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1話

――ここは、どこだろう。

ぼんやりと、もやがかかったような思考の中で考える。
目は、開かなかった。
周りを見渡すこともできない。
ただ、自分はどこかよく分からない場所にいる。
それだけは分かった。

だって、私は死んだのだから。

死に損なっているのだとしたら、私は病院のベッドにでもいるのだろう。
だが、私は確実に死んだはずだ。
相当な高さの建物から、コンクリートの地面に向けて飛び降りて自殺を図ったのだから、死んでいなくてはおかしい。

(……死んでいなかったら、私は人間ではないだろうな)

などと頭に浮かんで、変なことを考えるものだ、と鼻で笑う。
私は確実に人間で、人間だからこそ自殺をした。
人間でないはずもなく、死んでないはずもない。
前者は私にとっては当たり前のことだが、どちらも確信していた。

だからこそ、今いる空間が死後のものであることも分かる。
俗にいう天国や地獄というものだろう。

(……自殺したら、地獄に行くんだったっけ)

だんだんと、意識が遠のいていくのが分かった。
きっと、本当に死ぬ時が来たのだ。
意思さえもなくなって、消滅するのだろう。
もしも、天国や地獄のような世界があれば別だが。

(それはちょっと、面倒かもなあ)

その思考を最後に、私の意識はぷつりと途切れた。
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