――リヴァイを追いかけると、ローゼ内の草原の中心でしゃがみ込んでいた。


「リヴァイ……何しているの？」

「……」

「疲れているんなら休まなきゃ。皆心配するよ？」

「……」

「私も心配だよ」

「……」


相変わらず答えるどころか、見向きもしない。


「……。ねぇ、もう許してよ。……何で無視するの！？　私もう元気だよ！？　怪我しちゃったことは心配かけたと思うけど、もう良いじゃん！」

「……」

「お願いだから、私を見てよ……」


私はその背中に縋りついて泣いた。


「言いたいことあるなら言ってよ。寂しいよ……リヴァイ……」


きっとこれでも彼は見向きもしてくれないのだろう。そう思った時だった。


「ララ」

「！」


名前を呼ばれた。確かに今、呼ばれたのだ。
それがどんなに嬉しいことか！
久しぶりに聞いたリヴァイの呼ぶ声に、私は歓喜で震えた。


「リヴァイ――」

「俺は思ったより弱いらしい。自分でも嫌になる。どんなに部下を失っても、もう動揺しねぇと思っていた。なのに、こんなことで……」

「リヴァイ……？」


リヴァイが何かに手を伸ばして撫でた。私は覗き込んでそれを見る。


「……え？」


先程の歓喜が一瞬にして消え失せ、同時に不安と焦燥が湧いてきた。
私は……今、夢か幻を見ているのだろうか。

何で――？


「俺より先に逝くなんて、誰が許可した……クソが……」


整えられた石には、ララ・クロノア――
私の名前が刻まれていた。
何で、どうして。そう思っていると、頭の中で記憶が走馬灯のように蘇ったのだ。


「そうだ……私……」


壁外調査にて大怪我して完治したと思っていた。けど、大怪我なんかじゃない。
私は、死んだんだ。

――奇行種に思いっきり捕まれて、それで力が抜けて……痛くて痛くて……巨人の口に近付いていった。


「だから……か」


どんなに話しかけても無視された。いや、無視じゃない。聞こえていなかった。リヴァイには私の声が本当に聞こえてなかったんだ。
死んだのならそれが当たり前だ。

周りをよく見れば、ここは草原なんかじゃない。墓地だ。あちこちに同じような墓石がある。


「リヴァイ……貴方は」


涙が止まらなかった。
私のことを嫌いになったわけじゃなかったんだね。ずっと想っていてくれた。
本当はずっと。それは嬉しいことだけど、でもそれ以上に悲しい。

私の姿も声も、もう愛する貴方に届くことはないのだから。もう話すことも触れ合うことも出来ない。
伝えたいことも伝えられず、謝りたくても謝ることが出来ない。


「嫌だ……私はまだ……生きて、傍にいたかった……」


もう二度と――。






END