私のヒーロー
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―それは、ずっと、話したかった人。
「常闇くん……。なんでここにいるの。」
「さっき保健室に行って、その帰りだ。」
「……怪我したの?」
「少しな。大したことはない。」
「そう……。」
さっき気合を入れた頬の温度が、嘘みたいに下がっていく。聞く覚悟はできていたが、そのタイミングが、思った以上に早く来てしまった。
気まずい沈黙を、常闇が破る。
「で、なんだ、今俺のことを言っていなかったか。」
「……うん。」
「要件は何だ?」
―あんなに話したかった人なのに、言葉が上手く出てこなくて。
―それでも、この鋭い目から離れられなくて。
―聞くなら、今しかないよね。
れいは今出せる最大限に明るい声を出しながら、頭の中で何度も練習した文章を音読する。
「常闇くん、私のこと……避けてる?」
常闇はしばらく黙ったままだった。
苦しい沈黙が続き、重い空気の中聞こえてきたのは。
「……気づいていたのか。」
れいは凍った手のひらで心臓を鷲掴みされたような感覚に陥った。
今まで自分を支えていた優しい思い出たちが、反逆して一斉に心を刺してくる。
「やっぱり。そっかぁ、避けられてたんだね、私。」
なんてことのないように答えようと思っても、無駄だった。
笑顔が引き攣る。全身が、冷たくなる。視界が揺らぐ。
―この人を最初に傷つけたのは私であって、私なんか元々この人と仲良くなる資格もないのに。避けられて、傷つく資格もないのに。
当たり前だよね、と心の中で何度も言う。私が常闇くんに嫌われるのは当たり前のことなのだから、今更落ち込むな!と、れいは自分自身に喝を入れる。しかし、その当たり前のことがこんなにも悲しく苦しいだなんて、想像できなかった。
常闇は下を向いて俯きながら、何を言えばいいか迷ったような顔をしていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「別に赤沢のことが嫌いになったわけじゃない。」
―彼は優しいから、こんな嘘をついてしまう。
―私はズルいから、こんな嘘を、嘘であってほしくない、と思ってしまう。
―もっと、彼と一緒に話したい、一緒にいたい、なんて、甘えたことを思ってしまう。
しかし、それも今日でもう難しくなってしまった。れいの目からは大粒の涙が溢れてきた。
「お、おい……何故泣いている……?」
突然泣き始めたれいに驚いた常闇は、咄嗟に―いつもの訓練で困った人を助けるように―れいに近づいて肩を支えようとしたが、触れる直前、思い直したかのように遠のいて離れた。
「……事件のことを、知ってしまったんだ。」
常闇は諦めたように話し出した。れいはヒックとしゃくりあげながら、真っ赤に泣きはらした目を常闇に向ける。
「弟さんのこと。詮索して悪かった……。それで、赤沢と俺は、もう会わない方が良いと思ったんだ。」
走ってここから逃げ出したいという気持ちと裏腹に、麻痺したように身体が動かなかった。一番知られたくなかった人に、知られてしまった。
頭が追い付かない。言葉が出ない。何を言っても、言い訳に聞こえてしまいそうで、れいはその場に立つのがやっとだった。
―違うの、常闇くん。
「本当に悪かった。もう会うのはやめよう。」
常闇はれいをしばらく見つめていたが、やがて覚悟を決めたように振り返り、歩き出した。
もう二度と彼女と会わないために。もう二度と、彼女を傷つけないために。
―違う。
―だって、嘴はもう、ヴィランの証じゃなくて。
「待って。私、常闇くんが好きなの。」
「常闇くん……。なんでここにいるの。」
「さっき保健室に行って、その帰りだ。」
「……怪我したの?」
「少しな。大したことはない。」
「そう……。」
さっき気合を入れた頬の温度が、嘘みたいに下がっていく。聞く覚悟はできていたが、そのタイミングが、思った以上に早く来てしまった。
気まずい沈黙を、常闇が破る。
「で、なんだ、今俺のことを言っていなかったか。」
「……うん。」
「要件は何だ?」
―あんなに話したかった人なのに、言葉が上手く出てこなくて。
―それでも、この鋭い目から離れられなくて。
―聞くなら、今しかないよね。
れいは今出せる最大限に明るい声を出しながら、頭の中で何度も練習した文章を音読する。
「常闇くん、私のこと……避けてる?」
常闇はしばらく黙ったままだった。
苦しい沈黙が続き、重い空気の中聞こえてきたのは。
「……気づいていたのか。」
れいは凍った手のひらで心臓を鷲掴みされたような感覚に陥った。
今まで自分を支えていた優しい思い出たちが、反逆して一斉に心を刺してくる。
「やっぱり。そっかぁ、避けられてたんだね、私。」
なんてことのないように答えようと思っても、無駄だった。
笑顔が引き攣る。全身が、冷たくなる。視界が揺らぐ。
―この人を最初に傷つけたのは私であって、私なんか元々この人と仲良くなる資格もないのに。避けられて、傷つく資格もないのに。
当たり前だよね、と心の中で何度も言う。私が常闇くんに嫌われるのは当たり前のことなのだから、今更落ち込むな!と、れいは自分自身に喝を入れる。しかし、その当たり前のことがこんなにも悲しく苦しいだなんて、想像できなかった。
常闇は下を向いて俯きながら、何を言えばいいか迷ったような顔をしていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「別に赤沢のことが嫌いになったわけじゃない。」
―彼は優しいから、こんな嘘をついてしまう。
―私はズルいから、こんな嘘を、嘘であってほしくない、と思ってしまう。
―もっと、彼と一緒に話したい、一緒にいたい、なんて、甘えたことを思ってしまう。
しかし、それも今日でもう難しくなってしまった。れいの目からは大粒の涙が溢れてきた。
「お、おい……何故泣いている……?」
突然泣き始めたれいに驚いた常闇は、咄嗟に―いつもの訓練で困った人を助けるように―れいに近づいて肩を支えようとしたが、触れる直前、思い直したかのように遠のいて離れた。
「……事件のことを、知ってしまったんだ。」
常闇は諦めたように話し出した。れいはヒックとしゃくりあげながら、真っ赤に泣きはらした目を常闇に向ける。
「弟さんのこと。詮索して悪かった……。それで、赤沢と俺は、もう会わない方が良いと思ったんだ。」
走ってここから逃げ出したいという気持ちと裏腹に、麻痺したように身体が動かなかった。一番知られたくなかった人に、知られてしまった。
頭が追い付かない。言葉が出ない。何を言っても、言い訳に聞こえてしまいそうで、れいはその場に立つのがやっとだった。
―違うの、常闇くん。
「本当に悪かった。もう会うのはやめよう。」
常闇はれいをしばらく見つめていたが、やがて覚悟を決めたように振り返り、歩き出した。
もう二度と彼女と会わないために。もう二度と、彼女を傷つけないために。
―違う。
―だって、嘴はもう、ヴィランの証じゃなくて。
「待って。私、常闇くんが好きなの。」