れいは授業中、胸の中で渦巻く感情に戸惑っていた。

―どうして、こんな気持ちになってるんだろう……。

自分自身に問いかけた。今まで、自分の心は爆豪に向かっていたはずだった。
だけどここ最近、れいの思考を占めるのは、いつもそばにいてくれた常闇の姿。

常闇はいつも静かで、クールで、感情をあまり表に出さない。それでも彼の優しさや深い思慮がふとした瞬間に垣間見えると、れいの胸はいつも温かくなっていた。
常闇の言葉や視線が、何気ない日常の中でれいを支えてくれていたことに、今になって気づき始めている。

―私は……どうしたいんだろう。

れいはため息をつきながら、手元のノートに視線を落とした。心の中にある迷いが、文字に集中させてくれない。
爆豪のことを好きだったはずなのに、爆豪に向ける視線は少しずつ薄れているような気がしていた。代わりに、常闇の言葉や表情が、れいの胸の中で何度もよみがえってくる。

我ながら現金なものだと思う。こんな風にコロコロと心変わりするなんて、自分はすごく惚れっぽい女なんじゃないか、そしてそれは、良くないことなんじゃないか、と思ってしまう。

常闇がそっと寄り添ってくれたあの日のことを思い出した。
爆豪に片思いしていることを打ち明けた時、常闇は決してれいを笑うこともなく、ただれいの話を静かに聞いてくれた。
そして、「俺はれいの味方だ」と言ってくれた。

れいは、自分の中で変わりつつある感情に気づいていた。
しかし、それが恋なのか、それとも単なる安心感なのかは、まだはっきりと分からなかった。
ただ、常闇の存在がどんどん大きくなり、自分の心の中で特別な位置を占めるようになってきているのは、確かだった。

―常闇くんは、いつも私のそばにいてくれた。

れいはその事実を思い出し、心がじんわりと温かくなるのを感じた。爆豪への強い憧れは、まだ完全に消えたわけではない。だが、それが次第に淡くなり、代わりに常闇への感情がどんどん膨らんでいくのを感じる。

―爆豪くんじゃなくて……常闇くんが、今の私を支えてくれている。

れいの胸に痛みが走った。自分が今までずっと爆豪に向けていた感情が変わっていることに対する、戸惑いだった。
それでも心のどこかでは、常闇が自分にとって、既にかけがえのない存在になりつつあることを、受け入れ始めている。

―常闇くんのことが、気になる。

常闇に対して抱く感情は、ただの友情や安心感だけではなくなってきているのかもしれない。
常闇と話すたびに、彼の優しさや強さに触れるたびに、自分が自分らしくいられるような、そんな気がしていた。

―私は、どうしたらいいんだろう……。

そう思いながらもれいは、自分の心がどちらに向かっているのかを理解し始めていた。