主♂エド
夜、部屋に帰ると、嗅ぎ慣れた甘い香りが充満していた。暗い部屋をスマホの明かりを頼りに電気のスイッチを押せば、ベッドの上にこんもりと服の山が出来ていた。
「ただいま、師匠」
声をかければ、服の山がびくりと揺れる。こんな極々普通なβの服でも巣作りするのか、と思いながら触れれば、中から不機嫌そうな師匠が出てきた。
「……おう」
「体調、大丈夫ですか?」
師匠は見た目や素質はαだが、実際はΩである。なんでも実験の副作用でそうなってしまったらしい彼は、俺の恋人だ。そう、なんの変哲もないβの俺の。
「やっぱり、市販の薬じゃキツそうですね」
「でもしょうがねぇだろ。病院なんざ行けねぇんだから」
身分上、病院にも行けない彼はヒートの時期になると、こうして俺の部屋でフェロモンもないだろう俺の服にまみれながら、強くもない薬で誤魔化しなんとか耐えている。それこそ、運命の番って奴が見つからない限り彼は一生苦しむんだろう。
それを考えて、心が軋む。俺がそれだったらどれだけ良かったことか。
「よいしょっと。ほら、おいで」
「ん」
ベッドに座り腕をひろげれば、もそもそと服の山から出てきてそのまま腕の中に収まった
。息が荒くしんどそうだ。ふわりと漂う甘い香りを吸い込みながら、口を開けるよう促す。素直に開かれた口内に舌を差し込んで貪れば、とろんと蕩けきった表情でそれを受け入れる彼に酷く興奮した。
可愛いと呟くと、もぞもぞと身動ぎをするのでそのまま押し倒す。首筋に顔を埋め、フェロモンを吸い込む。
「はーっ、良い匂い」
「恥ずかしいからあんま嗅ぐなっ」
彼からは食べ頃の果物のような、甘い芳香がする。その香りに酷く煽られるがそこは所詮β、理性は多少効くのでそこはよかったのかもしれない。
彼が少しでも楽になるように、無理せず抱かなければならない。Ωのフェロモンに当てられたαはとんでもないと聞く。そんなこと、させられるわけないじゃないか。
「触りますよ」
「ん、」
一人で弄っていたのか、すでにぷっくり膨らんだ胸の突起を優しく撫でる。
こりこりと押し潰す様に刺激しながらキスを落とせば、彼はシーツをぎゅっと掴み堪えていた。
ヒートの影響か、もう既にとろとろに蕩けている彼が愛おしい。
「はぁっ、うう……、あっ」
「ふふ、可愛い」
「かわいって言うなっ」
「可愛い以外の何物でもないですよ」
「バァカっ、ああっ!」
すべての反応が可愛くて、首筋に噛み付くように吸い跡を残しながら、両方の突起を抓る。大きく仰け反って感じ入っていたので、スキニー越しに陰茎に触れれば、じんわり湿っていた。軽くイッたのか、なんて思いながら下着ごと一緒に脱がせる。
「早く後ろ……欲しい」
「焦らないで、拡げなきゃ怪我しちゃいますよ」
「はぁ、少し弄ってたから、すぐ挿入ると思う」
脚を持ち上げ後孔をくぱっと手で拡げる彼の痴態に、下半身に熱が集まるのがわかった。
これはよくない、エロすぎる。それこそ鼻血が出そうなくらいに。
「だめ、俺にも触らせて?」
「お前しつこいからやだぁっ」
愛液で濡れそぼった後孔に指を這わせる。たしかに柔らかい。これならいけるかと2本の指を挿入すれば、半泣きになりながら首を横に振る彼を無視して膨らんだしこりを押し潰す。
「ああっ!それっ、やっ……すぐイッちゃうからぁ」
「ここ潰されるの好きですもんね。良いですよ、沢山イって?」
「う゛あっ!んん〜〜〜〜っ!」
耳元で囁やき、しこりをごりごり削るように刺激すれば、大袈裟に身体をビクつかせながら2度目の絶頂を迎えた。
陰茎からとろとろと白濁とした液体をこぼし余韻に酔いしれる彼にキスを落とす。
「ふふ、可愛い」
「あ゛っ、ううっ!……い゛っ、まって、……っ!」
「大丈夫だから、ね?」
「ん゛あ゛あ゛っ、やぁっ……あっ!」
ぎゅっと抱きしめながら、出し入れを繰り返す。その手を止めようと彼の腕が伸ばされるが、力が全然入っておらずなんの意味もなさなかった。
口の端から涎を垂れ流し感じ入る彼の良いところを、一定のリズムでとんとんと叩く。気持ちよさそうに閉じられた瞼にキスを落とし、指を引き抜いた。
「うあっ、ん゛っ、早く……奥っ」
「今あげますよ。後ろ向けます?」
「ん、わかった」
素直にもぞもぞと四つん這いになった彼を後ろから抱きしめる。無防備な項が目に入り、噛みつきたくなるのを我慢して舌を這わせた。
「んんっ、くすぐってぇ」
「……無防備すぎて心配になる」
「……お前だからだよ」
感動に思わず眉間に手を当てて上を見ていると、焦れた彼が早く、とせがんできた。言う通り陰茎を取り出すと、早く腹の中に挿入ってしまいたい欲を抑え、マーキングでもするかのように後孔に先端を擦り付ける。ごくりと生唾を飲み込んだ音が聞こえ、思わず微笑んだ。本当に可愛い人だ。
「ん゛ん゛、はっ……、焦らしてんじゃねぇよ」
「ふふ、可愛くてつい」
そう囁きながら、ゆっくり腰を進める。先端が熱い肉に飲まれ、味わいでもしているかのように収縮するそこに奥まで一気にぶち込みたくなるのをぐっと堪えつつ。
項に顔を埋め、甘い匂いを肺いっぱいに吸いこんだ。
「あ゛あっ、はいってきたぁ……」
うわ言のように呟く彼を後ろから抱きしめながら、溶けてしまいそうなくらい熱い肉壁を掻き分け押し進めていく。
たっぷり時間を掛けて最奥まで辿り着けば、息も絶え絶えに身体を震わせる彼の頭をそっと撫でる。
「っ、大丈夫ですか?」
「んん、だいじょぶ……、」
「……動きますよ」
陰茎をゆっくり引き抜きながら囁く。本当なら、今すぐにでもめちゃくちゃに犯してしまいたい。でも、同じくらい大切にしたい。俺から逃げられなくなるくらい、ドロドロにとろかしてやりたい。
「あ゛あ゛っ!うあっ、そこきもちぃ……っ」
うねるナカに腰を打ち付ける。良いところを雁首で抉るように刺激しながら奥まで挿入すれば、ぷしゃっと水音がした。潮を吹いたのだろうか、吸水性のあるシーツに、液体が飛び散っていた。
良い匂いのする項を舐りながら、容赦なく出し入れを繰り返す。
「はあっ、かわい……っ、」
「ひっ、う゛あっ!や゛ぁ゛っ、」
素直に感じ入る彼の腹をぐっと押せば、また違った感覚に肉壁が収縮する。搾り取られ等るような動きに、限界を感じズルリと陰茎を引き抜けば、白濁とした液体を尻にぶち撒けた。
「くっ、」
「ああっ……♡」
余韻で達したのか、彼の身体からくたっと力が抜ける。尻を突き出したような格好に、早くも陰茎が硬さを取り戻した。
「んあっ♡もっと、……ほしい」
蜜壺からとろとろと愛液を滴らせながら彼が誘う。もう一度、震える肉壁を掻き分け、良いところをどちゅどちゅと刺激すれば、彼は壊れたように何度も潮を吹きながら果てた。
「あ゛あ゛〜〜〜〜っ!♡♡」
「気持ちいいですねっ、」
可愛らしく震える彼を抱きしめ、項を噛まないように肩に歯を立てる。ナカが震え、持っていかれそうになるのをなんとか堪えた。
もっと、もっと味わっていたい。
「くっ……好きだ、好きなんです」
「ん゛っ♡う゛う゛、あっ♡♡俺もすき、すきだからっ♡♡」
うわ言のように好きと繰り返す彼の腰を掴んで、最奥に叩きつけるように腰を打ち付ける。ぱん、と肌と肌がぶつかる音と吐息が部屋に響き渡った。
「もっ、イクっ♡♡おっきいのきちゃうっ♡♡」
「イッていいですよ♡」
「はぁっ♡♡♡ん゛あ゛あ゛――――っ!♡♡」
そう囁けば、彼は陰茎から白濁とした液体を吐き出し果てた。ぎゅうぎゅうと波打つ彼のナカから慌てて陰茎を引き抜き、彼の精液の上に放つ。
そのままベッドに倒れ込んだ彼が、こちらを向きながら言った。
「はっ、はーっ……♡♡うなじかんでっ♡♡」
その瞬間頭に血が上って鼻血が出そうになるくらい興奮した。でもそれと同時に俺が噛んだところで……と言うマイナスな思いに支配される。だって、βとΩじゃ番にもなれないのに。
噛みつきたくなる衝動を、己の腕を噛んでなんとか堪える。傷口から血が滲んで、それに気付いた彼がぎょっとした。
「なっ、血出てっ」
「っ、誰にも渡したくない。もし、貴方に運命の番なんて現れたら……殺してしまうかもしれない」
言う気のなかった本音までついこぼれ落ちる。完全に自分本位でしかないそれに嫌気が差した。こんなことでは怖がらせて、なんなら嫌われてしまうかもしれない。
「……俺だって、お前がいい……っお前に噛まれたい」
俺の想像とは違って、絞り出すように呟かれた言葉に嬉しさが込み上げた。こんな俺でもいいんですか、と囁やけば小さく頷いたので思わずぎゅっと抱きしめる。
「噛んでもいいんですか?」
「何回も言わすんじゃねぇ……」
「あはは、嬉しい」
そっと項にキスを落とし、齧り付いた。