「俺には姿を見せないで、エレンにだけ見せやがって……」

「私の意思じゃないもん」

「あの兵長……」


気まずそうにエレンが声をかけた。


「なんだ」

「誰なんですか、その人」


そういえばエレンには私が何者か言っていなかった。
この一か月、目が合ったりしたけど話したことはない。基本的にリヴァイに憑いてる私は彼から離れられないから、リヴァイがいる前で話なんか出来るわけなかった。
一方的に何か言うことはあったけど……。


「気になるのか」

「えぇ、まぁ……」


するとリヴァイは顔色一つ変えず


「俺の最愛の女だ」


と答えた。
これにはエレンも目を見開くし、私も驚いた。まさかリヴァイがストレートにそんなことを口にするなんて思いもしなかったから。


「兵長の恋人だったんですか？」

「まぁ、そうなるな」


切なくて苦しいけど、ちゃんと覚えてくれてたことへの嬉しさや好きという気持ちが私の中で溢れだす。
何度もリヴァイの名前を呼んだ。

触れることも出来なければ、この声が直接伝わることもない。


「兵長の名前をずっと呼んでます」


エレンを介してしか伝えることが出来ないのだ。


「ララはどこにいる？」

「えっと、そこら辺ですね。兵長の、左後ろ側です」


エレンに確認をとったリヴァイは、私の方に視線を向けた。リヴァイの目には映ってないだろうけど、しっかりと視線が合ってる気がする。


「ララ、もっと早く駆けつけてやれなくてすまなかった、あと一分早ければ、お前は死ななくて済んだ……」

「そんな……、謝らないで。リヴァイは悪くない……！」


壁外で別行動だったのだから当たり前だ。
陣形の場所的には近かったけれど、奇行種に遭遇して煙弾を打ってからあっという間だった。

「何度も後悔した。壁外で死ぬやつなんか大勢いて、全て受け入れて来た。が……お前を助けられなかったことは、未だに後悔している。すまなかった」


そんなこと思っていたなんて、気付かなかった。リヴァイはそういうの口にせず、心に留めておくタイプ。
ずっと傍にいて、一言も私の話なんか出なかったから私のことは過去のこととして忘れていると思っていた。


「愛してる、ララ」

「……！」


それはエレンには聞こえないくらい小さな声だった。
でも私には確かに聞こえたのだ。

生きている頃も滅多に言ってくれなかったその言葉で、私はとてもとても満たされていった。

それを感じ取った瞬間、私の体から光の玉がふわふわと出て来たのだ。