ルクエド
「今日はこれ、使ってみようか」
そう言われて差し出された物は、首輪だった。
率直な感想を言うと、こいつ何言ってんだ、だ。俺は犬じゃねえし、何に使うのかさっぱりわからん。
「はぁ?何に使うんだよ、それ」
「んー?こう使うんだよ」
そう言うと、あいつはその首輪を勝手に首に着けやがった。リードが付いたそれを軽く引っ張られ、きゅっと首が締まる。
「かはっ、何すんだてめぇっ!」
「エドは良い子だからしたらダメなことわかるよな?」
「っ、」
あいつは、獣のようにギラついた目でこちらを見ていた。嗚呼、その目に見つめられると俺はダメになる。
「このまますんのかよ」
「どっちが良いか選ばせてやるよ。このままここで犯されるのとお仕置き、どっちがいい?」
「怒んなよ。つかそれどっちも一緒だろ」
確かに最近忙しくて構ってやれなかったけども、そんなことで怒られる筋合いはない。
答えられないでいると、またリードを引っ張られる。
「弟子相手にいちゃついてたろ」
「うっ、それはあいつがっ、」
それに弟子とは別にいちゃついてなんかない。断じてない。
嫉妬かよ、ダセェな。そう思っていると、あいつは溜息をひとつ吐き、こっちにくるように促した。俺はもう、それを断れない。だって、とっくにそういう風に躾けられてしまっているから。
「ほら、おいで」
促されるままに、ソファへ近付く。そのまま顎を擽るように撫でられ、本当に犬か何かにでもなってしまったような錯覚を抱いた。
「選べないなら、お仕置きが必要か?」
「っ、やだ」
相手は明らかに怒っている。そんなことで、とは思うが、ここはなんとか穏便に済ませたい。お仕置きなんてされた日には、また性癖が歪む。
「謝るからっ」
「何に怒ってるかわかってんの?」
「それは……っ」
「エド、お前のしていることは理解してるつもりだ。でも、恋人をほっぽりだして他人と遊んでるのは違うだろ」
そう言われると、ぐうの音も出ない。そんなつもりはなかったけれど、確かにこちらにも非があるような気がしてくる。
「……それは悪ぃ」
「わかったならいいんだ。連絡が全然来ないから心配したんだぞ?」
「悪かったって……なぁ、これ外して……」
首輪をカリカリ引っ掻きながら言えば、またくいっと引っ張られる。加減されているのかそこまで苦しくはないけど、外してほしいのは確かだ。許して欲しくて縋り付けば、「それとこれとは話が別だな」と囁かれる。
どうやらあいつは全然許してないみたいだった。リードを引っ張るとそのまま力尽くでソファに押し倒される。きゅっと目を瞑ると、べろっと唇を舐められた。
「んんっ、」
「ほら、口開けろよ」
そう言われて恐る恐る口を開けると、肉厚な舌が割り込んでくる。
「はぁ、っ……んんっ」
驚いて上擦った声を上げながら、口内を貪られた。いつものとろとろに甘やかすようなキスと何かが違う乱暴なそれに、少し興奮している自分がいて嫌になる。
そんな気分じゃなかったのに、すでに興奮で勃ち上がった陰茎を布の上から撫でられ、身体が震えた。
「はぁっ、これじゃ興奮してんの丸わかりだな」
「んんっ……うっせぇっ」
ゆっくりスキニーと下着を膝まで降ろされ、陰茎が外気に触れる。いつの間にか用意されたローションを指に絡ませると、そのまま後孔に突っ込まれる。
「っぅ!そんなっ、いきなりっ……」
「お仕置きだって言ったろ?」
「だからって、んあっ!」
拡げるようにナカを撫で回され、思わず声が出る。そりゃあ、そこを撫でられたら気持ちいいけども。でも、頭がついて来ない。それなのにぐちゅぐちゅと音を立てて指を出し入れされ、身体がどんどん熱を持つのがわかる。
こんなんじゃ、変態って言われたって否定が出来ねぇ。
「っ!ぅ、あ……、まって、そこだめっ!」
あいつの指が前立腺を捉えた。ぎゅっと後孔を締め付けながら、なんとか刺激から逃れようと藻掻くが、襲いかかってくる快感の波に飲まれどうにもならない。
「んうっ、はぁっ!あっ、ルークぅ……」
「そんな目で見ても駄目だぞ」
「あっ、ああっ……!」
あいつの服にしがみつき、喘ぐ。いつの間にか増やされた指がごりごりと前立腺を抉った。気持ちが良くって蕩かされてしまう。でも、イクには足りなくてほとんど無意識にあいつの腕に陰茎を擦り付けた。
「こら、何勝手に気持ち良くなってんだ?」
「だって!、イけないっ!」
「……悪い子だな」
あいつはそう言うと、その辺にあったリボンであっという間に陰茎を結ばれてしまった。少し不格好な蝶々結びが、身体が跳ねる度にひらひら揺れる。
「っ!ばかぁっ!」
「だからお仕置きだって」
縁を拡げるように撫でられじわじわと追い詰められていく。イキたい、そればかりが頭をよぎり、許しを請う。
「ごめんなさっ、!許してっ!」
「……もう少し付き合えよ」
あいつはそう言うと、にっこりと笑った。
「るーくっ、これ外してっ」
あの後柔らかくなった後孔にバイブを差し込まれ、ハーフパンツを着せられた俺はあいつに促されるまま、外に連れ出されていた。
気付けば深夜になっていたのでそれだけが救いか。ただ、ここはメトロシティ。夜だろうがなんだろうがなんやかんや人通りは多い。リードは外してくれたが、首輪はそのままでフードを深く被り、なんとか隠していた。
誰か顔見知りにでも会ったら終わる。こんなの、見つかるわけにはいかない。力の入らない足を何とか立たせて、何処かに向かっているルークについて行く。
「ぐっ、ぅ……♡」
動く度にナカをごりごりと抉るバイブに、腰が抜けそうになる。でも、出したくても陰茎の根元を縛られているから出せなくて苦しい。腹ん中で熱がぐるぐる回っている。おかしくなりそうだ。
「ほらエド、我慢出来るよな?」
「っ、う♡でき……ないっ」
「出来るだろ?……もう少しだから頑張れよ」
そう言われ歩くのを急かされる。一体何処を目指しているんだろう。考えようにも、頭がうまく働かない。
「んんっ♡だめっ……止めてっ、いくっ……イッちゃう……♡」
あいつに縋りつきながら、なるべく小さな声で言えばにっこりと微笑まれ、耳元で囁かれた。
「イッちまえよ」
「くぅんっ♡〜〜〜〜っ!♡」
思わずしゃがみ込み、中イキをキメる。頭にバチバチと電力が流れて、ぼろぼろと涙が溢れていく。気持ちいい、外で気持ちよくなるなんて、こんなの変なクセが付く。
「良くできました」
手を差し出され立ち上がるのを促される。くそっ、後で覚えてろよ、なんて思いながら立ち上り、睨み返せば額にキスを落とされた。誰かが見ていたらどうするんだ。
「ばかぁっ、あぁ……っ♡」
「可愛い……顔蕩けてんぞ」
そのまま何度も足を止めながらも連れてこられたのは公園だった。深夜ということもあって人が疎らな公園を、薄暗い方へと歩いていく。もう限界だ。気持ちいい以外なんも考えられねぇ。何度目かもわからない絶頂をキメながら、林のような所に手を引かれる。
「……っ、!はぁ……♡」
「ははっ、気持ち良さそうじゃん。これじゃあお仕置きにならないな」
「っ、う、♡ナカの止めてっ、おかしくなる、から♡」
人気はないが、なるべく声を押さえ絞り出すように言うと、木に手を付くよう促された。言われた通りにすると、あいつはズルリと下着ごとハーフパンツをずり下げた。嗚呼、やっと解放される。木に爪を食い込ませ、大きな刺激に備える。
蠢くバイブをゆっくり引き抜かれたかと思えば、悪戯に奥まで突き入れられ、大きい声が出そうになるのを口を押さえてなんとか耐えた。
「んぎぃっ、♡♡ん゛ぁ゛……!♡♡っぐぅ〜〜〜〜!♡♡……、だしたいっ、せーし……出したい♡♡」
「こんなことされて、可哀想にな」
「てめぇがしたんだろっ、ばかぁ♡♡」
「今外してやるから」
陰茎に食い込んだリボンを引っ張られ、それがするりと解けていく。ぽたぽたと陰茎から勢いのない白濁が零れ落ち、土に染み込んでいく。楽になれる。そう思った瞬間、あいつはバイブを引き抜くとその辺に投げ捨てた。すぐに後孔に熱い物を押し当てられる。見ずともわかる。あいつの陰茎だ。
「ここれっ♡♡すんの?♡♡」
「エドだって待てねぇだろ?」
散々玩具で嬲っといて、待てるわけねぇだろ、馬鹿。
ほとんど無意識に腰を揺らすと、口を押さえていた片手で拡げながら「来て」とだけ誘った。
「っ!飛ぶんじゃねぇぞ?」
あいつの大きい手が俺の口を塞ぐ。あっと思った瞬間、バキバキの陰茎が一気に差し込まれ、目の前がチカチカと明滅した。
「ん゛ぐ〜〜〜〜っ!!♡♡♡」
高められた前立腺を、あいつの陰茎がごりごりと押し潰す。気持ちが良い。息をすることも忘れ、深い深い快楽に身を堕としていく。意識を手放し掛けたが、ガンガン腰を打ちつけられ衝撃で目を覚ました。
「ナカ、気持ちいいか?」
「むぐっ、♡♡ん゛ん゛〜〜〜〜っ!!♡♡」
こくこくと頷くことしか出来ず、乱暴に揺さぶられ口からだらだらと唾液を垂らす。やべぇ、良すぎる。外なのを忘れそうになったその時、誰かの話し声が聞こえて身体が跳ねた。見れば、やんちゃそうな若い3人組が近くを歩いていたのだ。流石にあいつも動きを止めたので安心しつつも、状況は変わらない。
こんなとこ見られたら俺もルークも終わりだ。
ぶわっと額に汗が滲む。はやく通り過ぎてくれ!そう願っていると、一人が物音に気付いたのか足を止めた。
「なんか音しねぇ?」
緊張で目眩がする。見るな、気付くな。そう思っていると、何を思ったかあいつが動きを再開させた。さっきのような勢いのあるそれでなく、ゆっくりと奥を舐るような動きに、深く感じ入る。ぽたぽたと、潮なのか精なのかわからない液体が土に染み込んでいく。イッている、ずっと。
「あ?気のせいだろ。それよりもあの動画見たかよ」
「お前そればっかだなぁ」
笑い声を響かせながら3人組は遠のいていった。ホッとしたのも束の間、陰茎の先端がぐぽっと嫌な音を立てて結腸にめり込んだ。
「〜〜〜〜っ!!♡♡♡んぐ〜〜〜〜っ!♡♡♡」
「声、聞けねぇの残念だなぁ……後で家でもう一回しような」
絶倫のくそ馬鹿が。溶け切った頭の中でそう罵る。嗚呼、結腸苛められんの気持ち良すぎてもう駄目だ。息も出来ねぇし、落ちる。
「はぁっ……!おら、受け止めろよっ」
「っ、ぐぅ〜〜〜〜っ!!♡♡♡」
腹の奥にびゅくびゅくマーキングされている感覚に酔いしれながら、意識を手放した。
「……」
「お、起きたか?」
「水、寄こせ」
頭痛で起きると、あいつがミネラルウォーターを飲んでいたので強請りながら、身体を起こす。口移しで飲まされる水が身体に染みる。ものすごく気だるい。そりゃあそうか、あんだけ激しくヤッてりゃそうもなる。
結局あの後、引き摺られるようにして家に帰るなり玄関でクソほど犯された訳だが。
「で、気は済んだかよ」
「その……悪い……」
ガラガラの喉で絞り出すように声を出しながら聞く。申し訳なさそうにしょんぼりされると、怒る気力も無くなるってもんだ。絶倫の大馬鹿野郎。
「ばぁか」
「……スミマセン」
「チッ……今度からちゃんとかまってやるよ」
そう呟くと、何かを言われる前に寝転ぶ。逃げる様に掛け布団を被れば、そのまま抱き締められる。労るように身体を撫でられうとうとし始めると、布団の中にあいつが入ってきた。
「ごめんな」
「ん、……別にいい」
太い腕に抱き締められながら、眠りについた。