突起を押し潰された。瞬間、バチバチと電流が流れたような刺激が脳天を突き抜ける。
「ん゛、あっ!」
「可愛らしい声。もっと僕の手で乱れて……」
 耳の縁を舐められながらそこを刺激され、あっという間に追い詰められた。息が上がって、薄靄がかかったように何も考えられなくなっていく。何処をどう触られたら良いかなんて、もうとっくに知られ尽くしていて、その責めに欠片の容赦もない。
 そうされる方が興奮するだなんて、きっとお見通しなんだろう。
「い゛、ぅっ!もっ……イキそ、あぁっ!」
 絶頂の気配に涙が滲む。ガリガリと背中に爪を立てながら、首を横に振って快感を逃そうとするがどうにもならない。
「ほら、気持ちいいですね」
「っ、あ~~~っ!」
 びくんびくんと、一際大きく身体が跳ねる。足の先にぎゅうっと力が入って、余韻に酔いしれているとベルトのバックルを外された。
 何やかんや言って、アルジェンティもだいぶ限界なのだろう。珍しく鼻息の荒いアイツに、ああ、アンタもちゃんと人間なんだな、と少しだけ安心した。
「はぁっ♡アルジェンティ……ナカっ、指欲しいっ」
 強請るようにそう呟けば、またキスを落とされる。脱がしやすいように腰を浮かせ、ズボンを脱がせてもらうと自分から股を開いた。
 うずうずとそこが疼いてしょうがない。早く直接苛められたい。はふはふと短く息を吐きながら、大人しくその時を待っていると、アイツはサイドチェストから良い匂いのする潤滑油を取り出し指に絡めた。
「慣らさなくていいからっ、」
「駄目ですよ。僕は貴方に気持ちよくなって欲しいのです」
 だからどうか逃げないで。子供にでも諭すように、酷く優しい声音で囁かれながら、孔に推し当てられた指に期待をする。自分でも、そこがくぱくぱと動いているのがわかって羞恥に顔が赤くなった。
 ゆっくり孔に指が飲み込まれていく。その様から目が離せない。
「ふっ♡ぅう!♡♡あるじぇんてぃ、♡♡」
「大丈夫、ここに居ますよ」
 ぱさりとアルジェンティの赤い髪が落ちてきて、まるで監獄のようだと思った。
 蕩かされて、甘やかすように気持ちの良いとこを撫でる指にどんどん思考が持っていかれる。もう、気持ちが良いしか考えられない。頭がバカになっちまってる。
「ひぁ、♡あっ……んあっ♡♡そこばっか」
「でも、お好きでしょう?」
「や、またいっちゃ♡♡うぅ~~~っ!♡♡」
 白く美しい指が、じゅぽじゅぽととびきりいやらしい音を立てて出し入れされる。快感の波に飲まれながら、なんとか息継ぎをして。溺れてでもいるような感覚に怖くなってしがみついた。
 妙な感覚がして、ぷしっと音がした。それで初めて自分が潮を吹いたのだと知る。
「ブートヒルさん、こんなに感じてくださって……嬉しいです」
「っー!♡♡はぁっ……はぁっ、ばかっ、やろ♡♡キューティーがっ、♡♡早く挿入れろよっ!♡♡」
 精一杯の言葉を吐き出せば、アイツはにっこりと微笑むとシャツを脱いだ。傷跡の走るその身体は良く引き締まっており、とても格好が良い。早くその怒張で突いて欲しくて、ずくっと腹の奥が疼く。
「少々お待ちください。今スキンを……」
 サイドチェストに手を伸ばすアイツの手を払いのけ、キスをする。触れるだけのキスだ。余裕なんてもうとっくになかった。
「いらねぇからっ!♡♡アンタのそのでけぇの、ここに頂戴?」
「っ!」
 ひくつくそこを指で拡げながら強請れば、アイツの表情が変わった。そうだよ、アンタも余裕なんてねぇだろ?そのまま気のすむまで暴いてくれよ。そう思いながら、アイツの首筋に噛みついた。
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