それはまだ、赤沢れいが雄英高校普通科に入学して、間もない頃。運命の出会いは突然現れた。

普通科クラス委員長のれいは、ヒーロー科1年A組に書類を届けてほしい、という先生からのお願いを受け入れ、校舎の廊下をひとり歩いていた。

無論、ヒーロー科に知り合いはいない。とりあえず教室のドアを開けて最初に出てきた人に渡そうと思い、賑やかに騒いでいる教室のドアを開ける。

「すみません。普通科の委員長の赤沢 です。この書類を届けにきました。」

ドアを開けた先には、眼鏡をかけたいかにも優等生そうな男子生徒がいた。隣に緑色の髪の毛の男子もいる。

「ああ！ありがとう！君が普通科の委員長か！俺は1年A組クラス委員長の飯田天哉だ！」

「赤沢 れいです。はいこれ、書類。よろしくね。」
私の個性は、少しだけ物を浮かせて操れる個性。書類を合わせてクルッと回転させ、「よろしく」の声に合わせてお辞儀をするような動きをさせ、飯田くんの手に収納させた。

ヒーロー科の方々の個性には遠く及ばないけれど、相手をちょっと笑顔にできる個性で、れい自身は結構気に入っている。

「わぁ〜！君の個性、面白いね！触ったものを浮かせて生き物のように動かせるんだ！すごいなぁ〜！」

緑色の髪の毛の男子がすかさずキラキラした目でれいを見てきた。

「彼はクラスメイトの緑谷出久くんだ！」
飯田がカクカクしたコミカルな動きで、男子を紹介する。

「よろしくね、緑谷くん。ヒーロー科の人に比べたら全然没個性だけどね。」
「そんなことないよ！とても素敵な個性だよ！」
「ふふ、ありがとう。」

ヒーロー科というのは高飛車な人たちが揃うクラスだと思っていたれいは、飯田や緑谷のように接しやすい人もいるとわかり、少しホッとした気分になった。

仕事を終えたので自分のクラスに戻ろうとした、その時。

ガシャン！と大きな音と共に廊下の窓ガラスが割れ、れいに直撃しそうになった。

「え？」
「危ない！」

俊敏な動きでれいを抱きかかえ移動させたのは、飯田でも、緑谷でもない、他の男子生徒だった。