~原作前
車に揺られこと十数分。
俺達は隣町の三門市に来ていた。
「着いたわ。」
とある一軒家の前に停車する。
車の窓から見上げると、白を基調とした清潔感のある家屋が目に入った。
…どうでもいいが、前世との建物の差は未だ慣れない。
「かあさんのともだちんちだっけ?」
「ええ、昔からのね。二人子どもがいるのよ。歳も近かったはずだから、留と修と友達になれるかもしれないわね。」
ここで仲良くするのよ、とは言わないのが母さんのいいところだ。
こちらとしても、まだ会ってもいない母親の友達の子どもと仲良くできるかわからないのでありがたい。
車を駐車し、いんたーふぉんを押す。
中から「はーい。」という返事と共に扉が開いた。
「久し振り!待ちくたびれたよ〜!」
「時間ぴったりに来たはずよ。」
「も〜、相変わらずクールなんだから。…あ、その子達が香澄の双子ちゃん?」
「トメコです。」
「オサムです。」
名前を言ってぺこりと頭を下げる俺に倣い、修もぺこりと頭を下げる。
「や〜ん可愛い〜!私のことは気軽に美咲おばちゃんって呼んでね!」
ニコニコと人好きする笑顔を浮かべる母親の友人である美咲さん。
本当に母さんの友達か?
さっきっからころころ表情が変わって見てて面白い。
鉄面皮な母さんと並ぶと、温度差があり過ぎる。
北風と太陽かよ。
「私の子も紹介するわね!菜月〜秀次〜ちょっと来てー!」
美咲さんがそう呼び掛けると中から、小学生くらいの女の子と、幼稚園児くらいの男の子が出てきた。
女の子の方はこれまた人好きする笑顔を浮かべているが、男の子は女の子の背に隠れ表情が伺えない。
…なんだが前世の一年生達を思い出すな。
「えへへ実はずっとスタンバってましたー!私が菜月です!留ちゃん、修くんよろしくね!」
「よろしくおねがいします。」
「よおしくおねがいします。」
「すごーい!上手〜!」
「………。」
「………秀次〜…?」
「………。」
男の子は尚も押し黙ったままだ。
「ごめんなさいねぇ。この子ちょっと人見知り気味で…。」
なるほど。このくらいの齢の子なら無理もない。
しかし、うーん。
別に無理に仲良くする必要性はないが、美咲さんの様子を見るに、できたら仲良くして欲しいという気持ちがあるのだろう。
先程からそわそわと男の子と俺達を交互に見ている。
仕方ない。
ここは俺が助け舟を出すべきだろう。
修の手を引き、男の子に近付く。
「なぁ。」
男の子の肩がピクリと反応するが気にせず言葉を続ける。
「おにいちゃんのなまえ、」
「おしぇーてください!」
その言葉に男の子はそっと顔を出した。
「お、おにいちゃん…?しゅうが?」
「うん!」
満面の笑みで肯定する修に対し、男の子は「おにいちゃん」呼びが嬉しかったのか、途端にそのかんばせを綻ばせた。
「おにいちゃん…!おねえちゃん!しゅう、おにいちゃんだって!」
「良かったね。でも秀次、喜んでもいいけどさっき留ちゃんと修くんになんて聞かれてたんだっけ?」
「あ…。」
男の子は思い出したように俺達に向き直る。
緊張した面持ちだが、もう隠れることはなかった。
「えと、しゅうは、シュウジっていいます!」
「シュウジ……じゃあシュウにぃだ。」
「シュウにー?」
「シュウにぃはおにいちゃんだろ?シュウジとおにいちゃんをあわせてシュウにぃ。ナツねぇもナツキとおねえちゃんでナツねぇ。」
「!シュウにぃとナツねぇ!えへへへ、おにいちゃんとおねえちゃんできちゃったねトメ!」
「そうだな。」
修のお姉ちゃんは俺なんだけど…と思いつつ、言葉にはしない。
弟は素直に兄と姉ができたことを喜んでいるのだから、俺も一緒になって喜ばなくては。
何より菜月と秀次も喜んでいるようだ。
秀次の人見知りはすっかりなくなり、俺と修の手を取り早く遊ぼうと家に入ろうとする。
美咲も俺達に続き「もぅ!待ってよー!」と続き、母さん達も微笑ましげに笑いながら中に入った。
結果として俺の「お兄ちゃんと呼んでその気にさせよう」作戦は大成功を収めたが、唯一誤算だったのは、秀次の俺達への懐きっぷりである。
俺達が帰ると言っても「嫌だ」の一点張りで、服を離してくれないのだ。
母さん達はそんな様子も微笑ましげに見守っているが、本人からしたらたまったもんじゃない。
誰でもいいから助けてくれ!
「かえんないでぇ…ひっぐ…!」
「またあいにくるって!そんななくな!」
「シュウにぃだいじょぉぶ?」
「かわいいわぁ♡」
「同感。」
「私も混ざりたーい。」
「(いや、助けろよ…!)」
(三雲ツインズガチ勢爆誕。三輪先輩は幼馴染枠になってもらいました。)
俺達は隣町の三門市に来ていた。
「着いたわ。」
とある一軒家の前に停車する。
車の窓から見上げると、白を基調とした清潔感のある家屋が目に入った。
…どうでもいいが、前世との建物の差は未だ慣れない。
「かあさんのともだちんちだっけ?」
「ええ、昔からのね。二人子どもがいるのよ。歳も近かったはずだから、留と修と友達になれるかもしれないわね。」
ここで仲良くするのよ、とは言わないのが母さんのいいところだ。
こちらとしても、まだ会ってもいない母親の友達の子どもと仲良くできるかわからないのでありがたい。
車を駐車し、いんたーふぉんを押す。
中から「はーい。」という返事と共に扉が開いた。
「久し振り!待ちくたびれたよ〜!」
「時間ぴったりに来たはずよ。」
「も〜、相変わらずクールなんだから。…あ、その子達が香澄の双子ちゃん?」
「トメコです。」
「オサムです。」
名前を言ってぺこりと頭を下げる俺に倣い、修もぺこりと頭を下げる。
「や〜ん可愛い〜!私のことは気軽に美咲おばちゃんって呼んでね!」
ニコニコと人好きする笑顔を浮かべる母親の友人である美咲さん。
本当に母さんの友達か?
さっきっからころころ表情が変わって見てて面白い。
鉄面皮な母さんと並ぶと、温度差があり過ぎる。
北風と太陽かよ。
「私の子も紹介するわね!菜月〜秀次〜ちょっと来てー!」
美咲さんがそう呼び掛けると中から、小学生くらいの女の子と、幼稚園児くらいの男の子が出てきた。
女の子の方はこれまた人好きする笑顔を浮かべているが、男の子は女の子の背に隠れ表情が伺えない。
…なんだが前世の一年生達を思い出すな。
「えへへ実はずっとスタンバってましたー!私が菜月です!留ちゃん、修くんよろしくね!」
「よろしくおねがいします。」
「よおしくおねがいします。」
「すごーい!上手〜!」
「………。」
「………秀次〜…?」
「………。」
男の子は尚も押し黙ったままだ。
「ごめんなさいねぇ。この子ちょっと人見知り気味で…。」
なるほど。このくらいの齢の子なら無理もない。
しかし、うーん。
別に無理に仲良くする必要性はないが、美咲さんの様子を見るに、できたら仲良くして欲しいという気持ちがあるのだろう。
先程からそわそわと男の子と俺達を交互に見ている。
仕方ない。
ここは俺が助け舟を出すべきだろう。
修の手を引き、男の子に近付く。
「なぁ。」
男の子の肩がピクリと反応するが気にせず言葉を続ける。
「おにいちゃんのなまえ、」
「おしぇーてください!」
その言葉に男の子はそっと顔を出した。
「お、おにいちゃん…?しゅうが?」
「うん!」
満面の笑みで肯定する修に対し、男の子は「おにいちゃん」呼びが嬉しかったのか、途端にそのかんばせを綻ばせた。
「おにいちゃん…!おねえちゃん!しゅう、おにいちゃんだって!」
「良かったね。でも秀次、喜んでもいいけどさっき留ちゃんと修くんになんて聞かれてたんだっけ?」
「あ…。」
男の子は思い出したように俺達に向き直る。
緊張した面持ちだが、もう隠れることはなかった。
「えと、しゅうは、シュウジっていいます!」
「シュウジ……じゃあシュウにぃだ。」
「シュウにー?」
「シュウにぃはおにいちゃんだろ?シュウジとおにいちゃんをあわせてシュウにぃ。ナツねぇもナツキとおねえちゃんでナツねぇ。」
「!シュウにぃとナツねぇ!えへへへ、おにいちゃんとおねえちゃんできちゃったねトメ!」
「そうだな。」
修のお姉ちゃんは俺なんだけど…と思いつつ、言葉にはしない。
弟は素直に兄と姉ができたことを喜んでいるのだから、俺も一緒になって喜ばなくては。
何より菜月と秀次も喜んでいるようだ。
秀次の人見知りはすっかりなくなり、俺と修の手を取り早く遊ぼうと家に入ろうとする。
美咲も俺達に続き「もぅ!待ってよー!」と続き、母さん達も微笑ましげに笑いながら中に入った。
結果として俺の「お兄ちゃんと呼んでその気にさせよう」作戦は大成功を収めたが、唯一誤算だったのは、秀次の俺達への懐きっぷりである。
俺達が帰ると言っても「嫌だ」の一点張りで、服を離してくれないのだ。
母さん達はそんな様子も微笑ましげに見守っているが、本人からしたらたまったもんじゃない。
誰でもいいから助けてくれ!
「かえんないでぇ…ひっぐ…!」
「またあいにくるって!そんななくな!」
「シュウにぃだいじょぉぶ?」
「かわいいわぁ♡」
「同感。」
「私も混ざりたーい。」
「(いや、助けろよ…!)」
(三雲ツインズガチ勢爆誕。三輪先輩は幼馴染枠になってもらいました。)