ラシエド



 ロウソクの火の灯りが揺らめく。香り付きのそれは、甘い香りを部屋中に散らしていて。普段なら気にも留めないが、恋人の匂いの一部だと思うと、心がじんわり熱くなる。
 ロウソクの灯りしかない、薄暗い部屋で俺達はお互いの目を見つめ合っていた。まだ慣れないその視線に、心臓の鼓動は速くなる一方で。余裕そうに佇むアイツにほんの少し腹を立てる。

「早く触れよ」

 すでに半裸の俺はそう言うとそのまま、きっと高いんだろう肌触りの良いシーツの海に身を沈める。

「えっ、いいの?」

「おう、来いよ」

 そう言えば、そのまま覆いかぶさられた。この時の、普段は見せない獣のようにギラついた目が好きだ。俺にしか向けないそれに、どうしようもなく気分が高められる。

「途中でやめてはナシだからね?」

「わかってるっつの」

 脇腹に手が伸びる。割れ物でも触るみたいに優しくなぞられ、くすぐったさから笑いがこぼれた。
 どちらからでもなく、お互いの唇を合わせる。はじめは優しく触れるようなキスを。そして徐々に深めていけば、口の端から色のある吐息が漏れた。
 熱い肉厚な舌を口の間から差し込まれ、口内を蹂躙される。不慣れながら差し出した舌を絡めて、お互いを夢中で貪りあった。

「はーっ、……キス、上手くなったね」

「んんっ……こんだけされてたらそりゃあな」

「それもそうか」

 そう言ってへらっと笑うアイツから目が離せない。そのまま首筋に顔を埋められ、ちりっとした痛みが走る。また目立つところに跡を付けやがってなんて思いながら、仕返しにアイツの首筋に噛み付いた。

「ふふ、可愛い」

 そうしてまたキスを落とされる。まるで焦らされているみたいで、腹の奥がじくじくと疼く。早く先に進みたくて、布越しにあいつの陰茎に触れれば、そのまま手を取られ「それはまた後でね」と微笑まれた。
 さっきまで脇腹を撫でていた指先が胸の突起を捉える。輪郭をなぞられ身体が震えた。核に触れるか触れないかのぎりきりのところで焦らされ、目が離せなくなる。

「ここ、触ってほしい?」

「……ん、早く……ほしいっ」

「いいよ」

 こりこりと勃ちきった突起を押し潰され、気持ちよさが弾ける。口から媚びきった嬌声が漏れ、思わず首を横に振る。

「あっ……んん、」

 片方を口に含まれ、わざとらしくじゅっと音を立てて吸われた。舌先で弄ぶように捏ね回され、高められていく。触られ慣れて気付けば簡単に快感を拾うようになってしまったそこは、苛められれば苛められるほどに喜んだ。

「んあっ、はぁ……もっと……強くして……」

 途切れ途切れになんとか言葉を吐けば、にいっと微笑まれた。

「ふふ、ホントえっちになっちゃったね」

「誰のせいだと……」

「オレかな」

 そんなやり取りをしながら突起を甘く噛まれ、思わず腰が跳ねる。股の間に差し込まれた脚に、ほとんど無意識で擦り付けるように動かしてしまい、恥ずかしさから顔が赤くなった。
 まるで身体が蕩けでもしているように気持ちがいい。思わず縋り付くようにあいつの服を掴む。

「なあに?」

「はぁっ……、下、早くっ……ちょうだい」 

「それはまだ駄目。ここで気持ちよくなるところもっと見せてよ」

 胸で達しろとでも言いたいのか、そのまま突起を刺激され続ける。確かに気持ちがいいがそれだけでは足りなくて目に涙が浮かぶ。早く楽になりたい気持ちと、もっと酷くされたい気持ちの間で心が揺れていた。
 強弱をつけて胸を揉まれ、女のように感じている自分が恥ずかしい。

「んんっ!うあっ……んっ、」

「うん、とっても可愛い」

 そう言いながら首筋を吸われる。跡付けやがって、目立つからやめろって言ってるのになんて思いつつ。与えられる快感から逃れたくて脚をばたつかせれば、そのまま突起を甘噛みされ、思わず身体が震えた。

「やだぁ、噛まないでっ……ああっ、うう……っ」

「ほら、楽になりなよ」

「んああ――――っ!!」

 もう片方の突起も摘み上げられ、その時は来た。身体を反らしながら下着の中にびゅくびゅくと白濁とした液体を吐き出す。陰茎に布が貼り付いて気持ちが悪い。

「よくできました」

「はーっ……はーっ……、はやく下触れよぉ」

 耐えられなくて自分からスキニーと下着をずり下ろす。誘い方がわからず、あいつの手を取りすり寄ればぎゅっと抱きしめられた。

「あんまり煽らないでって。オレも我慢してるんだから」

「るせぇっ!お前のが早く欲しいって言ってんだよっ、」

「っ!」

 半ばキレ散らかしながら言い捨てると、脚を開き自分から後孔を拡げるように見せつける。
 すると急に余裕のなさそうになったあいつは、用意していたローションの蓋をあけ指に絡めると、早急に後孔に押し当てた。
 思わず息を呑む。何度抱かれてもこの瞬間は慣れない。異物感に眉間に皺を寄せながらも、ゆっくりと飲み込んでいく。

「なるべく優しくって思ったんだけど、これ以上は無理かも」

「ああっ……んんっ、早く抱けよ!」

 きゅうきゅうと指を締め付けながら、ほとんど無意識に腰を揺らす。あいつの背中に手を回しぎゅっと抱きつけば、唇を奪われる。なされるがままに舌を差し出せば、じゅるじゅると音を立てて吸われ、気持ち良さに頭が蕩けた。必死で舌に応えるように絡ませながら、ゆるく立ち上がった陰茎を扱かれ、うめき声を上げた。

「ふっ……エド、」

「あうっ、んんっ……はっ、ラシード……」

 急に耳元で名前を呼ばれ、思わず後孔を締め付ける。名前を呼び返せばにこっと微笑まれ、胸の中がじんわりと温かくなった。
 後孔を拡げるように出し入れされ、時折良いところを掠めて目の前がバチバチと明滅する。
 
「2本目挿入れるよ」

「いちいち言うんじゃねぇっ、あ゛あっ!」

 宣言通り2本目の指が挿入される。ぐりぐりと気持ちいいところを押し込まれ、思わず嬌声を上げる。快感に足の指が丸まりあいつの背中に爪を立てながらよがり狂う。

「ん゛ん゛!!あうぅ……そこ、きもちい……っ!ああ〜〜〜〜っ!!」

 じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てて出し入れされる指に翻弄される。気持ちが良くて頭が溶けそうだ。自分が何を口走っているのかもだんだんわからなくなっていく。名前を呼ばれながら首筋に噛み付かれ、2度目の絶頂を迎えた。

「エド……、可愛いよ」

「あ゛あ゛っ!!んあっ、おればっか……う゛う゛〜〜〜〜っ!」

 とろとろと陰茎から白濁が流れ落ちていく。息が上手くできずに、溺れているような感覚に眼の前が涙で歪む。喉を晒して喘ぐことしか出来ず、止まって欲しくて服を掴んだ。

「まって、あぐっ!はーっ……おく、さびしっ」

「うん、こんなもんかな。おまたせ」

 音を立てて指が引き抜かれる。すぐに熱いものが当てられ息を呑んだ。澄んだ綺麗な瞳に射抜かれて、心臓がドキリと高鳴る。
 ゆっくりと挿入されていく陰茎をきゅうきゅうと締め付けながら、キスが欲しくて自分から唇を押し当てばふふ、と微笑まれた。肉厚な舌が口内に侵入してきて貪られていく。触れているところ全てが気持ちが良くて、目を閉じる。
 良いところを雁首でこそぎ落とすように刺激され、目眩がして、陰茎から透明な液体が吹き出した。

「あ゛あ〜〜〜〜っ!!♡♡」

「っ、はは、えっち♡」

「お゛っ♡あ゛ぐっ……ンあ゛♡♡」

 そのまま奥まで挿入され、満たされた感覚に勝手に涙が落ちていく。それを舐め取られ、思わずナカをぎゅっと締め付けた。

「はっ♡とけちゃうっ♡♡♡」

「……っ、動くよ」
 
 じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てて出し入れされ、翻弄されていく。奥を突かれる度、眼の前が真っ白になり意識がとびかけるも、またすぐ来る衝撃に起こされる。気が狂いそうだと思った。

「ん゛ん゛っ♡♡あ゛あ゛〜〜っ♡♡まっ、激しいっ♡♡」

「はーっ、だってこうされたかったんだろ?」

「そう♡♡だけどぉっ……♡♡はっー♡♡ん゛っ♡お゛っ♡♡」

 せめてもの仕返しにと、あいつの背中をがりがりと引っ掻く。首を横に振りなんとか耐えようとするも何度目かもわからない絶頂を迎えた。
 奥をごちゅごちゅと突かれ、ぐぽっと嫌な音を立てて結腸に先端が挿入り込む。
 
「あ゛〜〜〜〜っ♡♡♡らしーどっ♡♡♡あ゛ぐっ♡♡らしーどっ!♡♡♡ずっといってりゅ♡♡」

「ふーっ、エド……好きだよ」

「っ――――!!♡♡♡」

 うわ言のようにあいつの名前を繰り返しながら、よがり狂う。何が何だかわからず、口の端から涎が垂れ流れていく。あいつの腰に足を絡め、ぎゅっと締め付ければナカであいつが果てた。びゅくびゅくと腹の奥で精液を出される感覚に酔いしれる。

「はーっ、はーっ……」

「――――っ♡♡はぁっ♡♡」

 お互いに荒い息を整えながら、どちらからともなく唇を合わせる。リップ音を立てて吸い付けば、あいつが「まだしてもいい?」と聞いてきて来たのでいつものようにへらっと笑いながら頷いてやった。
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