このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

~原作前

「留子。」
「………………。」
「留子。」
「……………………………いやだ。」
「何故?」
「…………こんなフリフリしたもん着たくない。」
「どうして?可愛いじゃない。」

だから問題なんだと。

どうもこんにちは、前世食満留三郎、今世三雲留子です。
名前から察せられるように、男から女に生まれ変わりました。
神様よ、信じたことは無いが、いたとしたら俺を生まれ変わらせる時酒でも呑んでたのか。
どんな手違いだ。
…いや、そもそも前世の記憶を思い出す方が変則的か。
まぁその話は置いといて。
いくら今は女でも、前世を思い出したせいで男としての意識もある。
とどのつまり、女の格好に抵抗があるのだ。
正直女の格好をすると、どうしても女装という意識が抜けない。
しかも母親が用意する服はいやに可愛い。
それはもうフリルというひらひらとした可愛い飾りがふんだんにあしらわれた桜色や山吹色の洋服ばかり。
いや、似合わないだろう。
俺の顔を見ろ。
何処となく前世の面影を残してるため、つり目だし眉は太め、髪だって癖が強くて所々ハネている。
断言しよう、似合わない。

「ぜったいにあわない。やだ。」
「そんなことないわ。あなたはどんな格好しようが可愛いに決まってるじゃない。」
「…それなら、オサムみたいなのでもいいじゃん。」
「それはそれ、これはこれよ。」
「…………。」

お互い引かないため膠着状態が続く今の状況。
母親相手でも引くつもりはない。

「はぁ…留子どうしても嫌なの?」

コクリと頷く。

「そう…………。」

眉を下げ、悲しげに目を伏せる母親に思わず喉を引き攣らせた。
この人絶対分かってやっている。
普段表情筋が働くことを放棄している顔が常の、鋼の精神力の持ち主である我が母は余程のことがない限り、その顔が表情を浮かべることは無い。
「この番組面白いわね。」と言っているくせにピクリとも動いてないんだよ。本気でそう思ってるのか何度も疑ったのは記憶に新しい。
だからコレもわざとだ。
そうすることで俺が着ると言うのを待ってる。
わかってる。
わかっているはずなのに。

「…………………………………………………着る。」
「それじゃあ早速着ましょ。」

先程の悲しげな様子を、見事な投擲で何処かへ投げ捨てた母親は、いそいそと洋服と、それに合う小物を用意する。
変わり身早すぎか。

演技であるとわかっていながら俺が了承したのは、俺が母親のその顔に弱いから。
だから母親は何かとその顔をする。
毎回毎回折れる俺も俺なのだが。

演技でもそんな顔をしないで欲しい、なんて、母親大好き過ぎかよ俺。

「トメかわいー!」
「やっぱり似合うわね、私の目に狂いはなかったわ。」
「(親バカ…。)」




(母親だけでなく父親も弟も大好きなファミリーコンプレックスなトメさんです。)

1/5ページ
スキ