「今、なんと言った？」
目を丸くして驚いている常闇に、れいが胸を押さえながら言う。

「私、常闇くんのことが好きなの。」
常闇に会えないことで溜まっていた今までの鬱憤を晴らすように、自分でも気づいていなかった本音が出てしまう。

「最初、あんな態度を取ってしまってごめんなさい。でも、常闇くんを見たり、常闇くんと話したりしている時間が私にとって大切なものになっていって、気が付いたら、どうしようもなく好きになっていったの。」

常闇は少しの沈黙の後、訝しげに口を開いた。
「俺に助けられたから、好きだと錯覚しているだけではないのか。」

「それも考えた、でも、それはもう、100回考えた。それでも私の気持ちは変わらなかった。この気持ちが好きじゃないなら、何を好きというのか教えてほしいくらいだよ。」

真剣に伝えるれいに驚きを隠せない常闇。やがて、れいの目と言葉に嘘偽りがないとわかると、観念したように話し出した。

「……俺も赤沢 のことが、好き、だ。」

「え……。」

「正直、こんな気持ちになったのは初めてだ。俺の日々に、いつも赤沢……、れいがいた。」

常闇も自分を好きだったなんて、信じられない。
れいは、じゃあどうして、と小さく呟いた。

「でも、それ以上にれいを、傷付けたくないんだ。」

れいは、悲しい目をしている常闇に気がついた。

「れいを傷つけるくらいなら、俺は、1人でいることを選びたい……。」
それまでずっと堅い言葉遣いで話し続けていた常闇が、等身大の口調になりながら、泣いている。表情にいつもの覇気が無くなり、肩を振るわせながら泣く常闇を見て、れいは彼の真意に気がつき、思わず抱きしめる。

「常闇くんがいなくなる方が、傷つくより何倍も嫌。」

涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらそう呟く彼女の背中に、常闇は優しく顔を寄せる。

「俺は、れいに感情の全てを預けすぎてしまった。もっと俺を好きになってもらいたいと思っていた。だが事件を知って、これ以上れいから嫌われないように、逃げようとしてしまった。俺の弱さだ。」

「違うよ。常闇くんは強いよ。」

れいは涙を流しながら、伝える。

「だって、常闇くんは私のヒーローだもん。」