「ど、どうした？！ヴィランの襲撃か？！」
「赤沢さん！」
飯田と緑谷が口々に叫ぶ。れいは驚きのあまり目をつむって固まっている。

「耳郎くん！通信できるか？！」
「3年が訓練中に熱風で窓割ったらしい！怪我人はいないか？だって！」
廊下の少し離れたところにいた耳郎と呼ばれた女子生徒が、飯田に対して叫ぶ。

「常闇くん！その人に怪我は無い？」
緑谷が、れいを抱きかかえている男子に聞く。
「あぁ。ガラスは浴びていないはずだ。全身固まってるが。」
「よ、良かったぁ……。」

何が起きたか分からずパニックになっているれいは、硬直した身体を何者かに支えられながら、恐る恐る目を開ける。

「おい、大丈夫か？」
「はい……。っ！！」
顔を見上げ、常闇と呼ばれたその男子と目が合った。

ギョッとする。

ーそれは黒色の。鳥のようなー

「ヒッ。」

れいは飛び退いて、思わず後退りしてしまう。
「赤沢さん……？」

熱風でガラスが割れた時よりもさらに顔色が青くなったれいを、不思議そうに緑谷が見つめる。

れいは恐怖の表情で常闇を凝視したあと、我に返ったように、1年A組を後にして駆け出した。

「お、おい！赤沢くん！安全確認をとらなければ！」
飯田がそう叫んだが、れいには聞こえなかった。

「赤沢さん、急にどうしたんだろう？」

「……俺の顔が怖かったのかもしれない。」
常闇は事も無げに呟く。

「えっ、今時、そんなことあるかなぁ……。」
「たまにいるんだ。異形を毛嫌いする奴が。まあ慣れている。あの女子が無事でよかった。」

常闇踏陰はそう言ったけれど、緑谷は納得がいかなかった。
あの人が異形差別をする人には見えなかったからだ。