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空蝉(うつせみ)

「君の剣術に惚れたっ!!!」

キラキラした眩しい目から瞳を逸らす。

「深雪!
大人になったら夫婦(めおと)になろう!!」

大切なものほど壊れやすいから、
全部、全部。
なかったことにして、
そうやってなんとかやっている。


ーーーー
ーーー
ーー

ぴょんぴょん、と木々に移りながら、烈火の如く追いかけてくる人物から逃げる。

「深雪ーーっ!
祝言はいつがいいだろうっ?!」


「……」

稽古をする度に"君の剣術に惚れたっ!!と始まるのが長年の習慣だ。
いつか飽きるだろう、走り込みも体力づくりになるだろう、など考えていたが。


「…杏寿郎、
いつになったら諦めてくれるの?」

「諦めという言葉は俺の辞書にはないっ!!!」

深雪が足を踏み外し下に落ちると、ちょうどよく杏寿郎が受け止める。

「やっと捕まえたぞ!!」

むぎゅう…と力一杯抱き締められミシリと骨が鳴る。


「おっ!お熱いねぇお二人さんよぉ!」

「うむ!宇髄!
今ちょうど祝言の日取りを話し合っていたところだ。
深雪も来年成人するからそろそろ決めねば!」

「そんな話ししてないけど。」

「めでたいねぇ!
ド派手な式にしろよっ!
んじゃ他の奴らにも言っとくわ。」

盛大に勘違いをした音柱はそのままいなくなり、はぁとため息をつく。

「おじさまはなんて言ってるの?
許されないと思うのだけど。」

「父上もそれがよいと言っている!!
だから安心して嫁いでくるといい!!」

ハハハ、と高らかに笑う顔を見て、"煉獄家"の人は懐が広過ぎるというか、警戒心がなさすぎて心配になる。

「だめ。
ちゃんと相応しい人を選ばなくちゃ。」

「よもや!
君が一番相応しい人だから言っているんだが!」

「相応しくない、私は…
杏寿郎の隣は歩けない。」
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