ルクエド
俺は多分あいつ、ルークのことが好きだ。
多分ってのは、体験したことがない感情で困惑が大きいから。だって、考えられないだろ。俺が、あいつの事が好きだなんて。
あいつのどこが良いんだって聞かれても、俺はちゃんと答えられないだろう。気付いたら目で追っていたとか、妙に格好良く見えたり、思うことはだいたいそんなことばかりだ。だから、あいつとどうなりたいだとかはなかったんだ。
「そのはずだったのにな」
俺の気も知らないで、ベッドで酔い潰れてぐーすか寝ているあいつを見ながら独り言を呟く。靴は適当に脱がせてその辺に揃えて置いておいた。これなら大丈夫だろう。
溜息を一つ吐く。知らないままでいれたらよかったのに。そしたらきっと、今だってこんな行き場のない思いを抱える必要はなかったはずだ。
「おら、送り届けたからな。もう俺といるときは酔い潰れんなよ!」
「うおっ、うるせっ」
聞こえるようにわざわざ耳元で言ってやれば、そう反応が返ってきた。ざまぁみろ、そのまま寝てろ。などと思いながら部屋を出ようとすると、手を力任せに引っ張られる。
急に引っ張られたもんだからバランスを崩して、気付けば寝転がっているあいつの腕の中にいた。
「はっ?何しやがる」
「今日はもう遅いんだし泊まってけよ」
「なっ、うるせぇぞ酔っ払い!」
ぎゅうっと抱きしめられ、柄にもなく心臓がドキドキする。抱きしめられた程度でこれかよ、なんて思いながら押し退けようとするが、全然引き剥がせない。
「そんな逃げんなよ。減るもんじゃないだろ?」
「っ、減る!何かが減る気がする!」
後酒臭ぇ、暑苦しいしうざい。そう思う反面、少し嬉しく思う自分がいて頭を抱えた。逃げようにも逃げられない、顔が近い。それで……。
ふっと少しカサついた唇が触れてくる。どこにって?唇にだ。今、キスされたんだと気付いた瞬間、かあっと顔が赤くなるのが自分でもわかった。
「なっ、!」
「はは、初心だな。可愛い」
そうやってにっこり笑うと、あいつはそのまま眠りに落ちていった。残された俺はと言うと、何故今キスされたのかをぐるぐる悩みながら頭を抱える羽目になった。だって、あんなのずるい。誰だって、逃げられそうにない状況で好きな奴からそんなことされたら頭の中がぐちゃぐちゃになるだろ?
「くそっ、なんだってんだ……」
しょうがない、あいつが俺のことを離すまで微睡んでいよう。そっと目を閉じ、あいつの胸に擦り寄る。このくらいなら許されるだろう。
とくん、とくんとあいつの鼓動が聞こえる。それに耳を傾けながら、温もりを求めて抱き締め返した。
それから数週間が経った。あの日は結局離してくれることはなく、気付いたら自分も寝てしまっていた。寝具が変わってしまうと眠れないタイプなのに朝までぐっすりだったのは、きっとあいつのそばで安心したからなのだろう。
そして今日、あいつはまたやった。止めとけって言ったのに、ばかばか酒を飲んで酔っ払うと、家まで送ってくれと頼んできたのである。
「またかよ……」
そう呟きながらあいつを家まで引き摺りながら連れて行くと、適当にあいつの荷物を弄り鍵を見つけ、扉を開ける。リビングのソファに酔っ払いを座らせてキッチンの冷蔵庫を漁る。見付けたミネラルウォーターを取ると、今日はまだ意識のあるあいつの隣に座り、ボトルを手渡した。
「勝手に冷蔵庫漁ったからな。後、酔い潰れるまで飲むなって、この間も言ったろ」
「それはごめん。……エドといると楽しくてさ、ついな」
「ついじゃねぇよ、ばぁか」
内心喜びつつも、いくらなんでも頻度が高くないか?と思う。ルークは本来ちゃんと自分がどのくらい飲めるのか分かっている男だ。それがこれだと言うことは、俺の知らない所で何かあったのかもしれない。
「何か悩みでもあるのか?てめぇ、そんなんじゃなかったろ」
「いや、ちょっとな」
その言い方に少し腹が立つ。俺には言えないことなのかよ、なんて思いつつあいつの顔を覗き込んだ。
「んな細かいとこまで聞く気はねぇよ。悩んでんだろ?」
「……俺さ、好きな奴が出来たんだ」
思わず絶句する。好きな奴が出来たのか。そっか。頭が真っ白になって、黙りこくりそうになるのをなんとか声を絞り出し「そうかよ」とだけ相槌を打った。
「そいつに告白しようか悩んでるんだ」
その言葉に、ぎゅっと心が締め付けられる。そんな、と思うと同時に、やっぱりなと言う気持ちが勝つ。だって、こんな良い男に好いた女の一人もいないわけがないじゃないか。
「いいじゃん。しちまえよ、告白。てめぇなら相手だって喜ぶだろ?」
何か続けて言おうとしたあいつの言葉を遮り、そう吐き捨てる。これが失恋って奴か、なんて思いながら、好都合だと自分に言い聞かせ立ち上がると、ぽかんとしているあいつに向かって続ける。
「そしたら、俺と会ってる時間もそいつに使ってやれよ」
じゃあな、と続け、家を出ようと動き出す。何か言いかけているのが聞こえたが、気にせずにそのまま逃げるようにあいつの家を飛び出した。
何度も掛かってくる電話やメッセージを適当にあしらい、遊びの誘いも断った。だって、こうすれは嫌でも関心が他に行くだろ?別に俺でなくてもいいんだろうから。
友人と呼べる人間だって沢山いるし、あいつの人柄なら、恋の相手もきっと喜ぶだろう。
「で、俺のところに来たってわけ?」
迷惑そうなのを隠すつもりもなく表情に出しながら、ラシードが言う。一応言っておくと、たまたまナイシャールに用事があったからで別に会いに来た訳では無いのだが。
どうやら、他人から見てもわかるくらい酷い顔をしているらしく、問い詰められてつい全部素直に白状してしまったのだった。
「俺が言えたことじゃないんだけどさぁ、一回ちゃんと話し合ったほうが良いよ?それ」
「何を話し合うってんだよ」
「ルークって、爆発したら怖いからさぁ」
「だから何をだよ」
本当に何を言おうとしているのかがわからない。だって、俺は何も悪いことはしてないだろ?なのに何を話し合うって言うんだ、とさえ思う。
「んー、だってさ、何も言う事聞かないで出てきちゃって今に至るわけでしょ?向こうからしたらそれこそなんで?ってなると思うんだけど」
「聞いたってしょうがねぇだろ」
「んー、拗れてるなぁ」
眉間を押さえながらそう言うラシードを、首を傾げながら眺めていると、ふと、びりっと殺気を感じて振り返る。
「よう、エド。久し振りだな」
「っ、ルーク」
今1番会いたくない相手がそこにいた。ここにいるはずなんてないのに。てっきりラシードが連絡でもしたのかと視線を戻せば、青ざめた彼は首を横に振った。じゃあなんで、なんて思いながらも自然に見えるように振る舞う。
「前会ってからそんな間あいてねぇだろ」
「……そうか?」
顔は微笑んでいるが、明らかに怒っているのがわかる。なんで怒ってるんだよ、なんて思っているとあいつが口を開いた。
「散々逃げ回りやがって」
「別に逃げてねぇだろ」
「逃げてんだろ?」
そうやって言い合っていると、間にラシードが割って入ってきた。
「とにかく!2人ともちゃんと話し合いなよ!喧嘩しててもしょうがないでしょ?」
別に喧嘩してねぇよ、と言いかけるが、傍から見たら喧嘩に見えるかと考えを改める。
はぁ、と溜息を一つ吐き、心を落ち着かせるとあいつに向き合い、口を開いた。
「何しに来たんだよ」
「お前に会いに来たんだよ」
向こうもラシードの言葉で落ち着いたのか、殺気は何処かに行ってしまっていた。まぁそれでも怒っていることは変わりないけども。
「なんで」
「エドが話しを聞かないで逃げ回るから」
「別に逃げてなんか……」
「じゃあなんで会わないなんて言い出したんだよ」
「それはてめぇが……」
好きな奴がいるとか言い出したからだろ。そう続けると、あいつは溜息を一つ吐いた。
「それが自分だとか考えないわけ?」
「はぁ?」
今なんて言った?聞き間違いかと思ってもう一度あいつの顔を見る。その表情は、何処か寂しそうに見える。
「用事は済んだのか?」
「まだ……」
「じゃあ、それが済んだら戻って来い」
逃げんなよ?と付け加えて言うとあいつは何か銀色の物を投げつけてきた。咄嗟にキャッチすると、それはキーホルダーの付いた鍵だった。
「それ、家の合鍵!」
そうしてそのまま走り去ってしまった。その背中を見送りながら、思う。
本当にただ会いに来ただけなのかよ。フットワークが軽すぎだろ。いやまぁ、そういう奴は他にもいるか、なんて思いながらラシードの方を見ると「逃げないでちゃんと話し合うんだよ?」と釘を刺されてしまった。
仕方ない、とっとと用事を済ませて帰ろう。疲れたような表情のラシードに礼を言って別れると、合鍵を眺める。
「期待しても、いいんだよな?」
それからナイシャールでの用事を済ませ、メトロシティに戻るとすっかり大人しくなったあいつにメッセージを送る。
『今こっち着いた』
時間的にはまだ仕事中だろう。すぐに返信は返ってこないと思っていると、数分後には返信が返ってきた。サボりか。
『おかえり。今日はもうすぐ上がれるから家で待っててくれ』
返信返すのが早ぇよ、なんて思いながら微笑む。やっぱり、俺はあいつのことが好きだ。どうしようもないくらい、好きだ。
すぐにでも会いたくて、家ではなくトレセンの方向へ歩き出す。もうすぐなんだろ?じゃあ出てくるまで外で待っててもいいよな。
トレセンに着いてみれば、ちらほら人が帰り始めているタイミングだった。入れ違いになってないよな、と少し不安になりながらそわそわしていると、疎らな人々の合間にあいつを見付けた。
ゆっくり近付けば、あいつも気付いたのか目が合う。嗚呼、今だけ時間が止まればいいのになんて思うのは流石に乙女が過ぎるか。
「おかえり」
「……ただいま。後、仕事お疲れ」
「ありがとう」
少し気まずいと感じながらも、挨拶を返す。照れたってしょうがないし、また行き違うのだけはごめんだ。
「飯、後で適当にデリバリー頼もうか。それでいいか?」
「おう、それでいい」
腹は減ってるけど、今はそれより話がしたい。嗚呼、まだ合鍵を貰っただけなのに浮足立っているのが自分でも分かる。流石にその意味がわからないほど子供ではないのだ。
先に歩くあいつの背中を、見失わないように追う。時折振り返るあいつと目が合って、その度につい視線を逸らすのを何度か繰り返せば、あいつの家に着いた。
「あっ、」
「ん?どうした?」
「合鍵……使ってみたい」
鍵を開けようとするあいつに、途切れ途切れに言う。何言ってんだと、ちょっと恥ずかしくなりながら呟けば、ははっと笑った後「どうぞ?」と言ってその場を譲ってくれた。
嬉しくなってポケットから鍵を取り出すと、鍵穴に差し込む。ぎこちなく回せばかちゃりと音がして、鍵が開く。
「嬉しそうにしやがって」
「悪いかよ」
「いや、渡して良かったなって思っただけ」
扉を開き、中に招き入れられる。こうやってちゃんとこの家に来るのも久し振りだ。だって、最近は酔い潰れたあいつを引き摺ってきてばかりだったから。
「おじゃまします」
「はいよ」
招かれるまま、リビングへ通されると、ソファに座るよう促された。素直にそのまま座ると、隣にあいつが座ってくる。
なんだか、緊張するな。と柄にもなく縮こまっていると、あいつが本題を話し始めた。
「えーっと、どこから話すかな。まず、なんで逃げ回ってたんだよ?」
「だから逃げ回ってねぇ。てめぇが好きな奴がいるからって言い出したんだろ?」
それが自分であると思えるほど、俺は自分に自信がない。誰かを愛するのも、誰かに愛されるのも慣れていないから。
「あー、そうだったな」
あいつがこっちに向き直る。見たこともないような真剣な表情で、だ。
「なぁエド、俺はな?お前のことが好きなんだよ」
「っ、」
それは確かに自分が欲しかった言葉だった。
「逃げんなよ?」
「逃げねぇよっ、」
「で、返事は?嫌なら嫌って言ってくれ」
そう言われ、思わず拳を握り締める。恥ずかしいけど、だけど言葉にしないと。
「俺は……俺だって、ルークのことが好きだ」
そう相手に聞こえるように言うと、そのまま抱き着いた。勝手に流れてくる涙が、嬉しいからなのかなんなのか分からないでいると、ぎゅっと抱きしめられ、背中を擦られた。
「勿体付けずにもっと早く言ってやれば良かったな。ごめんな」
「別に、大丈夫」
「なんか、遠回りしちまったな、俺達。後でラシードにも謝んねぇと……泣き止んだか?」
「泣いてねぇ!」
「いやそれは流石に無理があるだろ……ぐずぐずなくせに」
テーブルの上にあったティッシュを手渡され、涙を拭い一息つく。肩に擦り寄り、ぎゅうっと抱きしめ返せばあいつが頭を撫でてきた。なんだか擽ったいけど、嫌ではない。
「なあ、俺達って恋人?」
「……エドがいいなら」
「嫌なわけねぇだろ、ばぁか」
お互い至近距離でくすっと笑う。砂糖みたいに甘い時間がゆっくり流れて、通り過ぎていく。1秒1秒が惜しくて、小さな声で「恋人らしいこと、したい」と呟けば、あいつは眉間を押さえた。
「なんか俺、変なこと言った?」
「……いや、可愛いなって思っただけ」
言ってはみたものの、恋人らしいことってなんだろうと思う。抱きしめ、は今してるし、手を繋ぐとか?でも、こんなことも知らない子供だとは絶対に思われたくない。
「いいのか?」
「いいよ、お前になら何されても」
「っ、あんま煽んなよ」
あいつの顔がゆっくり近付いてくる。唇と唇が触れ合って、それで……。
初めてのキスは涙の味がした。
感触を確かめるように、何度も何度も口づけをされる。耳の縁をなぞるように撫でられ、身体がぴくんと跳ねた。
「っ、」
「はぁっ、可愛いな。口開けられるか?」
「ん、わかった」
言われた通り口を開ければ、にゅるりと舌が入り込んで来る。びっくりして硬直していると、舌で歯列をなぞられぞわぞわと鳥肌が立つ。でも、あいつのだと思うと不思議と嫌じゃない。
「ふっ、ぅ……ぁっ」
「っ、ちゃんと鼻で息しろよ」
「はぁっ、はぁっ……むずかしいっ、」
「何度もしてやるから、慣れような」
割れ物にでも触るように、優しく優しく蕩かされていく。唾液が口の端から漏れて、顎を伝って落ちていく。それさえ気持ちが良くて、あいつの服にしがみついた。酸欠で頭がふわふわする。
「はーっ、はーっ……はずかしっ」
「これがオトナのキス。気持ちいいか?」
肩で息をしながら、こくんと頷く。おとなのきす、きもちがいい。だって、それをしてくれるってことは、俺のこと大人扱いしてくれているってことだろ?と嬉しく思う。
もう一度して欲しくて、自分から唇を重ねる。あいつの唇を舐めれば、そのまま吸い付かれた。エロい音がして、また気持ち良いのがじわじわ迫り寄ってくる。
「ふぅっ、ぅ……ぁっ、んんっ」
「はぁっ、あーもう、可愛い。抱きてぇ……」
必死で息を整えながら、首を傾げる。抱くってのが何のことなのか、知らないほど子供ではない。要はセックス、だろ?
「……、抱けよ」
「っ、」
セックスは男と女でするものだ。じゃあ、男同士ならどうするんだろう。それを具体的にどうするのか、俺は知らない。でも……。
「ルークになら何されてもいいから」
そう囁やけば、あいつの表情が変わった。ファイトの時のような、荒々しい獣のそれに変わる。
でもすぐにいつもの調子に戻っちまった。
「駄目だ……、もっと大事にしたいんだよ」
「しゃらくせぇっ!勃たせてるくせに何言ってんだ!
」
そう言いながら、あいつの股間で主張しているものを撫でる。平均サイズなんてわかんないけど、それが大きいことくらいはわかる。
「……悪い」
「ちっ、謝んなよ。なぁ……覚悟は出来てるから、……抱いて欲しい」
「……、わかった」
少し悩んだ後、あいつは了承すると俺を抱きかかえた。浮遊感に思わずしがみつくと、そのままベッドルームへ連れて行かれる。つい数週間前、キスをされたベッドにゆっくり降ろされると、あいつが覆い被さって来た。
「本当にいいんだな?」
「うるせぇ、いい加減覚悟決めろよっ!」
「後で文句言うなよ?」
言わねぇよ、と口を開こうとすると、そのまま唇にキスを落とされる。啄むようなそれでなく、始めっから深いオトナのキスをされ、せっかく落ち着いてきた息がまた上がってきた。
「はぁっ、んんっ……」
それでだけでなく、あいつの温かい手が身体を撫で回してくる。脇腹を撫でられ擽ったくてつい身動ぎをすれば、そこを何度も何度も、壊れ物を扱うように優しく撫でられ、ぴくぴくと身体が跳ねた。
「ちゅ、……ん、ふぁっ!」
「はぁっ、はは……可愛い」
「うっせぇ!」
まるで自分の身体じゃないみたいに言うことを聞かない身体を撫で回され、俺の知らないことをどんどん教えられていく。
唐突に胸の突起に手が伸びて、くるくると輪郭を撫でられた。
「んぅ、なんかそこっ、おかしいっ」
「お?良い反応。流石にまだそんなに感じないと思うけど、そのうちこっちだけでもイケるようにしような」
そう言いながら、マッサージでもするように胸全体を揉みしだかれ、ぞわぞわと鳥肌が立つ。
それだけなのに、気持ち良さがじんわりと広がってきて、怖くなってしがみつけばふふっと笑われた。
「やっ、わらうなぁっ!」
「初心だなぁって思ってさ」
耳まで赤く染めながら、少しずつ暴かれていく。勃ち上がった突起をぐにぐにと苛められ、なんとも言えない感覚に困惑していると、またキスを落とされた。
「んんっ、う……っ、ふぁっ!」
「はぁ……、ちゅっ、ふふっ」
「ばかぁっ!そこ、やだっ」
「気持ち良くて?」
「わかんねぇっ……」
ぎゅっと、あいつの服を握る手に力が入る。自分の手で触ってもこうはならない自信があるのに、あいつの手ってだけで触られたところが悦んで仕方がない。
「それとも、こっちがいいか?」
「っ、ひゃっ……」
スキニー越しに、既に勃ち上がった陰茎を撫でられ、身体を震わせる。急な刺激に、驚いて声を上げると、興奮しきったあいつと目が合う。
「脱がせるぞ?」
こくんと小さく頷くと、すぐにスキニーと下着を一緒に脱がされた。あいつの目の前に、甘く勃ち上がった陰茎がまろび出る。雫を垂らすそれを間近で観察され、周知に顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「っ、あんままじまじ見んなっ」
「見ない訳無いだろ?こんなエロいの」
「やっ、息当たるっ、」
擽ったくて思わず声を上げると、そのままあいつは陰茎をぱくりと咥え込んだ。敏感な先端が、熱い粘膜に包みこまれ、舌でざりざりと削るように刺激される。
「んあっ、あっ……ぅ!てめっ、そんなとこっ!」
初めての感覚に、口から勝手に嬌声が漏れ出た。これは初心者には刺激が強すぎる。すぐにでも出てしまいそうで、でもそれは恥ずかしくって奥歯をぐっと噛みしめる。
「はぁっ、あぅ……!んんっ!」
「きもちい?」
しゃぶりながらそう聞かれ、こくこくと頷く。もう余裕なんかとっくに無くて、熱が身体ん中でぐるぐる出る場所を探してでもいるようだった。溶けてしまう、そう思いながら離して欲しくてあいつの頭を掴む。
「ひぃ、あっ、んんっ!それ、やばっ!」
裏筋をつーっと舌でなぞられ、身体が震える。駄目だ、これ以上は我慢できそうにない。
「いっ、やぁっ!あっ、ぅ!」
じゅるっと先走りを吸われ、あっという間に達してしまった。びゅくびゅくと勢い良くあいつの口内に精を吐き出す。それを残すことなく飲み干され、目尻に涙が浮かんだ。
「はーっ、はーっ……」
「ん、ごちそうさま」
そう言うと、あいつは陰茎からぱっと口を離した。頭がぼーっとして、何も考えられない。短い人生で、一番気持ちよかったかもしれないとまで思う。
「はは、蕩けてら」
「っ、ぅ……ばぁか」
頬を優しく撫でられ、思わず擦り寄る。温かい手に安心感を抱きながら、同時に続きを期待してしまう俺を見てあいつは舌舐めずりをした。
「最初は辛いかもだけど我慢できるか?」
「できるぅ……我慢、するからっ、」
めちゃくちゃにして欲しい。そんな事を口走った気がする。もう、恥も何も無い。持て余す熱をどうしたらいいのかわからなくって、あいつの背中に手を回す。
「息するの、忘れんなよ?」
あいつはポケットから何かの小袋を取り出すと口で開けた。中からとろとろした液体が出てきて、それがあいつの手のひらに広がっていく。何をされるのかわからなくて身構えていると、あいつの指が後孔に伸ばされる。
嗚呼、そこ使うんだ。
そう思ったけど、ガキ扱いされたくなくって黙った。
ゆっくりと身体の中に異物が飲み込まれていく。違和感はあるけど、思ったよりも大丈夫そうだ。
「っ、ぅ……、なんか、へんな感じ」
「そりゃあ尻に指挿入れてんだから当たり前だろ」
それもそうか。だって、何かを挿入れる場所じゃねぇもん。でも、そこって気持ちいいんだろうか?少し不安になっていると、指がある場所を掠めた。瞬間、身体が勝手に跳ねる。
「見付けた」
「っ!なにっ!」
「前立腺。ここ撫でられると気持ち良くなれんだよ」
ぜんりつせん、なんだそれ。でも、そこを押されると、びりびりと感じたことのない快感が身体を駆け抜けていく。
気持ち良くなれる場所。それが信じられなくって、それでも確かに気持ち良くてあいつの背中にがりがり爪を立てる。
「あ゛っ、……なっ、ん゛!」
「はぁ、可愛い。よかったな、才能あるよ」
「うれしくな、い!っんあ゛」
「抜く時の方が良さそうだな」
「っ!言うなっ、」
恥ずかしいこと好き勝手言いやがって。でも当たってる。確かに抜くときのほうがぞわぞわ鳥肌が立って、気持ちいい気がする。
「ほら、たくさん気持ちよくなろうな」
「あ゛ぅっ!そこばっかっ!ごりごりしないてぇっ♡」
媚びきった声ばかりが口から溢れていく。萎えかけていた陰茎が硬さを取り戻し、ぷるぷると震えていた。
指でナカを拡げるように動かされ、それさえ気持ちが良くて狂いそうになる。
「はっ♡はっ♡、きもちいいけど、だせないっ♡」
「んー、まだ無理だよなぁ。じゃあ前も触ってやるよ」
「んぎぃっ♡」
先走りでべしょべしょになったそこを手で扱かれ、思わず反り返る。気持ちが良いに頭が支配されて、ヘコヘコと腰を揺らせばあいつがごくりと生唾を飲んだ。
「きもちいっ♡あ゛っ、わかんなくなるぅ♡」
「はは、後ろで気持ちよくなるの覚えような♡」
耳元で熱っぽく囁かれ、それにさえ感じる。後ろ、気持ちが良い。教え込まれるように、何度も何度も指を出し入れされ、絶頂をキメる。
「来るっ、来ちゃう!♡あ゛〜〜〜っ、♡」
もはやどちらの刺激でイったのかもわからない。あいつの手の中にびゅくびゅくと精を吐き出し、身体を脱力させる。それを許さないと言わんばかりに陰茎を容赦なく扱かれ、頭がおかしくなりそうな快感に襲われた。
「がっ♡あ゛っ、ん゛っ!♡はげしいっ♡」
「激しいの、好きだろ?」
嗚呼、全部バレてる。隠し事なんて出来ないんだと身体で教え込まれていく。
「指、増やせそうだな」
後孔を弄り回していた指がゆっくり増やされ、圧迫感に思わず呻く。多少拡がったとはいえ、まだまだこんなんじゃあいつのを挿入するなんて無理だ。
俺だって、あいつを気持ちよくしたい。
「はぁっ♡なぁ、ルークのも、気持ちよくしたい♡」
「っ、俺のことは気にしないでいいんだぞ?」
「やだっ、やられてばっかじゃ、フェアじゃねぇっ」
力の入らない身体を踏ん張って、何とか起き上がろうとすると、しょうがないなと言わんばかりに指を引き抜かれた。
「んんっ♡」
「なら、俺がやったように舐めれるか?」
「っ、やってみる」
頷きながらズボンを下げ、あいつの陰茎を取り出せば、目の前に俺のとは比べ物にならないほど大きなそれが現れた。
驚いて凝視していると、口に先走りを擦り付けられる。
「ほら、やってみな」
「ん、下手でも怒んなよ?」
「教えてやるよ」
顎を撫でられ、ぶわっと恥ずかしさで顔が赤くなるのが自分でもわかった。されたようにすればいいんだよな?と、先端にしゃぶりつく。
「んんっ、♡」
しょっぱくてちょっと苦くて、お世辞にも美味しいとは言えないけど、嫌じゃない。滲み出るそれを舌で舐め取りながら、教えを乞うようにあいつを見上げる。
「そのまま苦しくないとこまで咥えてみな。咥えきれないとこは指で刺激して」
言われた通りに、無理のない程度に陰茎を飲み込むも、大きすぎて半分も飲み込めなかった。でかすぎんだよ、と苛つきながらも飲み込みきれない部分を手で刺激すれば、先走りの量が増える。
「そうそう、偉い偉い」
「んっ♡」
頭を撫でられ、嗚咽が漏れる。さり気なく後孔に指を差し込まれ、身体が強張った。さっきとは違ったところが擦れて、勝手に腰が揺れる。
「んんぅ……っ♡」
「っ、」
口に溜まった唾液と先走りを飲み込む為に喉を動かすと、あいつが小さく呻いた。なるほど、こうすれば気持ちいいのかと、意識して動かしたことのない筋肉を動かす。
「上手いな、っやっぱり才能あるよ」
そんなこと言われても、嬉しくない。そう思いながら、じゅぽじゅぽと出し入れを繰り返す。
苦しいのと気持ちいいのが混ざり合って、俺を追い詰めてくる。どっちがどうなのかさえ、もう分からない。ドロドロに溶けて一緒くたになってしまった。
後孔をきゅうきゅうと締め付けながら必死に奉仕すれば、その時は来た。
「はぁっ、そろそろ出すぞ」
あいつの吐息にさえ興奮するのだからもうどうしようもない。あいつがそうしたようにじゅるっと吸い付けば、口の中にドロドロした物がびゅくびゅくと吐き出された。
「っ♡」
俺のより量の多いそれを、必死で飲み込む。喉に絡んで噎せそうになるのを何とか堪えながら、ゆっくり飲み干した。まじぃけど、あいつを気持ち良く出来たのが嬉しくて思わず微笑む。
「飲めたか?」
「ん、」
口を開いて飲み切ったことをアピールすれば、頭を撫でられた。こうすればいいんだ、と次するときの事を思って後孔を締め付ける。
「流石に挿入らなそうだな……今日は素股にしようか」
そう呟きながら、あいつは指を引き抜いた。素股ってなんだ?と問いかければ「股に挟むんだよ」と返って来る。
「やだぁ、ナカ欲しい♡」
じくじく疼く後孔を、それでごりごり刺激して欲しいなんて思う。でも、まだまだ拡げないと挿入らないのもわかる。ぐずる俺を宥めながら、あいつの陰茎が俺の陰茎に乗せられた。
「今日はお預け、な?」
無理させたくないんだよ。と続けられるとこれ以上何も言えなかった。ゆっくりそれを挟み込むと、なんだか繋がっているような気がする。
「そうそう、ちょっとずつ動かすからな?」
「うん、っ、はぁ♡」
先走りに塗れた陰茎同士がぶつかって、擦れて気持ちが良い。ぱんぱんと肌と肌がぶつかる音がして、あいつの背中に手を回す。
「んぅ、♡あ゛っ♡きもちいっ♡」
「俺も気持ちいいよ」
首筋にじゅっと吸い付かれながら、腰を動かされる。切なくて気持ちよくて、無意識に腰を揺らしながらキスを強請れば噛み付くような勢いで唇にしゃぶりつかれる。お互いのを舐めたことなんか忘れて、なんとかついていこうと必死に舌を絡めた。
「んんっ♡はぅ♡、ちゅっ♡」
頭ん中が気持ちいいでいっぱいになって、なんの涙かわからないそれが頬を伝って落ちていく。
俺、泣いてる。なんでだろ。
「ねぇルーク、好きって言って」
「っ、エド!好きだ」
「へへっ、俺も♡」
これが幸せっていうのかな、なんてぼんやり思いながらぎゅうっと抱き着く。
「ああっ!♡もっ、いっちゃう♡」
「っ、もうちょっと頑張れるか?」
「はぁっ♡がんばるっ♡」
あいつの腰の動きが早くなる。頑張ってそれを挟み込みながら、奥歯を噛み締め言われた通りに我慢した。気持ちよくて溶けそうだ。
「もっ、むりぃ♡いくっ♡でちゃう♡」
「ふーっ、俺も出るっ」
「〜〜〜〜っ!♡♡」
我慢出来ず、先に果てると少し薄くなった精で腹が汚れる。あいつはと言うと、そのまま脚の隙間から陰茎を引き抜き、後孔にピッタリと押し付けた。
先端がほんのちょっとだけ挿入ってくる。
「っ〜〜〜〜!♡♡」
その瞬間、腹ん中にびゅくびゅくと精を吐き出された。中に出される感覚を教え込まれながら、長い余韻を味わう。
「っエド、好きだ」
それに答えるように、唇に噛み付いた。