主♂エド
その日見かけた師匠はいつもの素肌が晒されたジャケット姿でなく、きっちりと着込んだ姿をしていた。
顔が良い分、素直に格好良いなと思う。普段も格好良いが、それはまあ置いておいて。
仲間と活動する時の彼はあのように光り輝いているのだろう。
誰かの希望なんだ、彼は。
二度目の恋に落ちる。そんな言葉がしっくり来た。それでも、俺がどんなに焦がれても絶体に手に入らないのだろう。まるで太陽みたいだなと思った。
居た堪れなくなって、こちらに気づかれる前に立ち去る。何故だか声を掛ける事ができなかったことを心のなかで謝りながら、気付いていないと良いなと思いつつ家へと急いだ。
それから暫く、師匠は家に顔を出さなかった。きっと忙しいのだろう。今までも何度かあったことだ。
何かメッセージを送ろうとも思ったが、何を言ったら良いのかわからず、向こうからメッセージが送られてきた時だけ当たり障りのない言葉を返す。
きっと不自然に思われているだろうなと思って、それでも自分がどうしたいのかわからなかった。
そこまできて、ようやくそれが嫉妬心なのだと気付く。どうしようもないな、と思った。だって、俺は師匠の活動を邪魔したくはないのだ。自分が枷になるのなら、それはあってはならない。今までだって気を付けてきたろう、と自分に言い聞かせるが、あの姿を思い返すと焦がれてしようがなかった。
それからまた暫くたった頃、部屋の扉を蹴破る勢いで師匠が帰ってきた。
あの時見た姿のままなのに気付いて驚きつつ。
「あ、おかえりなさい」
どこか苛ついている師匠に挨拶をすれば、胸ぐらを掴まれ力任せに壁に押し付けられる。
「てめぇいい加減にしろよ」
「ぐっ、何がですか?」
軋む身体の痛みに呻きながら、何処か悲しそうな彼の瞳を見つめ呟く。
「飽きたんなら、そう言えよ!」
「は……?そんな訳ないじゃないですか」
「じゃあなんなんだよ!いつものお前ならすぐメッセージだ電話だ掛けてくる癖に」
今にも泣き出しそうな彼に、ここまで来てようやく傷付けてしまったことに気付いた。嗚呼、それだけは気を付けていたのにと血の気が引く。
「っ、……ごめんなさい。嫉妬しました」
「何にだよ!」
胸ぐらを掴んでいた腕の力が少し緩んだので、手を伸ばし頬を撫でる。傷付けておきながら泣かないで欲しいなんて自己中だな、と思いながら。
「……貴方の仲間に。隣にいるのが俺でいいのか、わからなくなった。でも、貴方のことがどうしようもなく好きなんです。大切なんです」
素直に思ったことを言葉にしていく。格好悪いなと思いながらも、言う気のなかったことまでぼろぼろ零れていく。
「傷付けてしまってごめんなさい。好きです、好きなんですよ」
「……バァカ」
そのままぎゅっと抱きしめられる。帽子が床に落ちたのを見て、汚れるといけないななんで思いながら。
「嫌われたのかと思った」
「そんな訳ないじゃないですか。俺、エドくんが思ってる以上に惚れてるんですよ?」
ずびずびと鼻を啜っている彼の頭をたくさん謝りながら撫でる。心地よさそうに目を閉じる彼は、俺の横にいるいつもの彼と変わりなかった。
「その服だって格好良すぎて……その、えーっと」
「……んだよ」
「……ケガシタクナリマシタ」
「なんで片言になるんだよ」
表情が柔らかくなったのを見て少し安心する。ぎゅっと抱きしめかえしながら、久方ぶりの彼の匂いを吸い込む。いつもと違った香水のような匂いに、いろいろなことを思いながらも、心にしまい込んで。
どちらともなく唇を寄せ合う。リップ音を立てながら何度も吸えば、息の上がった彼が小さな小さな声で「抱いてほしい」と言ってきたので理性が飛びかけた。
「その前に!全部脱いで!シワになっちゃうから」
「良いだろ別に」
「良くない!」
渋々離れる彼にハンガーを渡しつつ、落ちた帽子のホコリを払う。あんな高そうな服、汚してしまった日には申し訳無さで爆発してしまう。
手袋を外し、ぎこちなく上着を脱いでいく彼を眺める。ネクタイを緩めたあたりで「あんま見んなよ」と言われたが、見ないなんで選択肢は無かった。
赤いシャツのボタンをゆっくり時間を掛けて外すと、いつも見せている美しい肉体が現れた。
「俺だけ脱ぐの嫌だ……」
「俺も脱ぎますから!」
ハンガーに掛けられた服達を壁にかけ、パーカーをその辺りに適当に投げ捨てながら言う。俺のはどうなろうがどうでもいい。
下着姿の彼を、我慢できずソファへ押し倒す。
首筋に吸い付き跡を残しながら横腹を撫でれば、彼がピクリと身体を揺らした。
「で、本当に抱いていいんですか?」
「……聞くなっ、」
「じゃあいただきます」
良く鍛えられた腹筋をなぞりながら、胸の突起に舌を這わせる。もう片方も抓ってやれば、躾けられた身体はそれだけでびくびくと震えた。
「あっ、やぁっ……!」
じゅっと音を立てて吸い上げると、堪らず声をあげる彼が愛しい。じらすように周りをなぞりながら触れば、敏感な彼は照れ隠しに顔を腕で隠してしまった。
久しぶりの彼の感触に、興奮が止まらず鼻血でもでてしまいそうだ。
「エドくん、好きですよ」
「んっ……俺だって……」
腕にキスを落としながら囁やけば、耳まで真っ赤にしながら消え入りそうな声で好きだと言われ、ギリギリ保っていた理性が吹き飛ぶ。
両腕を後ろに回されぎゅっと抱きしめられれば、堪らず彼の薄い唇に齧り付く。
「ふぁっ、……んんっはっ」
差し出された舌にしゃぶりつき、リップ音を鳴らす。お互いの舌を絡めながら味わい尽くしていると、背中を叩かれる。
いつになっても息継ぎが上手く出来ない彼は、顔を赤くしながらぜえぜえと肩で息をしていた。
「はーっはーっ、」
「ふふ、可愛い」
両方の突起を強く抓れば、いやいやと首を振るので耳元で「でも良いでしょ?」と問えば小さく頷いた。それを見て、今日は素直で可愛いなと思う。
「あー可愛い。反則だよそれ」
ついいつもより崩れた喋り方をしてしまったが、まあいいだろう。自分を取り繕っている余裕などとうになかった。
すでに緩く勃ちあがっている彼の陰茎を取り出し、容赦なく扱けば俺の肩を掴む手に力が入り、身体を反らして乱れる。
「ああっ!やっ、んんっ、……ふっ」
「気持ちいい?」
「んあっ、きもちい……っ!」
目をぎゅっと瞑り耐えている彼の額にキスを落としなから扱いていると、息も絶え絶えな彼が何かを伝えようとしているので耳を向ける。
「奥……っ、せつないからっ……早く欲し、いっ」
「はー……、ほんとえっち」
そのまま下着を下ろすと、脚を持ち上げる。先走りを指に絡め後孔を撫でれば、物欲しそうな顔でこちらを見てくるので、ふふっと微笑みながら額にキスを落とした。
ゆっくり時間を掛けて指を飲み込ませていけば、眉間に皺を寄せて異物感に耐えているので、萎えかけた陰茎を扱いてやる。
「うあっ、んんっ……あっ!」
「はは、……エドくん、好きですよ」
「うう、っ!んあっ!」
そう囁やけば後孔をキュッと締め付けてきたので、思わず微笑みがこぼれた。可愛さから思わず抱きしめれば、肉壁が蠢く。ナカを拡げるように掻き混ぜれば、いいところに当たったのか、嬌声が漏れ出た。
そのしこりを押し潰す様に刺激すれば、喉を晒して仰け反るのでその首筋に噛み付く。
「あ゛っ、そこぉ……それヤバいっ」
「気持ちいいね」
「きもちいっ、う゛〜〜っ」
指を増やししこりを挟み込むように刺激してやると、逃げようと腰を動かすので体重を掛けて逃さないようにしつつ。可愛いと声を掛ける度後孔をきゅうきゅう締め付ける彼が愛しかった。
「あっ、も、いいからっ……早くっ」
「まだ駄目ですよ」
ジュプジュプと卑猥な音を立てて抜き差しすれば、たまらず陰茎から白濁とした液体を吐き出し果てた。
早くナカに挿入れてしまいたい気持ちを抑えつつ、収縮する肉壁を楽しむように指で拡げる。
三本目が挿入るころには彼は肩まで赤く染めながらくたりと脱力してただただ快楽に溺れていた。
「うあっ……んんっ、あん……」
「そろそろ入るかな?」
「んん、あ゛っ……ほしいっ」
「ふふ、あげますよ」
ゆっくり引き抜けば、名残惜しそうにひくひく収縮とする後孔が目に毒だと思った。自分もいつの間にか余裕などどこかへ行ってしまっていた。
ズボンを下ろし、勃ちあがった陰茎を後孔に押し当てる。
「ああっ……きたぁ……」
うわ言のように呟く彼の薄い唇を奪う。わざとらしくリップ音を立てながら吸い付けばおずおずと舌を差し出されたので食らいつきながら、時折良いところに当たるのかくぐもった嬌声が口の端から唾液と共にこぼれ落ちていく。
「ん゛ん゛っ、はっ……あ゛っ」
「っ、……エドくん、好きです」
「んあっ、おれもっ、……んあっ、すき♡」
最奥まで辿り着くと、肉壁が陰茎に絡みついてきて、とてもじゃないが我慢できそうになかった。
ギリギリまでゆっくり引き抜くと、腰を叩きつける。肌と肌がぶつかる渇いた音が部屋に響いた。
「あ゛あ゛っ!♡♡すきっ♡♡ん゛っ♡♡すき♡♡
」
「あはは、可愛いっ」
焦点の合わない瞳で好きと連呼する彼が可愛過ぎて思わず額にキスを落とす。腰を強く掴みながら最奥を苛め抜けば、彼は鳴き叫びながらぷしゅっと潮を吹いた。
「あ゛――――っ!!♡♡♡きもちいっ!♡♡♡」
「ほら、更に奥、挿入れてほしいでしょ?」
ぐぷぐぷと酷い音を立てながら結腸に押し入ろうとすれば蕩けきった顔で「ほしい」と呟かれた。
ぐぽっと音を立てて、先端が結腸にはまり込む。瞬間、後ろに回されていた腕にぎゅっと力が入り、彼の頬に生理的な涙が伝っていく。
「――――っ!!♡♡ん゛あ゛あ゛っ♡♡きもちいっ、♡♡しんじゃう!!♡♡」
「んっ、気持ちいいね。ほら、ここまで挿入ってる」
「ぎぃっ♡♡それっ!!だめになる!!♡♡♡あ゛〜〜〜っ!!♡♡♡」
ぽこっと膨らんだ腹を人差し指と中指でぐりぐり押し込めば、半狂乱で乱れる。背中に爪ががりがりと食い込んで痛い。可愛いと囁きながら赤い跡を首筋に散らせばその度に身体を震わせ感じ入る。
「あ゛っ、う゛う゛〜〜〜っ♡♡♡」
「エドくんっ、好きです!」
「ぐっ、――――っ!♡♡♡おれも♡♡すきぃ♡♡♡あ゛ん゛っ♡♡♡――――っ!♡♡♡」
「くぅっ!」
肉壁が搾り取りでもするように収縮し、堪らず最奥に精液を吐きかける。
同じタイミングで果てたのか彼の陰茎から、白濁とした液体がダラダラと力なく流れ落ちていった。
「――――っ♡♡♡♡」
「はぁっ、大丈夫です?」
「だい……じょうぶにっ、♡♡みえんのかよっ♡♡」
息も絶え絶えにそう返してくる彼の首筋に噛み跡を残しながら、ゆっくり陰茎を引き抜けば、ナカからこぽりと精液がこぼれ落ちる。
「はぁっ♡んんっ♡」
「可愛かったですよ」
「っ、うるせぇ」
余韻に喘いでいる彼にそう囁やけば、力なく背中を叩かれた。そのまま唇を奪われたので、吸い返す。
「んんっ、……おい」
「はい?なんですか?」
「……俺はちゃんと、お前のことも仲間だと思ってるからな」
先程まで蕩けきった顔をしていたのが嘘みたいに真面目な顔で俺が欲しかった言葉を言われ、思わずぎゅっと抱きしめたのだった。