スタレ



 ふとした違和感から目が覚める。なんだ、なんつーか、身体が熱い。しっかり充電されているのを確認してから、身体を起こせば隣にアイツはいなかった。何かあったんだろうか?と考えてふと思う。オレはいつの間にアイツの船に来たんだっけ?
「……昨日の記憶がねぇ」
 何度思い起こしても、ごっそり記憶が飛んでいる。酒を大量に飲んだわけでもないのに、なんでだ?
「おや、目が覚めたのですね」
 扉が開いて、水の入ったボトルを持ったアルジェンティが部屋に入ってきた。
「大丈夫ですか?」
「……っ、オレ、なんでアンタの船に?」
「覚えていないのですか?貴方、昨日ボロボロの状態で僕の前に現れたのですよ」
 ベッドに腰掛けたアイツは、コップに水を注ぐとこちらに差し出してきた。それをありがたく受け取り、口に含む。
「なーんにも覚えてねぇ」
「そうでしょうね。だって貴方、とても錯乱していましたから。僕に会いに来るなり襲い掛かってきたんですよ」
「はぁ?」
 そんなわけ。でも、確かにそう言われたら薄らぼんやりとそんな気がしてきた。あれ、そういや、なんか潜入先で電子ドラッグ盛られたんだっけ、と思い出す。
「……あー、アレか」
「思い当たる節でも?」
「ちょっとな……その、悪い。迷惑かけたな」
「いえ、そんなことはないですよ。大丈夫です。それに、貴方に頼ってもらえたようでとても嬉しかった」
 ふっと微笑みそう言ってのけた純美の騎士様は、オレから空のコップを取るとサイドテーブルにそっと置くと顔を覗き込んでくる。
「身体は大丈夫ですか?」
「ああ、ちょっとばかし熱が籠ってるが問題ねぇ。それよかアンタこそ大丈夫か?怪我とかさせてねぇよな?」
 物を壊したりとか……してねぇよな?恐る恐る問えば、アイツがぐいっと身を乗り出してきた。
「ふふ、昨晩はそれはもう凄かったですよ。僕を押し倒して潤んだ瞳で見詰めながら"抱いてくれ"と……」
「……んん?」
 今なんて言った?そりゃちょっと話変わってきたぞ。
「鉛玉ぶちこみに来たわけじゃねぇのかよ」
「本当に覚えていらっしゃらないのですね。理性を飛ばした貴方は僕に抱かれに来たのですよ」
「……は?」



 それは昨晩のことだ。
 来客の知らせを受けて扉を開ければ、そこにはボロボロの彼が立っていた。
「ブートヒル、さん?」
 何故そんなボロボロなのか。青い血を滴らせながらぼんやりとこちらを見つめる彼に怒りが沸く。もしかしたらまた無茶をしたのかもしれない。サイボーグだからと、己の身体をあまり大事にしない彼が連絡なしでやって来る時は、大体がこうやって怪我をしている時だ。
「大丈夫ですか!?」
「……アルジェンティ」
 何処か様子の可笑しい彼は、身体をゆらゆらと揺らしながら船内へと入ってくる。それを抱き止めて持ち上げると、一先ずソファのある部屋まで運ぶことにした。
 ぼんやりとした瞳に上気した頬、情事を思い出させるようなその姿に邪念が沸くが、それを振り払ってソファに座らせる。
「水を持ってきますから、少し待っていてください」
 そう言って立ち上がろうとすると手を引っ張られバランスを崩した。あまりに一瞬の出来事で、咄嗟に行動が取れずそのままソファに倒れ込むと、上にのし掛かられる。
「なっ、ブートヒルさん!?」
「アルジェンティ、オレを抱いてくれ。出来るだけ酷く」
 吐息混じりに耳元でそう囁かれ、血が滾るのを感じる。様子がおかしい彼に心配半分、言われるがまま貪ってしまいたくなる衝動を抑え、その熱い頬に触れる。
「どうしたのですか?貴方らしくない」
「アンタに酷くされてぇの。ダメ?」
「っ、」
 目を細めて、猫のように手にすり寄る彼に邪な気持ちが沸き上がる。恋人にこんな風に煽られて耐えられるわけがなかった。
 でも、欲望のまま抱いてしまえば彼を傷付けてしまうかもしれない。それだけは避けたい一心でなんとか堪えると彼を頭を撫でながら語りかける。
「まずは落ち着きましょう?僕は貴方を大切にしたいんです」
「アルジェンティ……オレ、身体が熱いんだ。助けてくれ」
 まるで聞く耳を持たない彼の顔がゆっくり近付いて来て、そのまま唇を奪われる。口を開けと言わんばかりに甘く唇を食まれ、ぞくりと鳥肌が立った。頑なに開けないでいると、彼は焦れたようにううっと唸り声を発して離れていく。
「そんなに嫌かよ」
「嫌なわけないでしょう?」
 殆ど反射的に言葉にすれば、へにゃっと彼が微笑んだ。
 ……それは反則じゃないか。
「ぎゃは、嫌じゃねぇんだ」
 嬉しそうにしている彼をどうするべきなのか。思考を巡らせていると、彼は耐えかねたのかもぞもぞと動き出しこちらに背を向ける。
 何を、と言いかけて、すぐに察した。
「何だかんだ言うわりにちょっと勃ってんじゃん」
 ズボン越しに陰茎に触れられ、思わず身体が跳ねる。生理現象です、と顔を手で抑えながら小さい声で言えば、彼が振り向いてにやりと微笑んだ。ドキッと心臓が高鳴って、思わず見惚れてしまう。
 ゆっくりズボンを下着ごと下ろされ、冷たい手が陰茎に触れた。
「ブートヒルさんっ、」
「黙ってな。良くしてやるから」
 反応し始めた陰茎が、温かい粘膜に包まれる。口内がいつもより熱い。やはり体調が悪いのではないか。肩を掴み引き剥がそうとするが、どこにそんな力が残っているのか、彼は頑なに動かなかった。
 それに反抗するように舌で尿道口をほじられ、急な刺激に身体が跳ねる。
「くっ、ぁ……はぁ、!」
「はぁっ、相変わらずでけぇな……♡」
 彼は口を離し、熱っぽく呟くとちゅっと音を立てて吸いついた。そのまま敏感な先端をざりざりと舌で削るように舐められ、思わずぐっと奥歯を噛み締めなんとか耐える。溶けてしまいそうなくらい気持ちがいい。気持ちが良くて、少しずつ思考が鈍っていって、時折跳ねる彼の身体をただ眺める。彼の身体が心配だが、こうも誘われてはこちらも我慢ならない。
 髪の隙間からちらりと見える充電口に指を這わせ縁をなぞれば彼の身体がぶるりと震えた。
「んやっ、あっ♡それっ♡」
 ここが彼の性感帯なのはもうすでに知っている。何度も何度も繰り返して、そう覚えさせたのは僕自身だ。
 その孔に指を差し込み、ゆっくり出し入れをすれば、気持ちいいのか陰茎から口を離し喘ぐ彼に、思わず口角が上がる。
 嗚呼、可愛らしい。
「あっ、んっ♡、そこやめっ、あぁっ♡」
「ふふっ、もう終わりですか?」
 尻をこちらにつき出すようにへたりと身体を折り、感じ入っている彼に声をかける。
 もうすでに身体に上手く力が入らないのか、ずりずりと陰茎に頬擦りをしながらなすがままになっている彼が、こちらを振り返った。
「あるじぇんてぃっ♡そこばっか、やだ♡」
「嫌なのですか?こんなに気持ち良さそうなのに」
 蕩けきった瞳がなにか言いたげに僕を捉える。とても嫌がっているとは思えなくて首を傾げれば、彼がもぞもぞと起き上がった。なんとか尻を上げると、ズボンの上からでも見てわかるくらいしとどに濡れたそこを指で押し拡げながら言う。
「こっち、ほしい♡」
「っ、」
 あまりの色気に思わずくらりと眩暈がする。そんな風に煽られて、落ち着いていられる訳もなく。手探りでベルトのバックルに触れ緩ませると、そのままズボンをずり下ろした。
 ぬかるんだそこを指の腹で撫で、とろとろと溢れる蜜を絡めながら突起に触れれば彼から可愛らしい声が上がる。
「ああっ、うぁ♡♡」
 勃ち上がったそこをこりこりと押し潰せば、たまらないと言わんばかりに腰を逃がそうとするので、空いていたもう片方の手で押さえ付けて苛め抜いた。
「やぁ、あ~~~っ♡♡っ、あ゛、ぐっ♡♡いってるっ、て!♡♡」
「ふふっ、気持ちがいいですね」
「ん゛、あっ♡♡中にほしいって、いったのに♡♡」
「酷くして欲しいと言ったのは貴方ですよ?」
 そうやって囁きかけながら、自分の欲求を満たしていく。もっと苛めてしまいたいと思う反面、どろどろに甘やかしたくもなるのだから不思議だ。
「アルジェンティ、♡♡はやくっ♡♡」
 こぷりと孔から蜜が零れ落ち、僕の腹に落ちていく。その様を眺めながら、ゆっくりとその孔に指を挿入させれば、彼は身体を震わせながら悦んだ。
「はぁ♡♡あ、ん゛っ……♡♡」
「ブートヒルさん、そのまま自分で腰を動かせますか?」
「っ、♡なんれ♡♡」
 既に滑舌の怪しい彼に微笑みかけつつ、指を浅いところで出し入れする。ざりざりとした場所に指の先が当たる度、悲鳴を上げながら蜜を溢れさせるほど感じ入っている彼には酷なことかもしれないが、なんと言おうとそう望んだのは彼自身だ。
「出来るでしょう?」
「んっ、う♡♡」
 もどかしいのか、既に腰が揺れている。ほとんど無意識なのだろう。ほら、と声をかければ、ぎこちなく動き始めた。
「ふふ、好きなところを御自分で苛めてください」
「~~~っ♡♡あ゛ぁ、っ!♡♡ぐぅ、あぁっ♡♡」
 きゅうきゅうと纏わりつくようにナカを絡み付きながら、指が飲み込まれていく。それはまるで自慰のようで、彼は羞恥心からか耳まで赤く染めている。顔が見られないのは残念だが、これはこれでとても良い。
「ん、あっ♡♡はぁっ!♡♡あるじぇんてぃ♡♡」
「僕はここにいますよ」
「っ、う~~~っ♡♡」
 絶頂しているのか、彼の背中が弓なりに反り返る。何度見てもその様は美しいと思う。
 ……まぁ、彼に美しくない場所なんてないのだけれども。
 ふ、と微笑みながらおもむろに指を増やせば、びくんと大きく身体を跳ねさせた。
「っ!♡♡あぁっ、う゛ぅ♡♡」
「ブートヒルさん、気持ちいいですか?」
 こくこく、と首を大きく振り、なんとか肯定するのがいじらしくてついもっと苛めてしまいたくなる。興奮して指を飲み込んでいる孔から目が離せない。
「あるじぇんてぃ、♡♡頼む、からっ♡♡あっ、はやく、っ♡♡いれてほしっ♡♡」
 もう限界なのだろう。涙を流しながらそう求められ、辛うじて保っていた理性がぶちりとちぎれた音がした。
 孔から指を引き抜くと、力の入っていない身体を持ち上げ、ほとんど無理矢理に彼をソファに押し倒す。
「はえっ?♡♡」
 状況を把握できていない彼がぽかんと口を開けていた物だから、そのまま無防備な唇にしゃぶりつく。湿った音を立てながら舌を絡ませ、唇を優しく食めば、それに応じるかのように彼の手が僕の背中にまわされた。
 濡れそぼった孔に、陰茎を押し当てながら吐息混じりに囁く。
「……挿入れますよ」
 彼が小さく頷いたのを確認してから、ゆっくりと押し進める。慣れさせる為に浅いところで出し入れを繰り返すが、いつもよりナカが熱い。
「あるじぇんてぃ、あるじぇんてぃ」
 親を探す子供のように、彼が僕の名前を呼ぶ。ちゃんとここにいます、と囁けば、安心したかのようにへにゃっと笑った。
「煽らないでください」
「はぁ、んん♡♡煽ってんだよ♡♡」
 余裕なんて気付けばなくなっていて、汗が額から流れ落ちていく。荒く息を吐きながらなんとか腰を動かし始めた。
「ああっ♡♡ん゛、あっ!♡♡う、♡♡」
 ぱちゅんぱちゅんと卑猥な音を部屋に響かせながら、先端に吸い付いてくる子宮口を苛めぬく。その度にぷしゅっと潮を吹き出す彼が愛しくて、首筋にかじりつく。人工的な皮膚に歯をめり込ませ、吸い付けばそれにさえ感じるのか彼がナカをきゅっと締め付けた。
「もっと、♡♡あ゛っ、♡♡んんっ!♡♡あ~~っ!♡♡」
 彼の言葉にノイズが混ざり始める。きっと限界が近いのだろう。それでももっと、とねだるのだからたちが悪い。
「ブートヒルさん、」
「う゛、♡♡~~~っ♡♡アルジェンティ!♡♡それきもちいっ♡♡」
「だから煽らないでくださいって」
 もう何が何だかわかっていなさそうなくらいどろどろの彼に煽られて、気持ちよくって腰が止まらない。仕上げと言わんばかりに奥に先端を押し付けると、そのままびゅくびゅくと精を吐きかけた。
「あ゛~~~っ♡♡」
「はぁっ、んんっ」
「あ、♡♡んぐっ、♡なか出てる♡♡」
「っ、」
 ほとんど無意識に呟かれた言葉に、血がかっと熱くなって、また腰をゆるゆると動かし始めると彼から悲鳴が上がる。
「ひっ、♡♡まだいってるから♡♡あぁ、ん♡♡」
「これは煽った貴方が悪い」
 半ば強制的に彼の腰を持ち上げると、どちゅどちゅ音を立てて腰を打ち付ける。その度にナカが痙攣して、絡み付いてきて気持ちがいい。彼も同じだと良いななんて思って顔を覗き込めば、目を冷却水で潤ませながら何かを呟いた。
「    」
 雑音混じりのその言語を理解することは残念ながら出来なかった。




「と言ったように、それはもう凄かったのですよ?」
「……」
 そういやそうだ。言われてなんとなく思い出してきた。それと同時に、自分の言ったことやらやったことやらに羞恥がわく。
「何時間ヤってたんだオレ達」
「そうですね。ざっと半日ほど」
「……そーかよ」
 半日だぁ?この絶倫野郎。薬を盛られていたオレとは違ってアンタは素面だろ。なんて口に出かけたがあわてて飲み込んで。水と一緒に飲みくだすと、コップをサイドテーブルに置いた。
「最後の辺りではもう僕の名すら呼べなくなっていて、それはもう可愛らしくて……」
「たく、キューティーが……ま、何はともあれ迷惑かけたな」
 そう言いながら立ち上がろうと足を床につけるが、力が入らない。なんならがくがくと震える始末だ。
 そりゃあそうか。半日もまぐわってたらそうもなる。
「……」
「身体もボロボロでしたし、その、しばらくはお休みになった方が良いかと……」
「誰のせいだろうな!」
 申し訳なさそうに項垂れるアルジェンティに思わず吹き出しそうになった。だって、アンタそんな、叱られた犬かよ。
「まぁ元はと言えばオレからだし許すけどよ」
「本当ですか?」
 おうおう、尻尾ぶんぶん振り回してるのが見えるわなんて。オレよりもほんのちょっと背の高いアイツの頭を撫でながら笑う。
「で、あの時なんと言ったのですか?」
「さあ、なんだろうな」
 
 
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