エド受け



 眼の前に俺がいる。何処だかもわからない真っ白い空間に、童話にでも出てきそうなベッド――天蓋付きっていうんだっけか。に腰掛けた俺が、こちらを見ていた。
 違うのは色くらいだろうか。黒に近い銀髪に褐色の肌、紫色のジャケットを肩が出るように纏ったそいつは、驚いて固まっている俺の事などお構い無しに欠伸を一つすると、おいでと言わんばかりに手招きをする。
 気味が悪い。最初に思ったのはそれだった。ドッペルゲンガーってあるだろ。もうひとりの自分を見ると死ぬってやつ。アレが頭の中をぐるぐる回っていた。こんなところで死ぬわけにはいかない。
 様子を見ていると、そいつはため息を吐きこちらに近付いてきた。咄嗟に構えれば俺と同じ声で言う。

「よう、何化け物でも見たような顔してんだよ」

「もう一人の自分とか化け物以外なんだってんだ」

 吐き捨てるように言えば、手を叩いて笑われたので純粋に腹が立つ。てめぇ、と青筋を立てて何時でも殴れるように構えていると、あっという間に距離を詰められベッドへ投げ飛ばされ、そのまま両手首と両足を紫色の光に拘束される。
 技も同じかよと言えば「当たり前だろ。俺とお前は同じなんだから」と返された。

「どうせドッペルゲンガーとか言い出すんだろ。何度目だと思ってんだ。別に死なねぇから安心しろよ」

 考えていることまで当てられ、思わず顔が赤くなるのが分かる。近付いてくるそいつになんとか抵抗する術はないかと考えていると、デコピンをされた。

「いってぇ」

「真面目だねぇ」

「うるせっ、ぶっ殺すぞ」

「無理だからやめとけよ」

 くつくつと笑いながら馬乗りになりのしかかってくるそいつに、気持ち悪いんだよと吐き捨てながら暴れる。自由に効かない身体で出来ることなんか殆どないが、抵抗しないのは考えられなかった。

「活きが良いな。で、お前童貞?」

「はぁっ!?」

「ああ、反応でわかったわ」

 脈絡のない問に思わず過剰に反応する。その質問になんの意味があるんだクソがと言い返せば、そのまま唇を奪われた。
 状況を把握できず呆けていると、抵抗がないのを良いことにリップ音を立てて唇を吸われる。気持ち悪さからぞわぞわと鳥肌が立ち、文句を言おうと開けた口に今度は舌が入り込んできた。
 こちらの舌を味わうように舐られ、思わず口を閉じる。ガリっと嫌な音がして、口内から舌が引き抜かれた。

「痛ってぇな」

「な、何すんだてめぇ!」

「んだよ、キスもハジメテか?」

 くつくつと心底面白そうに笑うそいつに、頭おかしいんじゃねぇのと言えば「正常だよ」と返される。
 正常な奴が同じ顔した奴にキスなんかしねぇだろと口から出かけたが飲み込み、なんとか逃げる方法はないかと模索する。

「せっかくなんだから楽しんだ方がいいぜ?」

 耳元でそう囁きながら、脇腹をスルスル撫でられ嫌悪感から死ねよと思わず叫んだ。
 そいつは特に気にするでもなく、そのままスキニーに手をかける。じたじたとのたうち何とか逃れようとするが、手首の拘束はびくともせずどうにもならない。

「ふざけんなっ!」

「別に取って食おうってわけじゃねぇんだからよ」

「っ、るせぇ殺すぞ!」

 下着の上から陰茎を撫でられ思わず身体が揺れる。そのまま下着の上から舐られ、口から声が漏れそうになるのを奥歯を噛み締めてなんとか耐えた。
 気持ち悪さとは裏腹に、与えられる快感の芽に身体が勝手に反応して嫌気が差す。

「はは、ちょっと触っただけでこれかよ」

「ぐっ、クソがよ……っ」

 悔しさから思わず唸るが、そいつは特に気にすることなく下着を下ろすと緩く勃ちかけた陰茎を扱いてきた。急な刺激に耐えていた声が口から漏れ出る。

「っ、うあっ……やめろっ!」
 
「やめるわけねぇだろ」

 見せつけるようにゆっくりと手を動かされ、気持ち良さに身体が反る。そいつは心底面白そうにくつくつと笑うと、先端を口に含んだ。温かくぬるぬるした感触に思わずぎゅっと目を瞑る。

「あっ……やっ、嫌だっ……!」

 漏れ出た声が自分の物だととても信じられない。首を横に振りなんとか快楽から逃れようとするが、拘束された状態ではどうしようもなかった。認めたくはないが、気持ちがいい。頭が溶けそうになる。

「んっ、いいだろ?」

「っ……クソっ、」

 裏筋を舐られ、はじめての感覚に身体が震えた。拘束された拳を握り込み、なんとか達さないよう気張るが正直時間の問題だろう。
 ゆっくり喉の奥まで飲み込まれると、また違った感覚にすぐにでも達してしまいそうになる。

「あっ!ぅ、……んんっ、」

 そのままじゅるじゅると音を立てて吸われ、呆気なく果ててしまった。口内にびゅくびゅくと勢い良く精を吐き出す。そいつは少し呻いたがゆっくり飲み下すと口を開いて飲みきったことをアピールしてきた。

「ごちそうさん」
 
「はっ、しねっ!」

 中々整わない息をそのままに、精一杯の罵倒を投げる。
 なんでこんなことになったのか。いくら考えたとて答えが出ることのない疑問を反芻しながらそいつを睨みつければ、ふっと微笑まれた。

「ふふ、ホント耐性ねぇな」

 腹を撫でながら言うそいつにあるわけねぇだろと言えば「童貞だもんな」と返され顔が赤くなるのがわかった。とことん馬鹿にしやがって。後で絶対殴る、と心に誓う。

「その童貞、貰ってやるよ」

「な、何言って……」

 は?っと思って見ていると、そいつは舌なめずりをした後、俺の上でスキニーと下着を一緒に下ろし適当に放り投げた。

「はっ、準備してやるからちょっと待ってろ」

 見せつけるように指を舐る。赤い舌が先程の愛撫を思い出させるように絡みつくのを見て、なんとも言えない感情が芽生える。一頻り唾液で濡らすと、後孔にゆっくりした動きで埋めていく。初めから2本咥え込んだそこは、自分のとは――まぁ己の尻の孔など見る機会もないのでわからないが。全然違う物のように見えた。

「んんあっ♡っ……男同士だとココ使うんだよ」

 拡げるように指を動かしながら喘ぐそいつから目が離せない。嫌悪感はある。だがそれと同時に好奇心が顔を出す。
 緩く勃ちあがる陰茎は先端から透明な液体をダラダラと垂れ流し、シーツを汚していた。そこを弄るのはそんなに良いのか、とも思いながら。

「あっ、うっ♡すげぇ見てくるじゃん、」

「うるせっ……お前が見せてんだろ」

「ああっ、んっ♡そっちの方がお前も楽しいだろ?」

 そうこうしている内に3本目を咥え込んだそこが拡がる光景に、思わず生唾を飲み込む。出し入れを繰り返しながら喘ぐその様を、少しでもエロいと思ってしまった自分を殴りたい。

「もうそろそろいいか、んんっ♡ほら、食ってやるからしっかり見とけよ?」

「っ、うぐっ」

 そう言って指を引き抜くと、そのまま俺の陰茎を握り後孔に押し付ける。先端があたたかい肉に飲まれ、気持ち良さからうめき声が漏れ出た。

「はぁっ、はぁ♡んんっ、気持ちいいかよ?」

 陰茎をゆっくり飲み込んでいく孔から視線がそらせない。時々良い所に当たるのか身体をビクつかせながら、陰茎の大きさに慣らすように腰を回し動かれ、気持ちよさが押し寄せる。 

「っ、それやべぇっ」

「あっ、う♡ははっ、良さそうじゃねぇか。へばんじゃねぇぞ♡」

「はーっ、クソっ……!」

 陰茎をぎゅうぎゅうと締め付け蠢く肉壁に、すぐにでも果てそうになる。こちらが動けないのをいい事に、好き勝手に動き始めるそいつを思わず睨みつける。

「ああっ♡♡はーっ♡きもちいっ♡♡いいとこ当たるっ♡♡」

「うう、……あっ、うっ」

「あん♡うう〜っ♡♡あ――――っ!!♡♡」

 じゅぷじゅぷといやらしい音を立てて出し入れを繰り返され、気持ち良さに頭がくらくらする。
 そいつは一頻り出し入れを楽しむと、最奥まで一気に飲み込み、そのまま果てたようだった。自身の陰茎からとろとろと白濁とした精を吐き出し、身体を一際大きく揺らすとぎゅうっと後孔を締め付けてくる。絡みつく肉壁に、精液を搾り取られる。堪らず精を吐き出すと、余韻を味わっているそいつが小さく呻いた。

「ふあっ♡♡あうっお腹熱いっ♡♡」
 
「はーっ、はーっ、ふざけんなっ」

「んんんっ♡♡童貞卒業おめでとさん♡♡♡」

 啄むようなキスをされ、思わず顔をしかめる。中々整わない息を落ち着かせながら身動ぎをすると、両手両足の拘束が気付けば緩くなっていた。糸のようなそれを引き千切り、そいつの腰を掴む。

「ああっ♡♡」

「くそったれがよ、絶対泣かす!」

「はっ、出来るもんならやってみろよ♡♡」

 ごちゅっと音を立てて最奥に叩きつけるように押し入れれば、そいつの陰茎から透明な液体が吹き出す。それが何かもわからないし、なんであろうとどうでもいい。今はただこいつを泣かせないと気がすまない。

「ん゛ん゛っ、♡♡あ゛っ♡♡ふかいっ、すぐイッちゃう♡♡」

 最奥をこじ開けるように押し込めば、ぐぽっと嫌な音を立てて、先端が飲み込まれる。瞬間、そいつは身体を大きく反らし、叫びに近い声を上げながら感じ入ると、こちらに倒れかかってきた。

「おらっ、泣けよっ」

「あははっ、誰が泣くかよっ♡♡いあっ、あ゛あ゛――――っ♡♡きもちいっ♡♡♡ん゛あ゛あ゛〜〜っ♡♡♡」

 ナカが媚びるように絡みついてくる。発言とは裏腹に、そいつの目には生理的な涙が伝っていた。
 泣かせた!いけ好かない奴との勝負に勝った嬉しさに、思わず笑みが溢れる。
 腰を掴みごちゅごちゅと音を立てて責め立てれば、ぎゅうぎゅうとナカを締め付けながら派手にイキ散らしていた。

「――――っ♡♡♡はっ♡♡きもちいっ♡♡そこすごいっ♡♡あ゛あ゛――――っ♡♡♡」

「う〜〜〜っ!」

 最奥に叩きつけるように精を吐き出せば、それすら気持ちがいいのか、いやいやと首を横に振りながら、陰茎からは透明な液体を壊れたように吹き出していた。

「っ♡♡――――っ♡♡」

「はーっ!はーっ……」

「っ、はー、よかったろ?んんっ……♡♡」

 疲れからか瞼が重い。身体を動かすのが気怠く、宙を眺めていると、早くも復活したそいつが、己のナカから陰茎を引き抜いた。
 蓋を失った後孔から、ナカに出した精液がこぽりと音を立てて垂れ流れていくのを見て、妙な感情が沸き起こる。

「っ、何見てんだよ♡」

「うるせぇっ……」

 強い眠気に襲われていると、そいつが俺の顔を覗き込んできた。何かを言っているが、今一歩聞き取れない。

「……時間か。また来いよ♡」

 辛うじて聞き取れた言葉に、誰が来るかよと言おうとしたがそのまま意識を手放した。




 はっと目が覚める。起き上がりスマホを見ると、5時を過ぎたあたりだった。酷い悪夢を見ていた気がして頭を抱える。薄らぼんやり暗い潜伏先の倉庫をスマホの光を頼りに動き出す。
 もうすぐ夜明けだ。夢の内容なんかに構っていられるかと立ち上がり、早朝の街へ繰り出すのだった。

12/14ページ