れいは、一人で寮の裏庭に座っていた。

―いつから、こんな風に常闇君のことを考えるようになったんだろう……。

れいは一人、自問自答しながら、常闇との数々のやり取りを思い出していた。
常闇はいつもそばにいて、落ち込んでいる時も、迷っている時も、静かに支えてくれていた。
常闇の優しさ、冷静な言葉、その影に隠れた深い思いやり――それがれいにとって、とても大きな存在になっていたことに気づく。

―常闇くんがいると、なんだか安心できる。

爆豪はれいにとって強くて憧れの存在だったけれど、常闇のそばにいると心が落ち着き、自然に自分らしくいられる。
そんな気持ちがいつの間にか恋へと変わっていることに、れいは気づいてしまった。

―私は……常闇くんのことが好き。

しかし、心の中で芽生えたその淡い恋心は、すぐにれいを喜びではなく、深い不安へと引きずり込んでいく。

―常闇くんが、私の恋を応援してくれたってことは。

常闇がいつも自分を応援してくれた場面が、頭の中で鮮やかによみがえる。
常闇はれいのそばで真剣に話を聞き、優しく背中を押してくれた。
「俺はれいの味方だ」、そう言ってくれた。
その言葉に励まされたはずなのに、今となってはその瞬間が胸を刺すように痛む。

―常闇くんは、私のことをただの友達だって思ってるんだよね。

れいは、息を詰まらせながら、その結論にたどり着いてしまった。
その結論はれいの心に深く刺さり、胸の中に重くのしかかる。

もし常闇が自分に対して特別な感情を抱いているなら、爆豪への告白を応援するはずがない。むしろ、そんなことは絶対にさせたくないはず――そう考えると、常闇の冷静な対応が、今ではれいを孤独にさせる。

―私は、ただの友達。それ以上じゃないんだ。

その事実を受け入れた瞬間、心の中に広がる虚しさに気づいた。常闇がいつもそばにいてくれたことが、れいにとってどれほど特別であったか。それなのに、常闇にとって自分は、その存在ではなかったのだ。
常闇の優しさや、支えてくれた言葉は、すべて友情の範囲内でしかない。
自分が常闇に恋心を抱いていることに気づいたのに、常闇からはそれ以上の感情は返ってこない。その現実がれいの胸に深い傷を形作る。

―私は、常闇くんのことが好き。でも、常闇くんは私のことを……

れいは言葉を飲み込み、静かに目を閉じた。
胸の中の温かさが、今はひどく冷たく感じられる。
常闇のそばにいることが安心だったはずなのに、今はその優しさが逆に、遠くに感じられる。

―気づくのが遅すぎたよ……。

もしもっと早くに自分の気持ちに気づいていれば、もっと違う未来があったかもしれない。しかし、今となってはもう遅いのだ。
常闇は、自分をただの友達としてしか見ていない。その現実が、れいを冷たく包み込んでいく。
れいは深く息をつき、胸の痛みを静かに抱えながら、常闇との関係がこれ以上変わらないことを自分に言い聞かせようとした。