――……‥‥

「思ったより元気そうだな」


リヴァイに続いて部屋に入ると、負傷したエレンはベッドの中に入って座っていた。
一瞬だけ目があったが、確かに思ったより元気そうだ。


「はい、もう大丈夫です」

「回復が早ぇな。それも巨人の力ってやつか」

「どうでしょう。自分でも驚くほどスッキリしています」


あの頭がおかしいと思われそうな自己紹介の日から、もう一か月くらい経った。
グンタ、エルド、オルオ、ペトラがこの世を去った。幽霊となってさ迷わなかったのか、彼らの霊は今の所現れていない。
それとも、私がエレンにしか視えないように幽霊同士でも視える視えないがあるのだろうか。

リヴァイ班との交流は一か月だったが、エレンにとって気持ちが沈む出来事だったのかもしれない。
彼らを殺めた女型の巨人を、市街地にも関わらず激しく追いつめて殺す勢いだったらしい。
まぁ、女型の巨人の中身は硬い結晶の中に閉じこもってしまったのだが……。


「……ミカサ、ちょっと兵長と二人にしてくれないか」


この黒髪の女の子はミカサ・アッカーマンと言うらしい。エレンの同期でもあり、血の繋がらない家族らしいが詳しくは分からない。
だけど、エレンに執着しているところがある上にリヴァイを邪険に思ってるらしく……
このエレンの申し出にちょっと躊躇いを見せた。

しかし、エレンの言うことに強く反発出来ないよう。
エレンが再度お願いをすると、彼女は間を置いて「分かった」と返事をしたのだった。


「兵長……」

「なんだ」


ミカサが部屋を出て行って、エレンはすぐさま話を切りだした。


「前に俺が幽霊が視えるって話をしたのを覚えてますか？」


突然の話に私が困惑した。このタイミングで自らその話を掘り起こすとは、何を言うつもりなのか。


「あぁ……あったなそんなことも。くだらねぇ」


幽霊を信じないリヴァイにとって、そう思うことは当たり前なのかもしれないが私は結構ダメージを受けるようだ。
死んでいるのに心が苦しい。