エド受け




 やっと手に入れた。
 薄暗い地下鉄のホームの影から、柵に腰掛けている彼を見る。
 逸る気持ちを抑えて箱を開けると、中身を取り出した。出てきたのは俗に言うオナホール。でも、ただのオナホではない。なんでも超技術を使った魔法のオナホで、離れた人の孔の感覚を繋げることができるのだ。
 俺は今からこれを使って、一目惚れした彼を落とそうと思う。



 その日は朝から碌なことがなかった。朝の星座占いは最下位だし、街に出たら出たで雨には降られるわ、喧嘩は売られるわ(――まあこれはいつものことか)、靴紐は千切れるわで散々である。
 まぁそんな日もあるわなと、なるべく気にしないように、今日という日が終わるのを待つ。
 スマホを弄りながら座っていると、ふと、尻に違和感を感じた。

「?」

 何かが尻の……孔を触っている。
 虫でも入り込んだのかと、立ち上がってスキニーの上から確認するが、特に変わったことは無さそうだった。
 
「……気のせいか?」

 柵に座り直し、スマホに視線を戻す。
 すると今度は何か湿り気のあるざらざらしたものが後孔を撫でた。

「ひぃっ!?」

 気持ち悪さからぞわぞわと鳥肌が立つ。その感触は、人間の舌のようだった。
 慌てて周りを見るが、特に変わったことは無さそうだ。そうしている内に、後孔のひだをひとつひとつ確かめるように舐め回される。気持ち悪ぃ、なんだってんだ。

「くそっ!なんなんだよ!」

 立ち上がり、得体のしれないものから逃れようと歩き出そうとしたその時、後孔に舌らしき物が入り込んできた。

「っ、ぐぅ……っ、」

 唾液をたっぷり絡めた舌が、激しく出し入れされ咄嗟にその場にへたり込む。全く意味がわからない。俺は誰に何をされているのか。

「、っ……やっ、うぅ……」

 つぽつぽと出し入れする嫌な感覚がする。問題なのは、気持ち悪いだけのはずのそれが少しずつ性感に変わってきていることだった。
 孔を拡げるように舐め回され、思わず手に爪を食い込ませる。なんで、と思えば思うほど追い詰められていく感覚におかしくなりそうだった。

「ひぃっ、う……んんっ、」

 周りに助けを求めようにも、なんで言えば良いのか?言ったところで、緩く陰茎を勃てている俺のほうが変態みたいじゃないか。そう思い、ぎゅっと口を噤む。
 そんな思いとは裏腹に、後孔を舐める舌は一向に止まることなく俺を責め立てる。

「はぁっ、んんあっ……やっ、だ……」

 ちゅぽっと嫌な音を立てて舌が引き抜かれる。やっと終わったのか、と安心仕掛けたが、すぐ指を差し込まれ自分が甘かったことを思い知る。
 指が好き勝手に後孔を苛める。ふと、何かに指が掠め、瞬間目の前が真っ白になった。

「へぁっ???」

 なんだこれは。困惑していると、その場所を何度も押し潰され、感じたことのない気持ち良さに頭が混乱する。 

「やぁっ、何だよこれ……っ!んあっ……!」

 自分の口から聞いたこともないような声が飛び出してきて嫌悪感が煽られる。
 意味がわからない。俺は誰に何をされているんだ。と、ぐちゃぐちゃの感情に涙がぽつりぽつりと溢れていった。

「はぁっ……はぁっ、ああっ、んんっ……」

 怖くて情け無くて、冷たい床にガリガリ爪を立てる。 
 一本の指だったのが、いつの間にか二本に増やされていた。先程の気持ち良い場所を責め立てられ、額から汗が伝う。気持ちがいい、でも気持ち悪い。ちぐはぐな感情に頭がダメになりそうだった。

「やだぁ……っ、あっ……、ぅっ!〜〜〜〜っ!」

 堪らず果てる。ナカの指をぎゅうぎゅう締め付けながら声にならない声を上げた。
 蹲って呻いていると、何か大きいものが後孔に当てられる。それがなんなのか、自分にはわからなかった。
 メリメリと音を立てて熱いものが入ってくる。先程とは比べ物にならないほどの質量に、目眩がして唇がガチガチ震えた。
 痛くはないが腹が苦しい。

「っ……う゛う〜〜〜〜っ!うえっ……っ」

 容赦なく出入りしていく何かに乱される。胃液がせり上がってきて思わずびちゃびちゃと音を立てて嘔吐した。
 苦しい、早く終わってくれ。そう思いながら耐えていると、あの気持ち良い場所にそれが掠める。

「うあっ?あんっ、うう……!やだぁ!」

 瞬間、耐え難い快感が爆発してわけもわからずに果てた。精液が下着に張り付いて気持ちが悪い。
 ナカに挿入されたそれが、関係なく出し入れされる。その度に身体が壊れたみたいにビクついた。
 気持ちがいい、もう何もわからない。わかりたくない。自分で吐いた物を避けて倒れ込むと、のたうち回る。
 瞬間、腹の奥に何かが出された感触がした。びゅくびゅくと吐き出される得体のしれないそれをただ受け止めるしか出来なかった。
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